おもしろメディア学 第20話 プリクラ~美しくする画像処理
2014年8月12日 (火) 投稿者: インタラクティブメディアコース
外国の恋愛映画では仲良く写真を証明写真機で撮るカップルが出てくることがあります。こういう場面に続くパターンとしては、写真を撮った二人は運命に翻弄されて仲を引き裂かれ、写真の想い出だけを胸に大人への階段を上がるコトになる展開が多い様な気がします。。
にしても、海外の映画で『証明写真機』にまつわる話はあっても(注1)、『プリクラ』に出会うことはマズありません。
『プリクラ』…というのは登録商標で、プリントシール機、写真シール機というのが正式な呼称です。実はこの『プリクラ』に相当する機械は海外ではあまり普及しておらず(あってもちょっと年少者向けおもちゃ的な扱いらしく)、日本近辺独自の文化のようです。
デジカメやスマートフォンで簡単に写真が撮れる現在、この『プリクラ』は『簡単に手に入らない機能』を集客のために機械に『盛る』必要があるので、実はアイデアと技術の宝庫になっています。
さて、『プリクラ』に要求される機能を考えてみると、
- 願わくば、キレイに写る
- 願わくば、魅力的に写る
- 願わくば、スタイルよく写る
というあたりになるでしょうか。
一昔前の証明写真機だと、ありのママの姿がありのママに写り、学生証や免許の写真が夢も希望もない悲惨なことになっていたものです。しかしながら、ありのママに撮らない方向に『プリクラ』は独自の進化を続け、画像処理技術の向上も伴って、様々な機能が盛り込まれています(ある意味『真』を『写』さなくなっていますが…)。
さて、この『キレイに』『魅力的に』撮るにはどうすれば?という話ですが、まず、画像がきれいに見える条件としては、
- 照明をあてて影をなくす
- 塗りをぼかす(肌をきれいに)
- 輪郭をきれいにする(境界線をくっきり)
というのが基本的な技術で、『プリクラ』の画像加工の中にも組み込まれています。
プリクラ機能として盛り込まれる『デカ目』変換にも実は学術的根拠があります。『魅力のある』顔を作る条件としては、『均整のとれた』という条件がまず挙げられますが、『均整のとれた』という条件以上に魅力へ貢献しているのが『目の大きさ』ということも実験で確かめられています。つまり、顔の対称性が少しくらい崩れて(!)いても、目さえ大きければ、より魅力ある顔だと判定される場合があるのです。
で、ここでちょっと考えなければならないのが、『人間として許容できる範囲』の問題です。
人はリアルに近い存在に対しては『微妙な許容範囲からの逸脱』を敏感に違和感として捉えます。つまり、リアルな人の写真だと、人間として各パーツの大きさや位置がほんの少しでも許容範囲から外れた場合、突如としてその写真が『不気味に見える』ようになります。(これを『不気味の谷』効果といいます)。3Dアニメのキャラクタが必要以上にリアルにならない工夫がされているのも、容姿がリアルに近付くにつれ、ちょっとしたことで『不気味さ』が生じるのを軽減するためでもあります。
『プリクラ』の機能にはこの不気味に見えるかどうか?の安全装置は盛り込まれていません。なので、時として異次元空間に迷い込んだ顔画像になることも考えられます。くれぐれも『人間としての道を逸脱』しないように『プリクラ』を正しく使うように皆さんも気をつけましょう。
(注1: 証明写真機に謎の写真を残していく男の話をミステリー風に展開したラブロマンスの「アメリ('01)」という映画がありました。)
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