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スマートグラス元年はやってくるか

2025年11月 7日 (金) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部技術コースの盛川です。

ここ最近、スマートグラスやAIグラスといったメディアデバイスに関するニュースを目にする機会が増えています。
2025年9月のMeta Connect 2025でMetaが発表したMeta Ray-Ban Displayをはじめとして、AppleがApple Vision Proのアップデート版を10月に発表し、日本でも10月末にシャープが約200gのHMDを発表するなど、グラス型、HMD型のデバイスの開発のニュースが続いています。

Meta Ray-Ban Display(Meta社YouTubeチャンネルより)

おそらく来年にかけて多くのグラス型デバイスが登場し、今年か来年はスマートグラス元年と呼ばれるような年になるかもしれません。このようなデバイスが普及するかどうかは今後の動向次第ですが、その変化を観察すること自体が興味深い時期にあるといえるでしょう。

ただし、新しいメディアやデバイスが流行することと、日常に定着することは必ずしも同じではありません。例えば2010年は立体テレビが多くのメーカーから発売され、「3D元年」と称された年でした。これからは立体映像の時代が来るという宣伝文句のもとで、家電量販店などでテレビやモニターが売られていたのですが、その後一般家庭でその技術が定着するには至りませんでした。

とはいえ、立体映像そのものが消えたわけではありません。現在でも海外映画を中心に立体映像作品は制作・公開され続けており、その表現が効果的な分野では技術が活かされています。重要なのは「メディアの特性をどのように活かすか」という点であるといえます。

スマートグラスも同様に、どのような使い方が効果的であるかを理解し、そのためのサービスやコンテンツが整えば、普及する可能性は十分にあります。むしろ、その有効な使い方をいち早く見つけようと試みる企業や開発者、クリエイターたちが、いま競い合っている最中です。そうした人々の試行錯誤や競争が、後のメディア史の一部として残っていくでしょう。

私たちは、その歴史を今まさに直接体験していることになります。現在起こっているメディア技術の発展に触れながら、5年後、10年後の社会や日常が、どのように変化するのかを想像してみるのも楽しいと思います。

 

動画生成AI:Sora2を使えばAIに授業をさせられるか!?

2025年11月 5日 (水) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の藤澤です。先日、OpenAIから発表された動画生成AI:Sora2を使って授業動画を作れないか試してみました。

Sora2とは?

2025年秋、OpenAIが発表した最新の動画生成AI Sora2 が世界中で大きな注目を集めています。Sora2は、テキストや画像の指示から10〜15秒ほどの高品質な動画を自動生成できるAIモデルで、映像の一貫性や物理的リアリティの高さが特徴です。例えば、登場人物の動き、カメラワーク、照明、背景の連続性まで自然に表現され、まるで実写のような短編映像を作ることができます。

さらに、Cameo機能 を活用すると、実在する人物の3Dアバターを動画内に登場させることも可能です。ユーザー自身の姿をCameoとして登録すれば、まるで自分が演技しているかのような動画をAIが生成してくれます。登場人物同士の会話や表情の変化も自然で、AI俳優が演じる“仮想映像制作” が現実のものとなりつつあります。

Sora2では、以下のような点が特に注目されています:

 

 

  • シーン間の整合性:複数カットの中でキャラクターや背景が一貫している。

  • 自然な動きと物理法則の再現:風に揺れる髪、重力による落下、歩行などが現実的。

  • 多様なカメラアングル:ズームやドリーショットなど映画的な表現も自動生成。

  • 音声合成との統合:ナレーションや会話を自然に組み合わせられる。

つまり、これまでの動画生成AIが「断片的な映像」を作る段階にとどまっていたのに対し、Sora2はストーリー性や演出を含んだ“映像作品”を生成するAI へと進化しているのです。


実験:Sora2で授業動画を作ってみまし

そこで今回、Sora2を使って短い授業風動画 を生成してみました。Cameo登録したAIが作った私が教壇に立ち、授業を行う映像がどの程度自然に見えるかを検証しました。まずは以下の動画をご覧ください。

一つ目の動画と二つ目の動画では少し声のトーンが変わっていますが、おおむね問題ないようです。


生成してみての印象

Sora2で生成した動画のクオリティは非常に高く、動作も滑らかで、話し方も自然に感じられます。特に注目すべきは、フィラー音(「えーっと」など)が全く入らない こと。コロナ禍のオンデマンド授業では自分の話し声を録音していましたが、どうしても間延びしたり、フィラーが入ったりしてしまいました。Sora2なら、こうした“人間らしい不完全さ”を排除し、スムーズで聴き取りやすい日本語 で授業が進められます。

