おもしろメディア学 第50話 インターネットは誰のもの?
2014年10月31日 (金) 投稿者: メディア技術コース
総務省の平成26年度の情報通信白書によると、図1に示すように、日本国内の平成25年末のインターネット利用者数は約1億人、人口普及率は82.8%です。また、インターネットへのアクセスに利用されているのは、自宅のパソコンの58.4%に次いでスマートフォンが42.4%と2番手を占めています。(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc253120.html)
図1. 日本におけるインターネット利用者数と人口普及率の推移
出典:総務省通信利用動向調査
(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html)
出典:総務省通信利用動向調査
(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html)
また、ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)の資料によると、世界のインターネットユーザは個人ベースでは2014年で29億2300万人です。(http://www.itu.int/en/ITU-D/Statistics/Documents/statistics/2014/ITU_Key_2005-2014_ICT_data.xls)
非常に多くの人がインターネットを利用していることがわかります。
では、この巨大なインターネットは誰が管理をしているのでしょうか?
では、この巨大なインターネットは誰が管理をしているのでしょうか?
インターネットはネットワーク同士をつなぐことで構成されています。個々のネットワークは、例えば、ある大学のキャンパスネットワークだったり、大きな会社のネットワークだったり、あるいは個人や家庭が契約しているインターネットサービスプロバイダ(ISP、接続業者のことです)のネットワークなどです。これらのネットワークは、それぞれ、学内、社内などの担当者が管理しています。そしてこれらを接続する中継地点にも管理者はいます。ボランティアで管理が行われているところもあります。しかし、インターネット全体を見てみると、全体を管理している個人や会社、あるいは国はありません。
それでもうまくインターネットが機能しているのはなぜでしょうか?
それは一定の共通ルールを守りながら、各ネットワークが管理されることで、インターネット全体から見れば分散管理がなされているからです。技術的に考えるとインターネットのような複雑で巨大で広範囲にわたるシステムを集中管理するのは合理的ではありません。個々のネットワークがそれぞれの守備範囲をしっかり管理し、他のネットワークと必要な管理情報を交換して運用していく方がずっと合理的です。そして障害にも強いのです。この管理は人間の手だけで行われているのではなく、優秀なソフトウェアや機器がいくつも開発され利用されています。
例えば、図2はインターネット上で「名前解決」という役割を果たすDNS(Domain Name System)が分散して働いている様子です。皆さんは東京工科大学のホームページを見たい時、検索などを使って、それが http://www.teu.ac.jp/ でアクセスできることを知って、パソコンやスマホなどを操作していることでしょう。この時、www.teu.ac.jp という「名前」は人間が理解しやすいように、決まったルールでつけたものです。しかし、このホームページのサービスをしているコンピュータ(サーバ)がどこにあるのか(どれなのか)は実はIPアドレスという「番号」で管理されていて、パソコンやスマホにとってはこの番号が必要なのです。そこで、「名前」と「番号」を対応付けるデータベースが必要になりますが、それを実現しているのがDNSという仕組みです。考えてみると、インターネット上には非常にたくさんのコンピュータがありますから、その名前と番号を一か所で管理して、みんながそれを参照するというのは無理があります。そこで、日本のことは日本のDNSサーバに問い合わせよう、... 、東京工科大学のことは東京工科大のDNSサーバに問い合わせようというように、問い合わせ先が分散されるようになっているのです。東京工科大学のサーバは学内のコンピュータを対象に名前と番号の対応付けを行っており、東京工科大学で管理しています。
図2. DNSの動作
特定の権威者の下での集中管理ではないのでインターネットには最高責任者もいませんが、ルールの改定や新しいルールの策定は技術者を中心とした非営利の団体においてオープンに議論され、民間主導で進められています。そこで決まったルールや仕様はすべて公開され、それに沿ってメーカーは機器やソフトウェアを開発して商売をしています。こうした考え方はインターネットの草創期をけん引した技術者たちの思想が引き継がれています。そしてこれが現在のインターネットの繁栄をもたらしているのです。
(メディア学部 寺澤卓也)
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