おもしろメディア学 第56話 おもしろメディア学 やってはいけない話・第5話
2014年12月 5日 (金) 投稿者: コンテンツ創作コース
今日の「やってはいけない」は、寸法の話です。
寸法については慎重にやらないと、痛い目にあいますよ
TVの美術デザインの仕事で、どんな寸法を使われてるかご存知ですか?なんとそれは「尺貫法」なのです。いまでは日常生活では、使われていない単位ですね。でもこの「尺寸」の寸法、実際に使ってみるととても便利なのです。もともと人間の体の大きさを寸法に置き換えたものなので、とてもイメージしやすいのです。例えば、1尺はだいたい大人の足くらい。6尺は畳一枚の長さです。
そしてまた、意外なことに、この「尺寸」による寸法は、イギリスで使われていた寸法にちかいのです。日本の「尺」と、イギリスで使われている「フィート」がどれだけ近いかというと、どちらも見事に「ほぼ30cm」なのです。大雑把に寸法を考えるときには、そのまま使えそうです。
はじめての国際共同制作ドラマで仕事をした時、わたしは実際にオーストラリアの大工さんたちとの打ち合わせで、この「尺」と「フィート」の置き換えをやってみました。こんな風に。
「この廊下の幅は、6フィートでね 」
「オーケー、カズ、わかった」
「このテーブルの幅は4フィートね」
「了解了解、カズ、任せなさい」
通じるではありませんか。
早速私は、単位にフィートを使って図面を書き始めました。図面に描かれたスタジオセットが次々と出来上がっていく。大工さんたちもせっせと働いてくれていて、問題なさそうだ。
ところがある日のこと、スタジオのセット制作場で、大工さんたちが難しい顔をして、ぶつぶつ揉めている。どうしたのかな?と思って近づいてみても、なんか、僕とは目を合わせないようにしている感じ。あれ、何かまずいことがあったのかな~。心配だ。
その翌日。
美術スタッフ室の僕のデスクの上に、オーストラリア製の「巻き尺」が置いてありました。そしてその下には、大きくペンで書かれたメモがあって「 CM ONLY ! (センチメートルだけ!)」と書かれてました。一体どういうこと?
その巻き尺を置いてくれたのは大工の棟梁、ロブでした。あとで彼に聞いてその理由がわかった。
日本では、1尺の半分は「5寸」、四分の一は「2寸5分」となります。よく「しゃくにすんごぶ」みたいな言い方をします。1尺と、2寸と、5分なのですが、ようするに、1.25尺なのです。10進法なのでこれで合うのです。
ところが、ポンド・ヤード法には、いたるところに、12進法が登場します。1フィートは、10インチではなくて、12インチなのです。
僕はこれを無視して、テーブル図面に、高さ「2.25ft(フィート)」と書き込んでいた。彼らにとっては、12進法のインチを、0.25みたいに10進法で書かれては、全くわけがわからないことになる。まったく変換不能なのである。「0.25=四分の一」なんだから、3インチのことでしょう、などと言っても通じません。
こういうわけで、プロダクション開始後、たった3週間ほどで、僕の「尺=フィート」方式はクローズとなりました。
私が日本から持ち込んだ、「尺貫法」の巻き尺は使えなくなったのです。
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[ 今日の教訓 ]
うっかり、慣れない方法に手を出すのは、やめましょう。特にスタッフ間の大事なコミュニケーションには、みんなが慣れた方法を使わなくてはなりません。
特に寸法には気をつけましょう。
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☆この記事は佐々木和郎が担当しました
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