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ちかごろ学問界に流行りしもの

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学問界と言っても、コミュニケーション研究という分野です。

コミュニケーション研究は、人はどのように言葉やジェスチャーを使って他者に伝えたいことを伝えているのかを調べる学問です。「言葉を発することは何かを行うことだ」と言われています。たとえば、`この船をクイーンエリザベス号と名付ける'とか'明日雨が振るって方に6ペンス賭けるよ'と言うと、その船はそれ以降クイーンエリザベス号と呼ばれ、明日雨が降らなかったらこの発言者は誰かに6ペンス払うはめになるわけです。一つの発言がそこから先の世界を変える。この例は、哲学者オースティンが頭の中で考えたものです。

しかし、頭の中で考えているだけでは良く分からんじゃないか、じゃ、実際に話してもらった会話を収録して分析してみよう、という流れが1960年頃から始まりました。できるだけ自然な状況で、できるだけ普段の会話に近いように、ということを目指して。大規模会話データを作成する「コーパス言語学」と呼ばれる分野が発展していきます。我々も、できるだけ友達同士の会話が再現できるようにと収録したのが、下の写真のようなものです*1。防音室の代わりにラウンジで、音が響かないように吸音カーテンを吊るして収録したものです。

3party

*1 このデータは近々、情報学研究所のSRCという所から、研究者向けに公開される予定です。

さて、近頃、この「できるだけ自然な状況で、できるだけ普段の会話に近いように」の『できるだけ』というのが外せないか、という流れが出てきました。本当に人々が生活していたり仕事をしている現場に出向いて、生のリアルなコミュニケーションを採取し、それを分析できないか、ということです。

今、認知科学会という学会ではフィールドに出た認知科学というテーマで特集論文が募集されています。スポーツ・演劇・ダンス・音楽・料理・教育・介護・制作などの現場における、当事者たち自身のリアルな動機や目的に基づく自発的な活動を取り上げた研究を募集するものです。


ということで、私もフィールドへ通っています。

場所は、長野県下高井郡野沢温泉村。スキーと温泉で有名なところです。

でも、我々が収録するのはスキーヤーの滑りでもなく、温泉場の会話でもありません。

この地に古くから伝わる道祖神祭りというお祭りの準備をする人々のコミュニケーションです。

このお祭りは毎年1月15日、山から伐ってきた木で造った高さ約7m、広さ約8㎡のお社を燃やす、というものです。お祭りの準備とは、このお社を造って燃やすことなのですが。。。

造るといっても真冬なんです。燃やすといっても大きな家一軒を燃やすようなものなのです。ちょっと収録した一場面を見てください。

Photo

雪の舞っているのが分かりますか?

Photo_2

火の粉の舞っているのか分かりますか?

過酷なのです\(;゚∇゚)/

んなもん撮ってどうすんねん!

いやいや、なんと、書籍化決定!
シリーズ「フィールドインタラクション分析」の第5巻として近日発刊予定!

Finteraction_3

どの巻も、本当の活動現場に行ってデータを収録し、そこで言葉や身振りを使って人々が互いに何を伝えあっているのかを分析するものです。書店で見かけた折には、是非てに取ってみてください。


執筆:榎本美香

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