おもしろメディア学 第52話 映画やアニメのCG制作の「水平統合」と「垂直統合」
2014年11月 7日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
メディア学部の三上です
今日は,映画やアニメのCG制作における制作体制で,業界でよく呼ばれる「水平統合」,「垂直統合」について紹介します.言葉だけだと全く意味が分かりませんよね?これは集団でCG映像制作をする際の分担の仕方にまつわる話です.
CG映像では主に次のようなプロセスで制作されます.
(1)画面に登場するキャラクタや舞台のモデルを作成
(2)モデルを舞台に配置し動きの指示を設定する
(3)カメラを配置や動きの設定をする
(4)カメラで撮影するように動画像(または連続した静止画)を生成する
こうして一台のカメラから連続して出力された動画像が「カット」と呼ばれ,映像コンテンツの最小単位として扱われます.作品によってカットの数は異なりますが,おおむね30分物のアニメなら300カット程度になります.
この上記のような4つの作業を300カット分実施することが必要ですし,そのためには多くの人で作業を分担する必要があります.
ハリウッド型制作スタイル「水平統合」
水平統合は主に北米の大規模制作会社で採用される制作分業方式です.アーティストは特化した作業を行うのが特徴で,(1)のモデルを作る仕事を担当する人は,他の仕事をせず,とにかくモデルを作成するという分業の仕方です.モデルでも,人間キャラクタ専門の人や,建物専門,メカ専門,自然の景観専門などさらに分かれています.
キャラクタの動きを専門に着けたり,表情のアニメーションだけに特化したりと専門的な工程のみを担当します.
この分業方法は管理や素材の受け渡しが大変なので,大規模なスタジオにスタッフを終結させてシステムによるサポートが必要になります.そのため,ハリウッドのような規模の多い制作に適しています.
部分的なパートの専門家なので,人材の確保が比較的容易であり,プロジェクトごとにスタッフを雇用するハリウッドの仕組みにも適しています.
日本型制作スタイル「垂直統合」
これとは逆に,一つのカットにかかわる(1)から(4)の一連の作業を一人で担当するスタイルが「垂直統合」です.一連の作業を個人で完結させることができるため,離れたスタジオで作業したり,個人のノウハウで効率化を図ることなどができます.小規模なスタジオでも採用しやすい方法であり,日本に限らず欧米でも小規模なスタジオや尺の短いCM制作などでは多く用いられる方法です.
この分業方式では,アーティスト間の力量の差が,カットごとに品質のばらつきにつながることなどもあるので,より注意が必要です.
実際の制作では,部分的に「水平統合」,「垂直統合」を組み合わせた制作スタイルを用いるのが増えています.また,日本国内でもハリウッドスタイルの「水平統合」に取り組む企業も増えてきています.
メディア学部でも,双方の制作スタイルに対応できるように産業界の動向を見ながら,演習の中で様々な体験を提供できるようにカリキュラムを常に検討しています.
三上浩司
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