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東京工科大学大学院卒業生モンキー・パンチ氏(本名:加藤一彦氏)を偲んで

2019年4月19日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

 

去る,2019年4月11日,「ルパン三世」シリーズで著名な漫画家モンキー・パンチ氏(本名:加藤一彦氏)がご逝去されました.

様々な紹介ページで,モンキー・パンチ氏が東京工科大学大学院メディア学研究科メディア学専攻(現在のバイオ・情報メディア研究科メディアサイエンス専攻)の卒業生であることが伝えられております.モンキーパンチ氏は2003年4月から2005年3月まで在籍し,2005年3月に修士(メディア学)を授与されております.ちなみに,ルパン三世のテレビ第一シリーズの監督であるおおすみ正秋氏も同級生として,本学大学院に進学され見事修士号を授与されております.

モンキー・パンチ氏もおおすみ正秋氏も,指導教員は,私の師匠であった金子滿先生でした.金子先生も残念ながら昨年6月にお亡くなりになっておりますので,当時の大学院のことを知る私から同氏を偲んで,当時について研究についておおすみさんらを交えて語った日々を思い起こしていきたいと思います.

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修了証書と記念品の授与
(左:指導教員の金子先生 右:モンキー・パンチ氏)

 

モンキー・パンチ氏が入学した2003年は,東京工科大学大学院メディア学研究科メディア学専攻が誕生した年です.その4年前,日本では初となる「メディア学部」が誕生し,学部教育からさらに高いレベルの研究を求め,大学院が設置されました.

大学院も含めた本学の基本理念は「生活の質の向上と技術の発展に貢献する人材を育成する」であり,その具体的な理念として下記の3つがあります.

・実社会に役立つ専門の学理と技術の教育
・先端的研究を介した教育とその研究成果の社会還元
・理想的な教育と研究を行うための理想的な環境整備

大学院を設置し,教育と研究の環境を整備することは,新たに産声を上げた「メディア学」をさらに高め,実社会に役立つ教育を通じて,先端的な研究を行いその成果を社会還元していくために必須であったと言えます.

 

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2003年当時の当時のコンテンツテクノロジーセンターの設備
(当時はまだ高価だったMayaをはじめとする3DCGソフトウェアや作画ツール,ペンタブレットなどが充実)

 

このような理念のもと,業界での実績があるモンキー・パンチ氏やおおすみ正秋氏,さらには元CGARTSの宮井あゆみ氏らが大学院に進学して,他の学生たちとともに議論しながら学んでいただけたというのは,大学の理念とも合致する大変喜ばしいことです.

ちなみに入学当時,モンキー・パンチ氏はすでにパソコンを利用した漫画の作画を試行していました.他の記事では1975年ごろにパソコンに触れてすぐに購入し,1988年からマッキントッシュを仕事にも用いたと記録があります.

モンキー・パンチ氏は他のコンテンツ同様に漫画も制作だけでなく流通やメディアもデジタルになると当時から予測しており,来るべきデジタル漫画時代における制作手法や表現の在り方,流通などについて,大学院で研究を進められました.

指導教員である金子滿先生は日本のCGの草分け的存在の一人で,1983年放映のNHKのアニメ作品「子鹿物語」において日本で初めてテレビアニメにコンピュータを用いた人物でもあります.(現在NHKの朝のドラマで放映されている「なつぞら」とも関連がありますがそれは後ほど別なBlogで)

私は金子先生のもとで,当時急速に進行していたアニメーションのデジタル制作の研究をしておりました.透明なセルにインクで着色しフィルムに撮影していたいわゆるフィルムアニメーション(アナログアニメーション)がコンピュータ上での彩色や合成に代わり,3DCGと組み合わせ表現するデジタルアニメーションになっていった過渡期でもありました.その際に,従来のフィルムアニメーションで培ってきた知識や技能をコンピュータ上でもうまく活用し品質を上げるための方法論や,新たなツールとの共存や移行のための方法論などを調査しまとめていました.そうして出来上がった「デジタルアニメマニュアル」が,制作関係者に広まり,アニメのデジタル化に少なからず寄与することができました.

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デジタルアニメマニュアル
(出版:東京工科大学/デジタルアニメ制作技術研究会)

 

モンキー・パンチ氏の研究はまさにこのデジタル移行(拡張)を漫画の世界で実現するための研究でもありました.単にコンピュータを使って漫画を描くということだけでなく,デジタルデータとなった漫画の表現手法や制作のためのツールに求められる機能など様々な検討を行い修士論文「電子(デジタル)出版によるデジタル漫画の考察とそのキャラクター」を執筆しました.

