学部4年生の卒業研究と学会発表の紹介
2015年3月30日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは!
1ヶ月ほど前のブログに、卒業研究「ミュージック・アナリシス&クリエイション」プロジェクトに所属している学生が国際会議でアート作品を発表したことを書きましたが、今日は、本プロジェクトでのゲーム音楽に関する研究と、その学会発表についてご紹介しましょう。
多くのゲームは、そのシーンやステージごとに決められた音楽がいつも流れています。例えばこれが、プレイヤーの装備や強さ、チャンスかピンチか…などで、毎回、少しずつ違う音楽が流れてきたら、ゲームはもっと楽しくなるのではないか…。本プロジェクトに所属し、4月から本学大学院に進学する黒田元気君は、このような想いを胸に研究に取り組んできました。
「え? そんな風に音楽が変わる感じのゲームもあるよね?」と思ったあなたは、なかなか耳が鋭いです。特にレトロなゲームの方が、このようなテクニックをよく使っていました。実はこれ、「プログラムで音を作っているか」「ファイルに録音したものを再生しているか」という技術の違いによって、かなり変わってくるのです。
最近のゲームの多くは、「録音されたものを再生する」技術を使っています。もちろん、技術の飛躍的向上のおかげで、録音されたものでも、あとから多少の変化をつけることはできますが、音符単位で音の高さやリズムを変えるのはそう簡単ではありません。そこで黒田君は、最先端のプログラミング技術によって音符単位で変化を加えられるような仕組みを考え、ゲームの中に組み込むことを想定して研究を進めてきました。そして今回、その研究成果を「タッチインタラクションを想定したリアルタイム・モーダルチェンジ・インタラクションシステムの構築」というタイトルで学会発表を行いました。
この発表は、さる3月2日から3日にかけて山梨県・甲府で合宿形式で開催された、情報処理学会の分科会である音楽情報処理研究会とエンタテインメントコンピューティング研究会の共催での合同研究会で行われました。ちなみに情報処理学会の2つの研究会には、初音ミクの開発にあたった研究者や、ゲーム開発に携わるような企業の方も参加します。こうした、音楽とエンタテインメント双方の研究者が集まる中、黒田君はiPhone上でリアルタイムにフレーズを変化させるデモを行い、特に若手研究者の注目を集めました。本人は「デモがうまくいかなかった…」と悔しがっていましたが、そこは合宿形式の良さ。発表時は知らない人も多く、緊張した中での発表でしたが、夜の懇親会では多くの参加者と打ち解け、他大学の大学院生や先生方とも知り合いになり、翌日には「研究やデモのヒントをたくさんもらえて、参加してよかったです」と笑顔を取り戻しました。
実はこの仕組みを作るには、プログラムに詳しくなるだけではなく、音符をどのように並べたら音楽的に自然な変化になるかを判断するために、音楽理論の知識が不可欠です。さらにゲームに盛り込むには、ゲームデザインの中で活かすための豊富なアイデアが求められます。音大で学ぶような「音楽を音符単位で緻密にとらえ、分析し創作する技能」と「最先端のプログラミング技術」、そして「専門的なゲーム制作技法」という3つを全て学べるメディア学部ならではの研究テーマです。黒田君はこのシステムを組むにあたって、「ボレロ」で有名なモーリス・ラヴェルの曲や、ジャズの巨匠マイルス・デイヴィスの曲を多数分析して、開発に臨みました。こういった音楽面での努力を合宿の夜に話せたことで、先輩研究者からも一定の評価を頂けたようです。
「でも、そんなにたくさんのことを、一人で研究するなんて大変そう…」
特に高校生の皆さんはそう感じてしまうかもしれません。でも大丈夫。大学は、皆さんが「本気で真剣に何かに取り組みたい!」とアピールすれば、多くの先生や卒業した先輩たちも協力してくれます。今回の研究は、音楽面では卒業研究で指導しましたが、ゲームサウンドに関しては専門の先生が別にサポートしたり、プログラミングでは社会で活躍するメディア学部の卒業生がサポートしたりして進められました。自ら真剣に取り組めば、多くの分野の人が協力してくれるのが大学のよいところです。
さらに、いろいろな分野や領域の物事を融合して新しいことにチャレンジできるのもメディア学部ならではの特長です。黒田君の研究はメディア学部らしいテーマですが、本プロジェクトではこれまで誰も取り組んでいないものでした。先輩たちのテーマをなぞるのではなく、新しい分野を切り拓いていこうとする黒田君のような意欲ある学生が活躍できるのもメディア学部の特色と言えるでしょう。
今回の学会発表について黒田君からのコメントです。
このシステムを使えば、タッチパネルの操作によって、再生されている音楽の音階を変えたり、フレーズの密度を変えたり(8分音符主体のメロディを16分音符中心にするなど)できます。今後の研究で「操作の検出」と「音楽の生成」の両方について改良を重ね、アプリなどの制作における新しいサウンドシステムとして、より便利に使えるようにしていきます。
学会発表に参加すると、ほかの研究者の方とのお話から、研究のヒントや関連分野の知識が得られるというのはもちろんですが、「次はこの成果を出して、この学会での発表を目指して論文を書こう」というような目標ができ、研究を進めるためのプランも立てやすくなります。学会発表のチャンスを教えてくださった先生方には感謝しています。
最近は、「このシステムでこんな音楽がつくれるよ」ということが示せるような、システムを使ったデモ作品の制作に取り組んでおり、動画などで今後ご紹介できればと思っています。来年度のオープンキャンパスでお披露目もしたいですね。 メディア技術が発達するにつれて、メディアコンテンツのひとつである音楽そのものについても新しい研究が必要になってきます。「メディアテクノロジを使って音楽創作でなにか新しいチャンレジをしてみたい」という意欲ある皆さんをメディア学部は歓迎します!
(執筆・伊藤謙一郎)
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