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おもしろメディア学第13話「CGやりたいのにデッサン?ありえねぇ~っ!...って,そうかな?」

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読者の皆さんの多くも,これまでに一度は鉛筆デッサンを経験したことがあるかと思います.多くの方は学校での美術の時間に描いたことがあるでしょうし,趣味として描いている人もいるかもしれませんね.

さて,この鉛筆デッサン.クリエイティブ業界への就職を目指す多くの大学生が,自身のポートフォリオ(作品集)に必ずと言っていいほどデッサン作品を収録します.逆に企業側のほうから,「デッサン作品をポートフォリオに収録すること」を要求する場合も見受けられます(インターン募集の場合,その割合が増えるようにも思います).
皆さんもご存知のように,昨今のエンターテインメント業界(CG,映像,およびゲームなど)や広くデザイン業界といわれる分野では,その業務のほぼ全てをコンピュータを使用して行います.事務処理からタスク・スケジュール管理,そして肝心のクリエイティブ業務まで,コンピュータなしでは何もできないと言っても過言ではないほど,コンピュータを使用することは当たり前となっています.逆に言うと,「手書きの書類や絵,および図面」などはほとんど用いられることはありません.
ところが,それではなぜ就職活動の時には手書きの鉛筆デッサンが求められるのでしょうか?また,就職活動に限らず,美術系大学では入試科目に「デッサン」がある大学もありますし,大学の授業としてデッサンをカリキュラムの中に組み込んでいるところもたくさんあります.
その後の作品制作の際には,手書きのものなどほとんどないにも関わらず,です.

それは,なぜなのでしょうか?


その答えは,「デッサンで一番大切なことは,絵を描くことではない」からです.デッサンにおいて一番大切なことは,「ものをよく観ること」です.
クリエイティブ業界の企業がポートフォリオにデッサン作品を求める理由も,まさにここを重要視しているからに他なりません.
では,「観る」とはどういうことなのでしょうか.「みる」という漢字は,見る,観る,視る,看る,診るなどがあり,それぞれに意味も異なります.私たちの視覚認識プロセスを整理すると,

1.見る(なんとなく漠然と)
2.感じる(きれい,おもしろい,自分の興味や感性に触れる)
3.観る(なんだろうと分析的にみる,注意深く観察する)
4.理解して認識する
という流れになります.デッサンをするということは,見て,感じて,観て,モチーフをかたちづくっている構造や特徴を追求し,隠れて見えない部分を想像し,新たに発見し,理解し,認識したものを描くということです.
CGでは,シーンに登場するキャラクタやオブジェクトをモデリングします.その際に必要になるものが,モデリング対象となるモノの特徴を捉えて,見えない部分を想像し,コンピュータ上で再現するための「目」と「頭脳」です.VFX映像を制作する場合,表現対象となる現象の特徴を捉え,どのようなステップで映像として再現するのかを考えなければなりません.したがって,現象をよく観察し分析する「目」と,映像化するための「頭脳」が必要になります.これは,ゲームデザイン・プログラミングなどにも言えることです.ゲームAIはどのようにするのか,どのようなGUIにするのか,どのようなイベントをどのように発生させるのか,などはまさにこれまでのゲームやユーザを多角的に分析し,論理的に新しいゲーム構造を構築する「目」と「頭脳」が必要になります.
このように考えると,昨今のデジタル化されたクリエイティブ業界においてなぜ手書きのデッサンが求められるのか,お分かりいただけたのではないかと思います.
上記で述べてきたように,昨今のクリエイティブ業界では「よく観察して,理論的に分析し,論理的に自分のアイデアを構築していく」ことが必要になります.まさに,感性・芸術・科学が融合された能力が求められるわけです.東京工科大学メディア学部では様々な分野の勉強ができます.その恵まれた環境の中で,ものごとをじっくり観察する「目」と,自由なアイデアを発想する「感性」と,論理的にそのアイデアを構築していく「頭脳」を養ってください.

メディア学部
 菊池 


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