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おもしろメディア学 第17話 ゲームからの「お・も・て・な・し」 ~動的難易度調整をめぐる議論~

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面白メディア学の時間がやってまいりました.
今回はゲームにかかわる話題について紹介しようと思います.
皆さんは,ゲームをプレイしていて,「難しいステージ」とか「どうしても倒せない敵」がいた時にどうしますか?
きっと,失敗しても「今度は同じ失敗をしないように何度もトライ」してみたり,「敵の動きを予測」してみたり,場合によっては「自分のキャラクタの装備を変更」してみたり,「キャラクタを成長させてパラメータを上げてから挑む」や,「強い武器やアイテムを手に入れてから挑む」・・・などなどいろいろなことを考えると思います.
ゲームによってできることとできないことがありますが,何らかの形でクリアしようと努力しようとすると思います.そして,努力の末にステージをクリアした時,敵を倒したときには何とも言えない達成感を味わうと思います.それこそがゲームの醍醐味であると疑わない人が多いと思います.

そのような「ツンデレ?」なゲームが多い中,そんなにプレイヤーに努力させないで「クリアさせてくれる」ゲームシステムがあります.
それが今回の話題「動的難易度調整」です.

さて,どうしてこの「動的難易度調整」が議論になるのでしょうか?
動的難易度調整の具体例
2012年に任天堂が発売した「新・光神話パルテナの鏡」には,プレイヤーが難易度の上限値を決め,プレイヤーが敵からダメージを受ける度に難易度が下がっていくというシステムが採用されています.上手じゃないプレイヤーでもクリアできるようにする工夫の一つです.

また,VALVE Softwareから2009年に発売された「Left 4 Dead2」では,敵からダメージを受けた時など,プレイヤーが困難になる状態をシステム側で監視して,それに合わせて難易度を変えていく方法が採用されています.
そのほかにも,同じステージが何度もクリアできないと,スキップさせてくれるような機能を有しているゲームなどもたくさんあります.また,「動的難易度調整」ではありませんが,最初から難易度を自分で設定できたりするゲームもあります.

動的難易度調整のメリット
まずは,この動的難易度調整がうまく機能するケースを考えましょう.
せっかく,ゲームを購入したのに,そのゲームのエンディングにたどり着けなかったり,収録用意されているすべてのステージをプレイできなかったら残念ですよね.

そうした考えに立てば,何度もプレイしてうまくいかないところは,そっとゲーム側から配慮して少しやさしくしてあげたり,そのステージをスキップさせたりする「おもてなし」はありがたいものになります.
したがってこうした機能を持つゲームもだいぶ増えてきました.特に若年層やファミリー層向けのゲームに多く見られる傾向があります.
動的難易度調整のデメリット
一方で,この動的難易度調整がゲームそのものの面白さを損ねているという意見もあります.何度もトライして,強大な敵を倒そうとしているのに,勝手にゲームのほうで気を使って「倒せるようにお膳立て」されると,急激にゲームに対する意欲が失われるという意見があります.これは著名なゲームクリエイターであるアーネストアダムス氏も指摘しています.
また,自分でわざわざ難易度を下げるのは「プライドが許さない」というプレイヤーは多くいます.

「おもてなし」の背景
そもそも,このような「おもてなし」の背景には,ゲームのメディアとしての変化も大きくかかわっていると考えられます.従来のゲーム専用機用のゲームであれば,ゲームの内容を理解し,その難易度も含めて考慮して,パッケージとして購入します.この場合ももちろんおもてなしは大事ですが,ゲームの販売においてはそれほど問題にはなりません.むしろ硬派なゲームでなければコアユーザーは買ってくれません.
一方で近年のソーシャルゲームやスマートフォンのゲームは,基本無料でプレイができて,どんどん先を進める中で「アイテム課金」をしてもらうのが収益のモデルになります.対象もライトユーザーと呼ばれる,「比較的軽い気持ちでネット上の基本無料である膨大なゲームを楽しむ層」に向けたゲームになります.ユーザが数あるゲームの中から継続して遊んでくれて,課金までしてもらうためには,ユーザにストレスなくゲームを楽しんでもらうための「おもてなし」は非常に大事になってきたのです.
(ゲーム後半になると,ゲームからのおもてなしよりも課金しておもてなしを「買う」ようになりますが・・・)

プレイヤーにばれない「おもてなし」
メディア学部では,プレイヤーにばれないようにおもてなしすれば,動的難易度調整機能のデメリットも消えて,ゲームに対する満足度が増すのではないかと考え研究を進めています.
実際にゲームプレイヤーの実力を計測するための研究例や,実際に敵の行動選択を制御するAIを改良して,どのようなパラメータ変更なら気付かれにくいかを検出する研究などが進んでいます.

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上の画像は,実際に研究で作成したゲームです.ユーザに遊んでもらっている裏で,様々なプレイヤーのゲームの記録をとって,どうやって難易度を調整するタイミングや調整量を決めるのか分析しました.研究の詳細については別の機会にまたゆっくり紹介します.

是非,普段遊んでいるゲームが,皆さんに対してどんな「おもてなし」をしているのか考えながら遊んでみてください.

メディア学部 三上浩司

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