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おもしろメディア学 第36話 臨場感を感じるとき  

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この研究を始めようと思ったきっかけは、さるゲームマシンのスキーを楽しむソフトでした。それまでに経験した雪原滑走のゲームは、滑るという意味ではもちろん十分楽しめるものでした。雪を被った森の木々や雪原のコンピュータグラフィックスは本物らしく、十分雪山らしく感じられました。しかし、その「さるスキーソフト」を動かしたとき、「ああ、スキー場にきている!」と感じたのです。さて、何が今までと違っていたのでしょう?スキーを経験された方はご存じだと思いますが、ゲレンデのリフトの鉄塔にはスピーカがついていて、音楽が流れたり、呼び出しの声が流れたりします。リフトが鉄塔を通過するときにはカタカタと音がします。それが山々にこだまし、銀世界の高原に広がっていくのです。この「さるスキーソフト」ではそのようないろいろな音が流れるのです。これを聞いて、「そうか、現実の世界にある音がすべてその通り再現されることが大切なんだ。」と感じました。

そんなとき、卒業研究で「ライブコンサートで感じられる臨場感が、そのコンサートを録音して発売されたCDでは感じられない。どうしてなのでしょう?それを研究したいのです。」という学生が私の研究室に来ました。
4チャンネルで音を再生できるように、コンピュータと多チャンネル再生装置を接続、実験にとりかかりました。
臨場感を感じさせる音として、「拍手」、「歓声」、「話し声」をとりあげ、それと音楽を4チャンネルのスピーカから、いろいろ組み合わせたり混合したりして流し、どのようにすると臨場感を感じるかを実験しました。
 
 

Protools

              図 ProToolsを使って臨場感実験
 
その結果、わかったことは、周囲の雑多な音が騒々しいくらいのほうが臨場感を感じるということなのです。もちろん、2チャンネルより4チャンネルで音を流したほうが臨場感があります。さらに、興味深いのは、臨場感を感じるときは、環境音が肝心の音楽の妨げになるというのです。そういえば、クラシックのコンサートで、咳払いなどの音が結構気になるものです。この結果は学会でも発表しました。ライブコンサートのCDは音楽重視ですから、環境音が抑制されてしまうのは仕方ないでしょうね。さて、みなさんは、臨場感をとりますか?音楽をとりますか?
 
 
薪 真悠子、相川 清明, "多チャンネル再生における背景音音量と臨場感の関係", 日本音響学会聴覚研究会資料, Vol.40, No.4, pp.371-376, (2010-05)
 
 

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