« 八王子まつりで学生ボランティが大活躍! | トップページ | スラバヤ工科大学博士課程学生が大学院メディアサイエンス専攻に短期留学 »

おもしろメディア学 第28話 金色ってどう描くの?

|

もし皆さんの目の前に、金塊があったら、その色は金色であると疑いを持つ人はいないでしょう。では、今皆さんが見ているパソコンやスパートフォンのモニタでも同じような金色を描くにはどうしたらいいでしょうか?
1.写真や絵画の質感表現

図1(a)は街でよく見かける支柱です。照明で光っている金色であることが分かります。図1(b)は、ドイツのドレスデン工科大学の展示物です。

Fig1

              図1(a)  支柱        図1(b) 図学を学ぶ模型
また、絵画でも金色や金属を描くことは多くあります。図2は油絵の具で描いた絵画の一部で、アムステルダム国立美術館を訪問したときに眼の前にして、その質感表現に大変驚きました。

Cimg01191

図2: 鍍金した酒杯のある静物(Still-life with Gilt Goblet)1635年
ヘダ・ウィレム・クラース Willem Claesz. Heda
http://en.wikipedia.org/wiki/Willem_Claeszoon_Heda
図3はメディア学部の佐々木和郎先生が描いた水彩画です。食器の金属がよく描かれています。写真とは違いますが、金属の質感がよく表現されています。水彩絵の具ですので、金色や銀色の絵の具はありません。しかし、このように金属の質感を表現することができます。日頃から、目にするものをよく観察しているからこそこのような描写ができるのです。先日、学部ブログに菊池先生がデッサンの大切さを述べていますね。

1609673_10201426962743455_144678335

             図3 水彩画(メディア学部 佐々木和郎教授)

(2)コンピュータグラフィックスによる質感表現

さて、デジタルメディア時代の現在、よく使われている液晶モニタは、赤、緑、青(RGB)の3色でさまざまな色を表しています。この3色はそれぞれ256階調で表現できるようになっています。つまり、それぞれ2の8乗であり、この3色で224の色、およそ1670万色が表示できます。さて、これらの色のなかに、はたして、金色はあるでしょうか?
図4は、長いおつきあいのある共同研究者の町田芳明さんから提供していただいた画像です。ある縞模様の画像の一部を3つに分けて示したものです。これらの画像の下にある小さなカラーチャートは、この画像がどのような色彩で成り立っているのかを示すため、「暗」「中」「明」でそれぞれ構成している色を3色ずつ抜き出したものです。

Goldmaking_2

                     図4 縞模様の画像
驚くことに、図4の画像をつないで引き延ばしてみると金の光沢を光の明暗のグラデーションによって表現することができます。図5は、明暗のコントラストを強めることで金の質感表現を変えています。図5(b)は同じ方法で描いた銀の表現です。

Gold1

                   図5(a) 金の質感表現

Silver1

                  図5(b) 銀の質感表現
 このことからわかるように、金色と思っている色は、黄色や茶や灰色といういくつかの色を用いて「質感を描く」ことによって、見ている人に金属が輝いているという印象を与えるのです。図6は金属の質感を表現しようとしたRGBの色変化のグラフとその値を利用した濃淡画像です[1,2]。図aに対して図b,cはハイライトや濃淡の変化によって金属の質感に近くなっていることが分かります。

Fig6

             図6 フォトレタッチソフトによる質感表現[1,2]
コンピュータグラフィックス技術でさまざまな画像や映像が作られていますが、金属が出てくる場面はたくさんあります。大平智弘[3,4]はその3次元モデルを利用した金属の質感表現の基礎的な理論を提案しました。この記録は参考文献5に詳しく書かれています。以下はその概要です。
「78年から79年にかけて、MITの客員研究員として赴任してアーキテクチュアマシングループ(Media labの前身)で研究をしました。フルカラーのグラフィックディスプレイがあったので、質感表現をしようと考えて、異方性反射を研究しました。工業デザインには金属の質感表現が欠かせないと考えたためである。図は、世界で初めて異方性反射を実現した結果です。Pの文字にその異方反射処理をしています。」

Ohiracgimage

                図7 世界で初めての異方性反射表現
8月に行われたSIGGRAPH2014で公開されたPixerのショートムービー「This Teapot's Made for Walking」には、最新の技術で金属の表現が使われています。
https://www.youtube.com/watch?v=iQaU9UP6dlg
以上のような図的表現をみると、人の目は周りの影響を大変強く受けることがこのような例からも分かります。そして、うまく伝えたい情報を伝えるために、古くから多くの工夫が行われてきたことが分かります。デジタル時代におけるコンピュータグラフィックス技術が発展してさまざまな表現が開発されていますが、伝えたい情報を常に考えて適切に表現することが大切です。

キーワード:金属の質感表現、RGB, ペイント、フォトレタッチソフトウエア、情報伝達
参考文献:

1. 近藤邦雄、木村文彦、田嶋太郎、インタラクティブレンダリングによる3次元形状表現、情報処理学会、情報処理、1985
2. 近藤邦雄、佐藤尚、尚 鳳武、インタラクティブレンダリングのための質感表現法、情報処理学会グラフィクスとCAD研究会、47-1 ,1990.10
3. 大平智弘:コンピュータによるブラシ仕上げ面の質感表現(第1報)、製品科学研究所研究報告 第89号、pp.1-10, 1980.1
4. 大平智弘:異方性反射を考慮したSHADINGモデル : コンピュータによる材質感表現、一般社団法人映像情報メディア学会、テレビジョン学会技術報告 6(36), 47-54, 1983.1
5. 大平智弘:CG-ARTS Interview (特集、CG最前線を行く), CG-ARTS協会

(執筆:近藤邦雄

おもしろメディア学」カテゴリの記事

« 八王子まつりで学生ボランティが大活躍! | トップページ | スラバヤ工科大学博士課程学生が大学院メディアサイエンス専攻に短期留学 »