ただし、いくつかの課題もあります。例えば、動画内に表示される日本語テキストはまだ不自然 な場合が多く、正しい日本語表記にするには調整が必要です。また、適切な内容や演出にするためには試行錯誤が必要 で、生成に時間もかかります。10秒の動画を作るだけなら、自分で喋って撮影した方が早いというのが正直なところです。


今後の可能性

しかし、将来的にSora2が長尺の動画生成 に対応するようになれば状況は変わってくるでしょう。たとえば、自分の著書や授業資料をSora2に読み込ませ、その内容に基づいた完全自動授業動画 が作れる日も遠くないかもしれません。AIが自動で教材を生成し、教師の代わりに授業を行う――そんな未来の入り口に、Sora2は立っているのです。

Sora2は、“AIが話すだけでなく、AI教える”ことができるようになることを示唆するツール でしょう。教育現場での応用可能性を探るうえで、今後も注目していきたいと思います。

映画「トロン」の新作を観てきた

2025年11月 3日 (月) 投稿者: メディア技術コース

突然、秋を飛ばして冬になったような体感の今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

先日、ふと思い立ってディズニー映画の「トロン:アレス」(2025年)を劇場で観てきました。レイトショーの回だったからか、人はまばら。吹き替え版も上映期間が終わって、劇場公開の規模は縮小しているようです。世間の興行的にはどうだったのでしょうか。

さて、「トロン」という映画、1作目は1982年に公開された映画で、CGIが映画作りに導入された歴史では一つのエポックメイキングな作品です。

この旧作「トロン」は配信で観ることもできるので興味ある方は是非観てみて下さい。ただし、私見ですが、マイコン大好き少年だった私が公開当時に見た記憶では妙に子供向けでピンとこなかった印象もあります(中盤までは世界観を楽しめるのですが、徐々に映像に慣れてしまって飽きてくる感じでしょうか? そしてハードなSF感はぐるぐる回るヒラメ顔のラスボス造形で台無しに…)。

この第1作目、当時の興行成績も今一つ振るわなかったらしく、ディズニーの実写絡みのSF映画の制作はいったんここで打ち止めになったそうです。1980年代というとスター・ウォーズのヒットを受けて大SFブームが起こっており、猫も杓子も殺人鬼も怨霊も宇宙に出たりビーム兵器を打ち鳴らしていた時代(参考例:「スペース・キャット」('78年 猫)、「ザ・ダーク」('79年 殺人鬼)、「マニトウ」('78年 怨霊))。なので、ディズニー的にも狙ったのでしょうが、この作品の前の大赤字の黒歴史作品「ブラックホール」('79)でかなりの痛手を被った経営危機の時代でもあったようです(なお「ブラックホール」は映画音楽で初めてデジタル録音を試みた映画だそうな。「ブラックホール」も007シリーズで知られるジョーン・バリーの楽曲はカッコいいのです)。

さて、この1982年版の「トロン」、興行成績はさておき、当時の技術的な力業と独自なデザインの世界観など、見どころが多いのも確かです。”ライトサイクル”と呼ばれる丸っこいバイクやら、”レコグナイザー”と呼ばれる変な門みたいな偵察機など、今見ても独特です(余談ですが、このレコグナイザー(偵察機)は、前述の大コケ大作「ブラックホール」の敵役ロボット"マクシミリアン"のデザインを参考にしているという話もあるそうです。変なデザイン~と思った人は形を見比べていただけると納得すると思います)。
コンピュータ内の世界の描き方もモノクロ撮影に彩色したドラマパート(かなりの手間と工程をかけているらしい)など、モノクロに蛍光色が乗っている感じで、下手に現実の実写世界に近くない分、異世界な印象を残します。線画主体の世界の見せ方も当時のスペックの制限からの描写なのでしょうが、逆に他では見ない表現になっており、新鮮に感じる次第。
この”電脳世界”的な表現は、CG技術が上がった続編以降では、妙に世界をリアルに作りこみすぎて普通のコスプレアクションになっており、物理法則に従わないオリジナル作品の方が魅力を感じるのですが、皆さんはいかがでしょうか。

さて、1作目、当時の裏話的なものがあるのかな?とインターネットのデータベース(IMDB)を見ていたら当時の計算機のスペックが出ていました。

>使用されたコンピュータの1台は、メモリがわずか2MB、ストレージ容量も330MB以下だった

今の皆さんから見たらどうでしょう。ギガバイトが普通になった昨今から考えると時間の流れを感じます(ただし、当時のマイコン(パソコン)のスペックはkB(キロバイト)の世界が普通だったので、これでもかなりの高性能のコンピュータということになります)。

