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きれいに拡大する話

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その昔、「ブレードランナー(1982)」という映画の中で、主人公の刑事が写真を解析する場面がありました。この映画、制作当時としては時代を先取りした、というと大げさですが、よりリアルな近未来を描いたものとして話題になりましたが(コンピュータグラフィックス=CGを大々的に導入したという触れ込みの「トロン」の旧作も同年の制作でした)、主人公がある写真から手掛かりを得るために、「口頭で」いちいち「座標」を指示しながら、「そこを拡大しろ!」、みたいな指示を行っていて、わ~面倒!と思った記憶があります。

今なら指で画面をつまんで、ピンチアウトで拡大して終わる話ですね。

“写真を拡大していくとそこに何か見えなかったものが写っていた”、というのはロマンでありミステリーなのですが(そして時折、映画やドラマでは都合よく画像が引き延ばされたりするのですが)、技術的な話をしてしまうと“引き延ばす”行為にはやっぱり限界があります。そして、この“引き延ばす”話は『元々そこにない情報をいかにもっともらしく引き出すか?』という問題につながります。
近年、映像機器の拡大化に伴って画像の鮮明化(もしくは高精細化)という技術がクローズアップされるようになってきました。昔のいわゆるブラウン管TVなどはそもそも帯域を圧縮するという意味もあって(情報量を少なくするため)、人の目をごまかす再生方式を取っていました。これが近年になって映像の密度が増したために、「いかに無くなっている情報を補うか」という問題が出てきたわけです。

さて、画像が綺麗に見えるとはどういう条件でしょうか?パッと考えると以下のような事柄を思いつきます。
  • コントラストが明確 階調が鮮明
  • 形が細部まで鈍っていない 形状が鮮明
  • 時間的な応答が速い、ブレない画像
要はくっきりはっきり見えている(ような)条件が満たされれば、それなりに「きれいに見える」ということになります。
しかしながら、大画面化を考えた場合、もともとの画像を単純に拡大しただけでは輪郭部分も拡大されてしまうので、“ぼやける”ことになります。では、そのようなぼやけた画像を、くっきりはっきり見せる、にはどのような方法があるでしょう?
  • 輪郭線を補ってコントラストを強調
  • 形状などを確率的に(ありそうな状態まで)補間
という手法が考えられそうです。
前者の輪郭線を補う手法は、良くあるフォトレタッチソフトの「シャープネス」という方法で実現されています。境界線を検出して輪郭を「上書き」する方法ですね。後者の確率的に補間していく手法は前後に撮影されたような似たような画像を用いて(あるいは蓄えられている知識を用いて)、その点に本来あるべき一番ふさわしい値を選んでいく方式になります。

ちょっとした例を示しましょう。2枚の画像の上が劣化した画像、下が劣化した画像を“複数集め”て“確率的に”値を補間した画像です。質の悪い画像も数多く束ねて合わせればきれいな画像に修復できるという例です。

Koka0

Koka1


小さく表示してそれなりの画質に感じていた画面を単純に拡大するとかえって粗い箇所が目立つようになることが多々あります。これは私達の目のイイカゲンさに起因します。目には「無視できる不具合」は無視して都合のいいものだけを見ようとする傾向があります。なので、拡大するとそれまで無視できていた異分子が無視できなくなって意識上に上ってくるのです。

見えないものは美しい、というのは「夜目遠目、笠の内」…のように古今東西いろいろなことに当てはまる現象ではありますが…。
(文:永田明徳)

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