2012年3月の15日から17日まで、科学未来館で「インタラクティブ2012」というシンポジウムが開催されました。メディア学部からは、大学院生(修士課程)の田中くんがインタラクティブ発表という部門に参加し「インタラクティブ観客賞」を受賞しました。
インタラクティブ発表というのは、論文の投稿に加えて、会場で作品をデモしながら説明する部門です。インタラクティブ観客賞というのは当日来場してデモを見た人たちの投票で選ばれるものですが、田中くんの受賞はシンポジウム3日目にデモを行った54もの研究のなかから選ばれました。投票をしたのはシンポジウムに参加した方たちですから、自分たちも同じ分野の研究をしている人も多く含まれていたと思います。その中で選ばれたのは、作品としての完成度(面白さ)と同時に、作品の基礎であるインターフェースの可能性を感じていただくことが出来たからではないかと思っています。
論文のタイトルは「スマートフォンを利用した複数画面の連携表示と動的なレイアウト変更によるアプリケーション」というものですが、具体的にはスマートフォン(iPhone、iPad)を2台並べ、両方の画面を指でつまみあわせるようにすると、それらで実行されているアプリが連動して動作するようになる、というものです。
アプリケーション(DynamicCanvas)のデモ動画この仕組を利用して、今回の発表には3つの異なるアプリを作成しました。上の動画のものは、つなげるたびに複数の画面が仮想的な一つの画面となって画像や動画が大きく表示されるものです。画面のつなげ方も自由ですし、アプリの動作中でも画面をつなぎかえることができます。その他にも2つのアプリケーションを作成し、そのうちの一つのTuneblockは、
第15回 文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選ばれました(
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この研究には大きな2つの特徴があります。一つは、複数のスマートフォンを利用したものであること。アプリケーションは一台でも動作するようになっていますが、3台、4台とつなげることでもっと面白くなるものです。一人でたくさんのスマートフォンを持っている人はそういないでしょうから、友人に声をかけて何名かで一緒に遊ぶことになるでしょう。つまり、複数の人を直接結びつけるような潜在力をもっているということです。このインターフェースを利用したアプリケーションをうまくデザインすることによって、ネット越しにではなく、人と人が直接コミュニケーションをとるきっかけになるような企画をつくれるのではないかと期待しています。
もう一つは、この研究はアプリケーションという作品そのものではなく、「指でつまんで複数のアプリを連携させる」というアプリケーション作成の土台となるコンセプトを提案するものだということです。単に「こういう作品を作りました」ということにとどまらず、新しい表現を考える媒体(メディア)を提案したという観点からみて、メディア学部で目指すべき研究の一例として誇れるものだと思います。