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4年生がゲームサウンドに関する研究を学会で発表!

2015年8月31日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

卒業研究「ミュージック・アナリシス&クリエイション」プロジェクトでは音楽・音響に関するさまざまな研究を行っていますが、ここ数年、特に力を入れているのはゲームサウンドの研究です。

コンピュータゲーム(以下「ゲーム」と略します)には、テレビゲーム機や携帯型ゲーム機でプレイするもののほか、スマートフォンやタブレット上で動作するモバイルゲームなどがあり、さらにコンテンツという視点で見ると、ロールプレイングゲーム(RPG)やシューティングゲーム(STG)、アクションゲーム(ACT)、音楽ゲーム(音ゲー)など多岐にわたります。このようにゲームの形態や種類は多種多様ですが、どのゲームも映像(視覚情報)のみならず、音(聴覚情報)が重要なはたらきをしています。

もちろん、音を鳴らさないようにしてもゲームはプレイできるものの、無音だとやはり臨場感や迫力に欠けますね。特にプレイヤーが置かれている状況を音で知らせるタイプのゲームでは敵の攻撃や危険を回避する情報が得られなくなるので、操作の面で困難になることもあるでしょう。また、ゲームのオープニングや各シーンで流れる音楽は、そのゲームのストーリー性をより強く印象づけるはたらきがあります。

このように、ゲームにおける音の役割は非常に大きいわけですが、映画やアニメと異なり、ゲームはプレイヤーの操作を介したインタラクティブ性が「音の現れ方」に少なからず影響する点を考慮する必要があります。今後のテクノロジーの発達とともに、映像や操作性だけでなく、サウンド面でも新たな技術や表現手法が生み出されることでしょう。ゲームの将来を展望しつつ、ゲームサウンドに興味をもつ学生が本プロジェクトでは年々増えており、ますます活気を帯びています。

さて、さる8月1日(土)に日本大学生産工学部津田沼キャンパスで開催された「日本デジタルゲーム学会」(DiGRA JAPAN)夏季研究発表大会に、本プロジェクトに所属する4年生4名が参加し、ゲームサウンドに関する研究発表を行いました(口頭発表3名・インタラクティブ発表1名)。

実は、本プロジェクトでゲームサウンド研究の学外発表は今回が初めてでした。そのため、どの学生も極度の緊張と不安に駆られながら当日を迎えたのですが、そこは「若さ」と「熱意」で乗り越え、4名とも自身の研究の視点と意義をアピールすることができました。これらの研究の概要は、公開されている予稿集のp.26〜37、p.113〜116に掲載されていますのでお読みいただければと思います。また、当日の大会の様子がYouTubeにアップされており、4名の発表は「2015年夏季研究発表大会3 ゲームサウンド」でご覧いただけます。

4名の発表内容について簡単に紹介しましょう。


【1】「『SaGa Frotier II』におけるピアノ音楽の構造分析」(阿部桂太)

『SaGa Frotier II』に含まれる楽曲の特徴としてピアノの多用が挙げられますが、その音色が楽曲中でどのような役割をもって出現するか調査しています。また、フレーズ内の限られたモティーフ(動機)に着目し、多彩なストーリー展開において、いかに統一感を創出するはたらきをもつのかを楽曲分析から明らかにします。

Abe


【2】「『モンスターハンター』シリーズの音楽にみられる多様な危険度表現と音楽的差異」(原田知輝)

多数の敵キャラクターが登場するゲームは、ユーザにそれぞれの敵の出現による危険度を認識させるために、音楽にさまざまな工夫がみられます。中でも『モンスターハンター』シリーズは、敵キャラクターごとに専用の音楽が数多く付与されていることで知られていますが、これら「専用」と、シーンや状況に応じた「汎用」という2つの柱でゲーム内の音楽をとらえ、個々の楽曲単体のみならず、それらをいかに組み合わせて、緊張感と危険度の差異を表現しているのかを明らかにします。

Harada


【3】「ユーザ操作の観点からみたインタラクティブサスペンスの音楽・音響演出」(高倉賢太郎)

本研究では、ゲームにおけるインタラクティブな演出によって引き起こされるサスペンスの状態を「インタラクティブサスペンス」と定義し、映画でのサウンドと対比させながら、ゲームのサスペンスを構成するインタラクティブな音響表現の事例と傾向を調査することを目的としています。ゲームでは、ユーザの操作が介在することによって引き起こされる怖さが映画との差異と考えられます。調査により、映画では継続的な音やシーンがサスペンスの様相が高まるのに対し、ゲームでは継続よりも、「きっかけ操作」がもたらす時間軸に対する点的な演出シーンが頻出する傾向を確認しました。

Takakura


【4】「恋愛ゲーム原作の帯アニメにおけるアンダースコアの配置構造 -CLANNADを題材に-」(山口遼真)

本研究の目的は、近年増え続けている恋愛ゲーム原作の帯アニメに見られる音楽付与の構造や傾向を明らかにすることです。数多くの作品の中から、ここではCLANNADを例に、ストーリー構造およびシーン数について、ゲームとアニメ版との比較調査を行っています。ノベルゲーム、特に恋愛という繊細な感情表現を含み、ストーリーの展開が単一的でない作品がアニメ化された際、原作通りのシーンに音楽が付随している場合や、音楽が流れないシーン、アニメオリジナルの音楽が流れているシーンなどが見られます。コンテンツの形態が変わることで映像と音楽との関係性がいかに変容するか、また不変な点はどのような部分に認められるかを調査します。

Harada_2



今回の発表で来場者の方々から、数多くのさまざまな意見やアドヴァイスをいただきました。これらを踏まえ、さらに研究内容の充実を目指していきます。

All


(執筆:伊藤 謙一郎)

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