おもしろメディア学 第15話 漫才の科学
2014年7月31日 (木) 投稿者: インタラクティブメディアコース
漫才は日本で独自に育まれた文化である。
小道具などはほとんど用いられず話芸だけで笑いを誘う。ただ、漫才師が2人舞台の上で会話するだけで、どうして観客はその世界に惹き込まれるのだろうか?
本研究室では、お笑い芸人に様々な舞台設定で漫才やコントをしてもらい、2人の会話が観客に対してどのような働きかけをしているのかを分析している。
例えば、「サンドイッチマン」の場合。本学のメディアホールを舞台とし、観客の居る場合、居ない場合で同じネタを披露してもらう。この時、我々の立てた仮説は以下である。
「観客が居るときの方が観客に向かって話しかけることが多い」
実際にはどうであったか?
こちらは観客が居る場合の写真。
こちらは観客が居ない場合の写真。
全く同じネタ(結婚式のスピーチの相談というネタ)の同じセリフの場面である。ボケ役である宮澤さんに着目してほしい。観客が居る場合は、相方の伊達さんの目を見て話しているのに、観客が居ない場合は紙面に顔を落としている。データ全体を観察すると、観客が居る場合は相方を見ている時間が長いのに対し、観客が居ない場合は正面を向いて観客席の方を見ている時間が長い。すなわち、我々の仮説とは逆の結果なのである。
この観察結果から、観客が居る場合、自然な2人の立ち話であるという演技が前面に押し出されていることがわかる。観客は、あたかも2人の立ち話を立ち聞きしているかのような錯覚におそわれる。観客を魅了するためには、観客に向かって話しかければよいわけではないことがわかる。
榎本美香
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