おもしろメディア学 第21話 長く見えたり短く見えたり?
2014年8月13日 (水) 投稿者: コンテンツ創作コース
映画やアニメーション、ゲームに登場するキャラクターのポーズは、キャラクターの特徴やそのシーンの状況を示すうえでとても重要な役割を持っています。このようなキャラクターのポーズを示すうえで、錯覚のことも大きく関係しています。
図1(a,b)は同じ長さの線分の両端に矢羽を付けた図です。図1(a)は外向きに付けた線分が両端にあり、図1(b)は内向きに付けた線分が両端についています。これをみると、図1(a)の中央の線分は、図1(b)に比べて長く見えます。実は、「この中央の線の長さは同じである」といっても、多くの人は信じることができません。この例は、錯視量が非常に多い大きさの錯視といわれています。ミュラー・リヤー錯視といわれていますので、興味を持った方は是非詳しく調べてみてください。
(a) (b)
図1 ミュラー・リヤー錯視
さて、世界を楽しませてくれたサッカーのワールドカップも終わってしまいました。ゴールキーパーの活躍が目立った大会ともいわれています。PK戦になった時のゴールキーパーの姿勢を注意してみたことがありますか?
図1に円を追加した図2(a,b)は人のポーズを表しています。この図をみると図2(a)が大きく見えます。多くのゴールキーパーは足と手を図のように広げていることがあります。これによって、自分自身を大きく見せていると考えてもいいでしょう。ただし大きく見せたからといって、セーブ率が高くなったというデータは残念ながら私は持っていません。どなたか調べてみませんか?
図2 キャラクターの大きさ比較
ところで、コンピュータグラフィックスを用いたアニメーションやゲームにおいて、さまざまなキャラクターが登場します。有名なキャラクターにはそのキャラクター独自のポーズがあります。子供たちも大人たちもそのポーズを楽しんでまねています。CGソフトウエアを用いてキャラクターを制作するときには、設定されたキャラクターのさまざまな情報に基づいて形状を制作します。キャラクターの役割を示すさまざまな設定から特徴付けをして、単なるキャラクターの形状モデルを、生き生きとしたストーリーを伝えるキャラクターにする必要があります。そのために、図3のようなポーズによって、同じ大きさのモデルでも、異なった大きさに見えることを知っておくことが大切です。
図3 キャラクターのポーズ比較 (胴体の長さは同じ):メディア学部 坂内泰子による作画
「正義感が強くたくましい若い勇者の特徴を表すための良いポーズを作りたい」などと思ったあなたは、キャラクターメイキング[1,2]や錯視や認知科学を調べてみるといいでしょう。
キーワード:ミュラー・リヤー錯視、長さの錯視、キャラクターのポーズ、形状モデル、キャラクターメイキング
参考文献
[1] 近藤邦雄、三上浩司:コンテンツクリエーション、コロナ社、2014.9(発行予定)
[2] 金子満、近藤邦雄:キャラクターメイキングの黄金則、ボーンデジタル、2010
文責: 近藤邦雄
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