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おもしろメディア学 第53話 「だます」ことはいいことだ!?

2014年11月12日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

「だます」とは一般的には,よくない行動の一つとして使われる言葉です。しかし、デザインやコンピュータグラフィクスをはじめとする画像や映像を扱う技術のひとつとして、とても重要なキーワードです。

[おもしろメディア学」の記事でいくつか述べてきた視覚と画像に関係する多くの技術は、人に「伝えたい情報」をうまく描くために、真実と異なることを描いたりしています。このように情報を伝える場合、「真実を伝えることができる」ことが大切です。

たとえば、真実を伝えるために、闇夜に飛んでいるカラスを撮影した例が図1のようになります。真っ黒で何もわかりません。このような場合、「カラス」がみえるように描く、加工することによって、はじめて、情報を伝えることができます。何を伝えたいかによって描き方も変わるのです。

Photo

図1 闇夜のカラス

図2は機械部品を分かりやすく描いたイラストレーションです。形をより良く表現しようとした例です。実際の形状を見ても、円柱の面には、線などはありませんが、この例では演習の丸みを表すために、何本かの直線を描いて、陰によって丸みを表現しています。

Linedrawing

図2 CGによるイラストレーション(参考文献2)

以前のこのブログ記事で、陰影によってふくらみが異なって見えることがあることを書きましたが、人にとって陰影は形を理解するうえでとても重要な情報です。


Dsc_5181

図3 建物

図3はヘルシンキの駅前の建物の写真です。建物の壁面がきれいな窓でできているように見えます。ただし、工事中であり、実は壁が絵で包まれています。絵によって、実際の壁のように表現しているのです。近くに行くと工事用のシートであることが分かります。町の景観をより良くするために、シートという平面に実際の壁にみえるように絵を描いたのです。白いシートや鉄板を壁にして工事をするという方法をとらないことから、このあたりを歩いている人たちに心地よい思いを与えています。このような例を見ると、人を「だます」ことがいいことが分かっていただけるのではないかと思います。

このような人に情報を伝える分かりやすい画像を生成する研究分野は、非写実的表現(Non Photorealistic Rendering:参考文献1)といって、1990年代になって、コンピュータグラフィクス分野では多くの研究が行われています。またこのような情報を伝えるということを課題にしている研究分野には「情報可視化」があります。このようなCGの研究分野を、メディア学部で中心的な研究課題の一つとして取り組んでいます。

キーワード:だまし絵、非写実的表現、Non Photorealistic Rendering、イラストレーション

参考文献
(1) 近藤邦雄, 田嶋太郎,木村文彦, インタラクティブレンダリングシステムによる3次元形状の表現, 情報処理学会,情報処理,Vol.26,No.11, 1985,
(2) A.. KANBARA, K.. KONDO, H.. SATO, S. SHIMADA, Interactive Rendering System for Line Drawing by Dot and Line Shading in  M. Gigante and T L Kunii (eds.),  INSIGHT THROUGH COMPUTER GRAPHICS, World  Scientific, pp. 172-179, 1996.

メディア学部 近藤邦雄

 

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