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おもしろメディア学 第19 話 「百聞は一見にしかず」って、いつでもいい話?

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「百聞は一見にしかず」とはよく使われる言葉です。言葉でいろいろ聞くよりも図や画像にして見れば、すぐに理解できるということです。多くの例が使われてこのようなことが主張されています。私も多くの場合このことは正しいと思うので、私の講義でも、この言葉はコンピュータグラフィクスの有効性を示すために使っています。

 しかし、いつもでこれは「正しい」のでしょうか?

1を見てください。これは立体を示しています。さて、どんな形を思い浮かべたでしょうか?

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                        図1 立体の画像例[1]


学生のみなさんに、図1を見て、いろいろな形を思い浮かべて、描いてもらったところ、図2に示すようなたくさんのかたちを思い浮かべることができました。これは錯視で有名な「ネッカーの立方体」と同じことです。奥行きがいろいろな状態に見えてしまうのです。

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              図2 さまざまな立体

「いろいろな立体を描くことができました!」というと良いことのように思われますが、これはメディア学の立場からいえば、大問題です。描いた人つまり情報の送り手が伝えたいと考えたことが、受け手に正しく伝わっていない、つまりコミュニケーションが正しくできなかったということを意味しているからです。

3に少し古い電話の子機のモデルをワイヤフレーム表示しました。これでは、本来見えないところも表示されており、わかりにくい状態になっています。そこで、コンピュータグラフィックスの技術であるシェーディング手法をと輪郭線を強調して表示します。この結果が図4です。電話の子機の形状をよりわかりやすく伝えることができています。

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                              図3 ワイヤフレーム表示   

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         図4 シェーディングと輪郭線描画[2,3]

 

 マンガ家が描いたマンガをみて、マンガ家の意図と違った内容として理解されたら、ストーリーが正しく伝わらず、そのマンガの主張は理解されないことになってしまいます。このことから、意図を正しく伝えるグラフィックスが必要なことが理解していただけると思います。グラフィックスをうまく利用することによって、「人と人をつなぐ」メディア学の一つの目的が達成できると考えています。

 コンピュータグラフィックスの応用分野はとても広く、さまざまな目的に使われますが、情報を伝達するためのうまい方法を理解するには、視覚や認知科学の領域も勉強するといいでしょう。おもしろメディア学の中で、不定期に、「グラフィックスと認知科学」というテーマで連載したいと考えています。

 キーワード:奥行反転、ネッカーの立方体、錯視、ワイヤフレーム、シェーディング,輪郭線描画

文献

(1)近藤邦雄、田嶋太郎:モダングラフィックス、コロナ社、1982

2望月義典、近藤邦雄、佐藤尚:形状特徴表現のためのエッジ強調描画手法、情報処理学会論文誌、Vol.40, No.3,pp.1148-1155,1999

(3)望月義典、近藤邦雄:細分割曲面の輪郭線抽出描画手法、情報処理学会論文誌,Vol.41,No.3,pp.601-607,2000

執筆:近藤邦雄

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