大学院に入学した当時は66歳だったと伺いました.すでに漫画家として多くの人から尊敬される存在で,むしろ教える側であるモンキー・パンチ氏が,66歳から再び大学院で学び,研究をまとめ上げて修士号を取得する姿には大変敬服いたしました.

当時はキャンパスの喫煙所で研究ミーティングや授業の後に,モンキー・パンチ氏と先述の同級生おおすみ正秋氏とともにタバコをふかしながら,「いやー授業の課題がしんどくてねー」なんて話をして過ごしていたのが懐かしいです.研究の進め方や論文の書き方など,指導と呼ぶにはおこがましいですが,いろいろとお話ししました.すでに作品を通じて多くの実績を残してきた,モンキー・パンチ氏やおおすみ正秋氏の知見を体系化して論文として明文化していくということは大変貴重です.そのため,あまり学術研究の枠にとらわれすぎて,二人の良さが薄れてしまわないように,研究を進めてもらっていました.

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卒業式の集合写真
(私は不在ですが,前列左からおおすみ正秋氏,金子滿先生,宮井あゆみ氏,モンキー・パンチ氏)
(それ以外はメディア学部から進学した大学院の同級生ですが,この中にはCG監督として活躍しているOBがすでに2名おります)

 

モンキー・パンチ氏は卒業後,2010年から3年ほど本学の客員教授として着任いただき,後進の育成にもご尽力いただきました.また,大手前大学にて人文科学部やメディア・芸術学部の教授も務められました.制作現場の最前線できらめく実績を残された方が,さらに高みを目指し自分の知見を理論化したり,新たな取り組みを推進する手法を得るべく大学院に進学する姿は大変刺激になりました.

実は私自身も,一度社会人になってから,社会人大学院生として修士号,博士号と取得してきました.学ぶのはいつからでもできるなと本当に思いました.そして,モンキー・パンチ氏やおおすみ正秋氏を指導されていた金子先生のお姿を見て,常々私も指導者として,現場で実績を残された方とともに研究を進める楽しさと,その価値を学ぶことができました.

ご存知の方も多いと思いますが,私の研究室の博士課程にはゲームの世界で著名な遠藤雅伸氏が在籍しております.あのころと同じように日々刺激を受けながら,指導すると同時に自分も学び成長させていただいています.

これからも,自分が専門とするゲーム,アニメ,CG,映画などの分野で,博士課程や修士課程の学生を指導できるという立場から,産業界の発展に寄与していければなと思った所存です.

 

ある意味,私の進むべき方向を示してくれたような,そんな日々を共に過ごさせていただいたモンキーパンチ氏のご冥福を心よりお祈りいたします.

 

文責:東京工科大学 メディア学部 教授 三上浩司

 

 

 

カットする? [ その2 ]

「カットする?」シリーズにようこそ! 前回の記事では「カット」という言葉の由来を考えた。「カット」というものが、映像制作の仕事でいかに重要か理解してもらえただろうか。

今回のテーマは「シャドー・カット」である。
「シャドー・カット」とは、ある映像作品において「使われなかったカット」のこと。

まさに「カット」され「捨てられて」しまった映像である。映画製作の過程において、編集技術者たちは、通常どれくらいの量の映像を「カット」するのであろうか?

通常の映画の場合、上映時間1分につき20分の映像素材が使われずに捨てられているという。完成品に使われた原料の使用効率でいうと1/20になる。2018年に日本で公開された劇場映画のうち、興行成績上位10作品の平均上映時間は、121分であった。ということは、映画一本あたり「40時間」もの素材が「カット」されている。せっかく撮影されても、これだけの素材が捨てられるのである。

映画史において最も「歩留りが悪かった」といわれる作品は、フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録( 1980 )」である。

編集を担当したウォルター・マーチ氏によると、「地獄の黙示録」の完成品の長さは 2時間25分(145分)であった。プリントされたフイルムは、230時間(13,800分)あった。(撮影されたフィルムはもっとあったということ)ということは、1分につき95分のロス。完成された映画と、フィルム全体の比率は、なんと「1:95」であった。

この作品が「撮影されたが使われなかったフィルムの量」が最も多い世界記録保持者である。しかし、カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー賞・作品賞と音響賞など沢山の国際賞を受賞した。いまでは映画史に残る傑作のひとつとして評価されている。「歩留りが悪ければ、作品の出来も悪い」という法則は成り立たないのである。この作品が音響と編集に費やしたポストプロダクションの期間は、2年という長きにわたった。

テレビ局のドラマ製作では、こうした「シャドー・カット」があまりにも多い作品は、予算効率が悪いということで内部批判にさらされることがある。担当したプロデューサーは「歩留り(ぶどまり)が悪い」と叱られるのである。

 