ーー

さて、最新作「トロン:アレス」の話を少ししておくと、懐かしい部分もあり、結構楽しめました。でも、やっぱり物が美麗に高精細になりすぎると他のヒーロー物作品と変わらなくなってしまう印象です。(前作(「トロン:レガシー」(2010年))では、グリッド世界の中で雨とか降ってたはずなのに、今回はそれがないことになってるのか?とかも気にもなりましたが…。)で、映像技術が進歩した昨今ではカッコいいっぽいものを見慣れてしまい、人は”見慣れてる”映像には感銘を受けなくなる”のかなあ、とも思った次第。
あとオリジナル1作目にあったシンセサイザー音楽の良さが無いのも寂しい気がしました(オリジナルのウェンディ・カーロスの楽曲はハッタリが効いてて好きなのです)。

ところで、いつも思うのですが、よく悪者が使ってるディスプレイ一体型の、平面でキーストロークがないキーボード。あれって使いにくいんじゃないかな。

(以上文責:永田明徳)

グローバルメディア論 メディア コントロールについて ③

2025年10月24日 (金) 投稿者: メディア社会コース

米国のNGO団体Fairness & Accuracy in Reporting FAIRメディア監視団体が、まとめているメディアコントロールの実態について、このブログで紹介をしてきました。前回に紹介した項目以外にも、メディアコントロールの方法は存在しています。その一つに、センセーショナリズムの多用が上げられます。メディアは、人々が驚くような内容、しかし人々の生活とはかけ離れた内容をセンセーショナルに描くことにより視聴率をあげようとする傾向にあります。例えば、リアリティを増長させる技法として、防犯カメラがとらえた、衝撃的な瞬間のループ映像を多用したり、事件現場の臨場感を演出するためにあえて手振れのショットを使うなどがあげられます。市民は、情報の受け手として受動的に振る舞う傾向があるため、これらの技法は人工的に国民の「合意」を形成するため活用されてきました。エドワード・S・ハーマンの共著『マニュファクチャリング・コンセント』(1988年)において、「合意の製造」(Manufacturing Consent)が概念的に紹介されており、メディアは支配層の利益に沿って情報を選別・加工し、国民の「合意」を人工的に形成するという理論が体系化されています。皆さんは、是非、少し難しい理論的な内容ですが、このような概念を知ることにより、客観的にメディアに向き合う姿勢を是非、身に着けてみてください。民主主義国家に生きる我々の未来は市民、一人一人が、正確な情報を精査し分析する能力にかかっているのです。

文責 飯沼瑞穂




グローバルメディア論 メディア コントロールとは何か②

2025年10月22日 (水) 投稿者: メディア社会コース

  米国のNGO団体Fairness & Accuracy in Reporting FAIRメディア監視団体は報道の正確さと公正さを広めることを目的とした団体ですが、こちらがまとめているマスメディアがどのようにバイアスがかかった報道を自ずと行っているか、以下のようにまとめています。

1.Cooperate ownership: 利益を挙げる必要があるだけでなく、 メディアを主要している企業が単一化しており、巨大になっている。多様な声を消している。

2.Advisor influence-広告主は自分たちの商品や企業をネガティブに語る映像をサポートしない。中流階級の人達、商品の買ってくれそうな層の人たちに向けた内容の番組が多くなる。

3.Official Agenda- 政府の政策、メディアのプロデューサーや監督などは政府の役人などと交流を持っており、なかなか政府の政策に反対した意見の報道をしようとしない。

4.The PR industry-報道メディアの業界では、利益を挙げるためにレポーターの数をなるべく減らす傾向にある。レポーターは独立した、取材やリサーチを行うことが困難になっている。

皆さんも、バラエティ番組などでスポンサー企業の商品が番組構成に取り入れられているのを見たことがあるかもしれません。これは、メディアコントロールの一種です。また、政府の政策とは反対の意見が、なかなかマスメディアで取り上げられない場合などもあります。また2000年代 アメリカのビル クリントン大統領政権下の民主党時代以降、グローバル メディアはコングロマリット化が進み巨大資本による買収によって5つの巨大 メディアグループが誕生しています。それにより、ネットプロバイダー、配信企業、映画、映像制作会社、テレビ局、新聞、出版を統合され、多用な声が消されてしまっているという実態が存在します。

つづく 文責 飯沼瑞穂

 

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