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おもしろメディア学 第23話 音名のはなし【その1】:「ドレミ」は何語?

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有名な「ドレミのうた」。皆さんも一度は口ずさんだことがあるでしょう。「ドはドーナツのド、レはレモンのレ、ミはみんなのミ・・・」という歌詞のあの曲です。もともとはミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中の一曲で、トラップ一家の家庭教師マリアが子供たちに「ドレミ」を教える場面で流れます。それぞれの歌詞の歌いはじめに「ドレミ・・・」の音名をもとにした言葉が置かれていて、歌を覚えると、音名とともにその音の高さも自然と覚えられる楽しい曲ですね。「私のお気に入り」や「エーデルワイス」といった有名な曲も『サウンド・オブ・ミュージック』から生まれたものです。

のちにこのミュージカルは映画化されたのですが、映画の中での「ドレミのうた」は「ド」ではなく「シ♭」の音を主音とする「変ロ長調」という調性なので、冒頭のメロディの音高は「シ♭ドレ・・・」になっています(※本来「シ」の音は「スィ」と発音すべきですが、ここでは「シ」と表記します)。このように、どの調性の曲でも主音を「ド」と読んで歌う方法のことを「階名唱法」「移動ド唱法」と言い、絶対的な音高と音名とを一致させて歌う方法は「音名唱法」「固定ド唱法」と言います。

ところでこの「ドレミ・・・」という音名ですが、何語だと思いますか? 日本語? 英語? いえいえ、実はイタリア語で「Do - Re - Mi・・・」なのです。では、日本語でどのように表すかというと「ハ - ニ - ホ・・・」、英語だと「C - D - E・・・」と表記します。日本語のほうは仮名文字の「いろはにほへと」、英語のほうはアルファベットの「ABCDEFG」が当てられているのですね。先ほど「変ロ長調」という用語が出てきましたが、あの「ロ」はまさしく日本語による音名で、その前の「変」は♭(フラット)を意味します。この「シ♭」。「音名のはなし」の話題の中心となる音名ですので、よく覚えておいてくださいね。

さて、ここで「ド - レ - ミ・・・」が「イ - ロ - ハ・・・」「A - B - C・・・」になっていないことを不思議に感じた方もいるのではないでしょうか? 音楽理論の歴史は古代ギリシャ時代までさかのぼることができますが、音名(※現在の表記とは異なります)についてもいろいろと考えられていました。そして、長い歴史の中で体系づけられていくなかで、もともとは今日の「ド」の音を「A」として「P」までの15文字が音高順につけられていた(※ただし「J」を除く)ものを、イタリアの音楽理論家、グイード・ダレッツォ(992年ころ〜1050年?)が「ラ」の音に「A」をつけることを提唱しました。「ラ」の音に「A」が割り当てられたのは、男声の最低音とされる「ソ」の音に「Γ」(ガンマ)をつけ、その上の「ラ」から順番に「A - B - C・・・」とつけていったからとされています。また、どの弦楽器にも「A」の開放弦があるので、演奏するときに音合わせがしやすかった背景もあるようです。オーケストラが演奏する前にはオーボエという管楽器が「A」の音を鳴らすのですが、この音をもとにオーケストラ全体の音合わせをします。いずれにしても「A」の音は、音楽ではとても重要なものであることがわかりますね。

実は、今回のテーマになっている「ド - レ - ミ・・・」の呼称は、グイード・ダレッツォが考案したものなのです。ただ、当初は「ド」を「Ut」(ウト)という文字で示していて、「シ」を示す文字はありませんでした。また、そのころは音名ではなく「階名」(音階の音の順番を示す名称)として用いられていて、それがやがて音名にも転用されていった経緯があります。このことを考えると「ドレミのうた」は、始まりが「ド」でなく「シ♭」でも「変」ではないのですね。「音名」と「階名」は混同しやすいので気をつけましょう。

次回は、音名のドイツ語表記についてお話しします。


(執筆:伊藤 謙一郎)

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