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おもしろメディア学 第61話 1+1=?

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1          リンゴが1個、みかんが1個あります。合わせて何個ありますか?

小学校に入学してすぐの算数の授業でお目にかかった問題である。良い子のみんなは「2個!」と元気に答え、先生も「はい、よくできました。」と微笑むにちがいない。それでは、次の問いはどうであろうか。

2          テレビが1台、自動車が1台あります。合わせて何台ありますか?

前問同様、合計2台でよいであろうか?違和感を覚える読者もおられるであろう。なぜ、こちらの足し算には違和感を覚えるのか。そこにはちゃんとした理屈があり、それを明快に区別し、計算してくれるものがある。前回の筆者のブログ、『面白メディア学』の「データから社会経済の動きを探る技術」で紹介した、交換代数であり、それを実装したプログラミング言語である、AADL(代数的会計記述言語:Algebraic Accounting Description Language)である。

AADLのデータ構造は、数値だけでなく、実務上意味のある属性を伴ったものである。数量と<,>でくくられた属性で構成される。これを基底という。基底の中身は、順に「名前」と「単位」である。問2AADLで表すと次のように書く。

1<テレビ, > + 1<自動車, >

違和感を覚える原因は、「テレビ」と「自動車」で、種類の違う品目同士で足し算しようとしているからである。AADLでは、「名前」と「単位」という属性を持ったデータ構造になっているために、問2では足し算できないことが直感的に納得できるであろう。

一方、問1AADLで表すと、

1<リンゴ, > + 1<みかん, >

となって、この場合も品目が「リンゴ」と「みかん」で足し算できない。では、どうして、良い子の1年生は、2個と計算するのであろうか。それは、無意識のうちに、「リンゴ」と「みかん」を「果物」に置き換えているのである。

1<リンゴ, > + 1<みかん, >

1<果物, > + 1<果物, >2<果物, >

すなわち、「果物」が合計2個と計算しているのである。したがって、この例の場合も「リンゴ」と「みかん」の間では、足し算できない。

1の足し算には違和感が少なく、問2に違和感を覚える理由は、「リンゴ」と「みかん」は同じ農産物で、「果物」という近い関係にあるのに対して、「テレビ」と「自動車」は同じ工業製品ではあるが、方や家庭用電気機械で、方や輸送機械に属する製品で、共通の分類品目に至っていない、遠い関係にあるからである。

AADLは、属性の同じ物同士のデータ間で厳密に計算を行う一方、異なる属性同士の間でも共通の上位の分類に変換することで整合的に計算を実行する。問1と問2の間にある、日常の感覚の違いは、品目分類の階層上の近さ、遠さの関係に帰因し、AADLは、こうした感覚の迷いも解消してくれるのである。

(メディア学部 榊俊吾)

 

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