メディア学大系 第3巻「コンテンツクリエーション」の出版
2014年9月23日 (火) 投稿者: コンテンツ創作コース
メディア学部創立15周年になる今年、メディア学大系シリーズの第3巻「コンテンツクリエーション」が出版されました。長年この分野を研究してきた近藤邦雄と三上浩司の共著です。
この書籍は、2年生の講義「コンテンツ制作工程論」と3年生の講義「コンテンツディベロッピング論」で教科書として利用します。3年生の講義「コンテンツディベロッピング論」では、教科書の内容を講義するだけではなく、学生自身が課題に取り組んでシナリオ制作を学んだり、シナリオを分析したりすることやキャラクターを制作するさまざまな手法を利用してキャラクターを実際に制作したり、制作支援ツールを制作したりすることを行う予定です。この内容は、数年前から大学院の講義で体系的にまとめており、それらをもとに学部生のために整理しました。
今までに発行された4巻の教科書は以下に紹介されています。
http://taikei.media.teu.ac.jp/
■相磯秀夫先生による「メディア学体系」刊行に寄せて
メディア学部の創立当時からの思想が分かります。「メディア」を理解するために大切な内容ですので、ぜひお読みください。
■「メディア学大系」の使い方 (監修:飯田仁、相川清明)
■メディア学大系 第1巻「メディア学入門」の出版 2013.02.09
http://blog.media.teu.ac.jp/2013/02/1-10ae.html
■メディア学体系 第7巻「コミュニティメディア」の出版 2013.04.16
http://blog.media.teu.ac.jp/2013/04/post-300d.html
■メディア学大系シリーズ「メディアICT」発行 [2013.09.24
http://blog.media.teu.ac.jp/2013/09/ict-ac89.html
■「マルチモーダルインタラクション」いよいよ発刊! 2013.09.24
http://blog.media.teu.ac.jp/2013/09/post-b891.html
最後に本書の「まえがき」を紹介します。
本書は,映像コンテンツの制作工程,シナリオやキャラクター制作の工学的な考え方や技術を学ぼうとする学生を対象としたコンテンツ制作技術の教科書である。
アニメやゲームなどのコンテンツは日本文化の一端を担っており,国際的な競争力も高く,多くの国から注目を集める分野である。欧米を代表とする諸外国では,アニメーションやゲーム,映画などのコンテンツを専門とする大学が多く存在している。一方で,日本は制作現場での実務による習得や現場の経験が重視され,これまで体系的な高等教育がなく,専門学校等における実務教育が中心であった。筆者らは1999 年メディア学部設立時から,工科系大学を基盤とする高度なコンテンツ制作技術の教育と研究開発に取り組んできた。従来は,一部の芸術系大学のなかで,対象とされてきたコンテンツ教育において工学的な知識の再構築を行い体系化することによって,産業界からも注目を集めるコンテンツ制作教育手法を確立してきた。
この研究教育を実践するなかで,大学内にアニメやゲームなどの制作プロダクション体制を整備し,この制作環境を活用し学生をプロジェクトベースで教育することによって,産業界が必要とするディジタル映像制作のための人材を育成してきた。これらの人材はクリエイティブな制作経験を積むと同時に高度な情報技術を身に付けることができるため,産学連携のプロジェクトが数多く生まれ,それら学術界のみならず産業界で高く評価されている。
アニメの分野では,コンピュータや3D?CG の導入に伴う制作工程の変化に際し,従来からの技術をディジタル技術に発展的に移行するために,著者のひとりである三上らがアニメーション制作会社と連携して,制作工程の詳細な調査とその体系化を行った。これらの成果は「プロフェッショナルのためのデジタルアニメマニュアル」として,業界団体を通じて,アニメーション制作会社や映像制作会社などに配布され,日本のアニメ制作を最も詳細に記した書籍として評価されている。
また,筆者らは映像作品の工学的な分析に基づく「シナリオの執筆・評価手法」や「キャラクターメイキング・評価手法」,「ミザンセーヌ手法(演出手法)」など,勘と経験による制作手法を体系化する研究と教育を行ってきた。これらの成果をもとに,映像コンテンツ制作にかかわる最大の業界団体である映像産業振興機構(VIPO)や画像情報教育振興協会(CG-ARTS 協会)と連携して人材育成セミナーを実施し,きわめて高い評価を得ている。
さらに,この成果をもとに,文・理・芸融合の学部であったメディア学部の特徴を生かし,芸術作品ではなく,産業界における商品たるコンテンツをより早く,安全に,高品質に生み出すことを教育の柱とした。そのためには,コンテンツの制作技能の習得とディジタル映像の原理や技術の理解の双方が必要になった。そこで1 年次からCG アニメやゲームなどの開発に参加できるカリキュラムを活用し,独自の教材や制作システムを開発して,制作とそれを支える技術の双方を関連付けて学べる仕組みを生み出した。これにより,単に既存のソフトを使用して映像制作をするのではなく,その仕組みや原理を理解することができるような教育内容を構築した。
工科系大学における高度コンテンツ教育は,プロフェッショナルと同じ環境を用いた制作の経験を土台に,制作技術をさらに高度化させるための開発力を身に付ける教育である。そのために「プロフェッショナルのものづくりと高度な工学教育を両立させた取り組み」を,未来のコンテンツ制作人材を生み出す優位性の高い教育カリキュラムに展開してきた。この教育成果は,「 アニメやゲームなどのコンテンツ制作分野における実学的工学教育の創生と高度化」というテーマで,関東工学教育協会賞(業績賞)の受賞という高い評価を得ている。
このような先端的でユニークな教育・研究の成果をもとに,本書をつぎのように構成した。
1 章ではコンテンツクリエーションと産業,コンテンツにかかわるスタッフとキャリアパス,およびクリエーションにかかわるリソースについて述べ,市場や資金,費用などのプロデュースの視点から考え方を述べる。
2 章では,コンテンツの制作工程について述べる。特にディジタル化によって進化するパイプラインについて焦点を当てて述べる。さらに,プレプロダクション段階における企画,シナリオ,デザイン,ミザンセーヌ,そして,プロダクション,ポストプロダクション段階について述べる。
3 章では,シナリオライティングの手法とシナリオ制作支援システムについて解説し,シナリオ制作の実際について述べる。
4 章では,ストーリーやキャラクターの行動,性格設定などのリテラル資料の作成やキャラクター原案の制作などを考慮したディジタルキャラクターメイキング手法,DREAM 手法によるキャラクターメイキング支援システムについて解説し,キャラクターメイキングの実際について述べる。
本書は,コンテンツ制作工程やシナリオ執筆の教育を行っている三上が1 ~3 章を,コンピュータグラフィックスを応用したキャラクターメイキングの教育を行っている近藤が4 章を分担執筆した。
本書をまとめるにあたって,本書の基盤となるコンテンツ工学を提唱した金子満先生,東京工科大学クリエイティブラボのスタッフの伊藤彰教氏,川島基展氏,岡本直樹氏,中村陽介氏,松島渉氏,早川大地氏,茂木龍太氏,菅野大介氏,兼松祥央氏,戀津魁氏,土田隆裕氏,下田美由紀氏にたいへんお世話になった。深く感謝する。
また,コンテンツ制作技術に関係する研究を一緒に行った東京工科大学大学院メディアサイエンス専攻の大学院生,ならびにメディア学部のコンテンツプロデューシングプロジェクトおよびコンテンツプロダクションテクノロジープロジェクトの卒業研究生に感謝する。
執筆:近藤邦雄,三上浩司
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