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おもしろメディア学 第51回 データから社会の動きを探る技術

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データから社会経済の動きを探る技術

 

前回の筆者のブログ『面白メディア学』では、「お宝を探すには?」というタイトルで、巷に溢れる様々な情報から、いろいろな知見を得ようという話をした。今回は、こうした情報を加工・編集し、様々な知見を得るための分析に利用できる技術を紹介しよう。

われわれを取り巻く社会では日々いろいろな活動が行われている。ネットワーク・情報技術の進展に伴い、こうした活動が発生した時点でリアルタイムに捕捉されるようになってきている。このようなデータを収集・編集し、分析の対象とする事が可能になれば、役所の政策立案や企業の経営戦略だけでなく、われわれ一人一人の日々の行動に至るまで、その活動の質は大きく変わるであろう。

こうした技術開発の取り組みの一つに、2007年度、内閣府経済社会総合研究所と東京工業大学エージェントベース社会システム科学研究センターとの共同で設立された「社会会計システム・オープン・コンソーシアム」がある。当コンソーシアムでは、一国全体の経済活動を推計する会計システムである、SNA(国民経済計算)推計システムの再構築のためのプロトタイピング研究を通じて、経済活動の足跡を記録、編集、加工する諸技術が開発された。その一つが、今回紹介するAADL(代数的会計記述言語:Algebraic Accounting Description Language)である。

代数的会計記述言語というと、ここで読む気が失せるかもしれない。確かに、東工大の出口弘教授の構築した代数の世界の話自体は難しい。しかし、この考え方をプログラミング言語に実装したAADLは、非常に分かりやすく、習得も容易で、ダウンロードしたその日からプログラミングできる。AADLの開発コンセプトの一つは、実務に携わる現場の人が、情報技術の専門家の手を借りなくても、自分で、独力で、データを編集・加工する大規模なシステムの構築までを可能にしようとするものだからである。

日々現場で実務に携わる(普通の)ビジネスパースンが特別なトレーニングを要することなく、これを手にし、武器として利用できる、このAADLの特徴とは何だろうか。それは、毎日の仕事で扱う、数字、データを、その仕事で持つ意味のままにプログラミングできるということである。例えば、Aさんの給与計算は、(他の誰でもない)Aさんという名前、属性を常に見ながら操作できる、データの可読性を担保したオブジェクト指向の言語だからである。AADLは、従来のプログラミング言語のように、無名の数字を処理するものとは一線を画するのである。

こうした目に見え、かつ、オブジェクト指向の実装が可能になった鍵は、AADLの二つの”A”である代数と会計にある。出口教授による交換代数の体系は、会計の仕組みを代数系に構築したものである。改めて言うまでもなく、およそすべての経済取引は、洋の東西を問わず、この会計に従って行われている。したがって、会計は、世界中のビジネスパースンの共通言語であり、この考え方を実装したAADLは、社会に巣立ったビジネスパースンのITリテラシーの一角を担うポテンシャルを秘めているといえよう。興味のある読者は、ぜひ、下記サイトからAADLを入手し、活用してほしい。

http://www.soars.jp/

(メディア学部 榊俊吾)

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