音声さんをあてる
2012年4月20日 (金) 投稿者: media_staff
ドラマのロケで「音声さん」はじっと座り続けます。ひたすら座っている。(☆1)はじめは「いいなあ」とうらやましかった。だって、長い長いロケの撮影中、僕たち美術スタッフは、ずっと立っているのだ。座っている美術スタッフとは、すなわち「いなくてもいい」人。いやでも立って働かなければなりません。
ロケ現場でいつもじーっと座っている人。それが「音声さん」である。しかしこれを材料にして、当てることは出来ない。まさか、「あなた痔ありますか?」と聞く訳にもいかん。
「音声さん」は撮影を中断する人である。僕たち美術スタッフは、いつも撮影は早く終ってほしいと思っている。早く帰りたい。いや、それだけではない。撮影時間が押すと、苦労して用意したロケセットが無駄になることもある。この撮影サクサク進んでほしい。それなのに、あともう少しでOKという時に限って「音声さん」の声がひびくのである。「すいませーん。ヒコーキー。」
「なんでヒコーキがだめなの?」最初のころは、僕は本気で頭にきたもんだ。いいじゃんか、ヒコーキの音なんか。ほっとけば。ブロロロロロー、っている音がはいったら、映像にヒコーキの影を合成すればいいじゃん。なんて。まさか、そうはいかないけれどね。野外でのロケは天気との戦い。だから雨や風、いろいろなことで撮影が出来なくなるのは当然。だがしかし飛行機の音や、遠くのサイレン、バイクの通過なんかが、そんなに大きな問題なの?
今ならが、僕にもわかります。テレビ番組にとって「音声」は非常に大事なもの。特にドラマやエンターテインメントの番組で「音が録れていない」ということは、すなわち事故。映像のほうが情報量が多い分だけ大事と思われがちだけど、実は逆なんです。1984年の「ドリフの全員集合」の事故も、照明の停電だったから生放送を続けることができたのだと思う。テレビドラマも実は、ラジオドラマに映像がついたようなもの。それくらい「音声」は重要なのだ。
だから「音声さん」の仕事は大変。もしも大事な「音」が録れていなかったら「えらいこと」なのだ。特にそれが主役の俳優さんのセリフだったら。「音声さん」はただ座っているのではないのだ。神経を研ぎすましてヘッドホンの「音」に集中している。そして、機材のトラブルの無いように真剣に働いているのだ。実は大変な仕事。真面目で、忍耐強くなければ出来ない仕事。それに、撮影の中断だって、それは当の「音声さん」自身が一番つらいはずだ。
だから、こういうことです。はじめての「スタッフ顔合わせ」に出たら、一番まじめそうで「職務に忠実」そうな人を探してください。控えめだけど忍耐強そうな人。それが「音声さん」なんですよ。いちばんまじめな人。ちょっと数学の先生とか、学者タイプに通じるものがあるかも。当たりますよこれ。
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☆1:ロケ現場でモニターの前で堂々とすわっている人は、このほかに、監督さん、記録さん、TD(テクニカル・ディレクター)さん、VE(ビデオ・エンジニア)さんってところですかね。監督さんは、立ったり座ったり忙しいよ。
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