担当:コンテンツコース 佐々木和郎

 

 

提携校MSUの学生による研究発表(マレーシア出張報告3)

2019年4月18日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

3月27日午後には、Department of media science and graphicの学生3名の卒業研究プロジェクトの発表を聞きました。

1.SDG16のためのゲームの開発について紹介してもらいました。
Godotゲームエンジンを利用して、RPGゲームの制作をしていました。

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2.Implementation AR Technology in Aircraft MRO trainingの研究でした。企業との共同研究でもあり、非常に大きなプロジェクトの説明をしてもらいました。ARやVRを利用して時間短縮やコスト削減、マニュアルの整備などに挑戦する内容でした。

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3.A Basic japanese Language Learning Turn Based RPG Gameの制作について紹介してもらいました。日本語を勉強するためのゲームを海外の学生が制作するということに興味を持ちました。実際の評価はこれからですので、成果が楽しみです。

 

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一生大切にできる宗形英作さんのコピー「誰もが初めは無名だった」(メディア学部 藤崎実)

2019年4月17日 (水) 投稿者: メディア社会コース

メディア学部社会コースの藤崎実です。

4月になり、新しい季節が始まりました。新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
緊張感でいっぱいのみなさんを見ていると、かつての自分を思い出します。まだ何者でもない自分への不安。漠然とした将来への不安。
不安という言葉は「期待と不安」という風に、セットにされる場合が多いようですが、
不安でいっぱいの若い時は、とても期待を感じる余裕などなかったことを思い出します。

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将来何かを成し遂げたい。夢は確かにある。自分には才能があるのか、ないのか、それさえもわからない。
やりたいと思っていることに自分は向いているのか、もっと他のことに向いているのではないか。
不安の要素は無限です。将来の保証など何もないので、不安のループは際限なく続きます。
私もそうした不安な気持ちと長らく付き合ってきたひとりです。


そんなみなさんに是非とも贈りたい言葉があります。
表題に掲げたコピー、「誰もが初めは無名だった」というコピーです。
コピーとは、広告用に作られた言葉です。コピーは真実を描くことで人の気持ちを動かすことが求められるので、時代を超えた名作が多いのが特徴です。

私がこのコピーを知ったのは、社会人になり広告業界で働くようになってから。
当時の上司で、私の師匠でもある宗形英作さんが若い時に書き、数々の賞を受賞した有名なコピーでした。

仕事を始めた頃、才能で勝負する毎日に、私は不安で押しつぶされそうになりながら、日々もがいて苦しんでいました。
まだ何者でもない自分への不安とどう向き合っていいのか。そんな私にとって、このコピーは大切な宝物になりました。
このコピーがあったから、今、私は何とかなっているのだと切に思います。

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コピーの解説ほど野暮なものはないので、内容については触れません。
ただ、まだ何者でもない自分に不安を抱く人にとって、一生自分を支えてくれる名コピーだと思います。

「誰もが初めは無名だった」

これからです。頑張ってくださいね!

(メディア学部 藤崎実)

マレーシア提携校MSUでの講義 Creative technology for Game & Animation (マレーシア出張報告2)

2019年4月16日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース


2019年3月27日にマレーシアのManagement&Science Universityで講義をしました。メディア学部の柿本学部長、三上浩司教授とともに、私もMSUの客員教授です。今回の訪問も客員教授として、学生らに講義することが目的のひとつです。

 

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さて、当日は10時15分開始12時30分という枠があり、講義とアニメーション紹介として計画をしました。教室の環境の違いを理解していましたので、事前にお願いしておりましたが、写真のような接続をしてPC画面を表示しようと試みました。
ノートPCには、type-CからHDMIの変換、中央の短いケーブルはHDMIをVGAに変換するケーブル、それにプロジェクタのケーブルを接続するということで、PC画面をプロジェクトしたかったのですが、なぜかうまくいかず。。。
USBメモリの講義用データをお借りしたPCを使って利用しました。バックアップとしてにUSBメモリに講義データを持っていきましたので、安心でした。

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講義は、Creative technology for Game & Animationと題して、メディア学部で講義している1年生向けの内容と3年生向けの講義内容の中から、キャラクターメイキングの紹介をしました。また、最近の研究成果であるキャラクターの配色、ロボットのモデリング、顔の表情制作なども紹介しました。最後に香港城市大学から来ていた学生らによる、研究成果を利用して制作したキャラクターとそのアニメを見てもらいました。この後、質問もあり、MSUでの講義のためにスライドが欲しいという希望もありました。
今後、さらに交流を深めて、メディア学部の教育成果を普及していきたいと思います。

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大学院メディアサイエンス専攻 近藤邦雄

«カットする? [ その1 ]