専門演習「作曲演習」
2014年7月10日 (木) 投稿者: media_staff
皆さん、こんにちは。メディア学部の伊藤です。本日は、私が担当している専門演習「作曲演習」についてご紹介します。
専門演習は2年次後期と3年次前期に開講されるものです。メディア学部に入学してから講義や基礎演習で学んだことを、実践的な体験を通してさらに深く理解しつつ、それぞれの分野・領域で必要となるスキルの習得を目指す演習です。現在、20ほどの演習が開講されており、「作曲演習」はそのうちの一つです。
ところで「作曲」というと皆さんはどのようなイメージをもっていますか? 例えば、楽器が弾けたり専門的な音楽教育を受けたりした人しかできないと思われる方が多いと思います。その一方、最近はパソコンで手軽に音楽制作ができるようになり、趣味で作曲を楽しむ人も増えてきています。皆さんの中にも、パソコンを手にしてから音楽に目覚めたという方がいるのではないでしょうか。いろいろと試行錯誤しながらも「音」から「音楽」に変わっていくさまを体験するのは楽しく、それはとても素晴らしいことですね。自由に伸び伸びと気持ちのおもむくままに創作の世界に身をゆだねていると、時が経つのも忘れてしまいます。
でも、自分自身で楽しんだり周りの親しい人に聴いてもらったりするだけでなく、より多くの人の耳(あるいは心)に残るような曲を作ろうとすると少し工夫が必要です。それは料理と同じで、自分や友人の舌が満足したからといって、そのままほかの人も同様の評価になるとは限らないのと似ています。耳でも舌でも、受けた刺激を知覚するのは「頭」(脳みを)であって、耳や舌そのものではありません。そのことを考えると最終的に「曲」として仕上げられるのは、音楽を聴いている人々の「頭の中」と言ってもよいでしょう。
ただし、私たちは鳴っている音すべてを聴いているわけではありません。レコーダーで身の回りの音を録音し再生してみると、自分が感じている以上にいろいろな音がスピーカーやヘッドフォンから聞こえてきて驚いた経験はありませんか? 私たちは自分にとって興味のある音や必要と思われる音を選んで聴いているのですね。ここでの「音」を外界からの「情報」とすると、「音楽を聴くこと」は「情報処理をすること」とも言えるでしょう。もちろん、この処理には聴く人の過去の音楽体験や生来の好みといったものの影響が皆無ではないので、すべての人が同じように聴いているわけではありません。それでも、今まさに聴いている音[現在]をその前の音[過去]とのつながりでとらえ、次に鳴らされる音[未来]を予測する傾向は、あまり大きな違いはないと思われます。これは音楽に限らず、映画やアニメ、ドラマ、演劇、落語、漫才、そして小説や漫画といったものまで含めて、時間の経過によって展開される事象すべてに共通した性質と言えるのではないでしょうか。
これらのことを踏まえ、この「作曲演習」では音楽における「コントラスト」(例えば、音の「長短」「高低」「強弱」や「音色」のニュアンスの違いなど)を考慮し、それを「反復」(統一性)と「変化」(多様性)の観点から、音を扱う術(すべ)を学んでいきます。ここで大切なのは、音楽における「構築性」を意識することです。ハーモニーなどの音楽理論は、この演習ではほとんど扱わず、短いフレーズやリズムなどの断片をいかに展開させるかに指導の重点をおいています。また、さまざまなスタイルやジャンルの曲を取り上げ、上記の観点から分析も行っていきます。
最初にお話ししたように、作曲は本来、自由なものです。ですから、この演習で行う作曲の方法が「正しい」ものでも「唯一無二」でもありません。しかし、自らが思い描いたイメージに沿って、一つ一つ積み木を重ねていくような作業は、音楽に限らず、すべての「ものづくり」において重視されるものと思います。その経験は、日常のあらゆるところに活かされていくものでしょうし、幅広い分野・領域を網羅するメディア学部であるからこそ、私自身、大切にしたいと考えています。
前期授業終了まで残り1ヶ月あまりとなった今、「作曲演習」を履修している学生たちは最終作品の制作に余念がありません。
授業の様子
どのような音楽が教室に響き渡るのか、私も今からとても楽しみです。
(伊藤 謙一郎)
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