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大学院に行く価値は「自由」にあり

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今回は、大学院進学について書こうと思います。

東京工科大に限らず、理系寄りの大学では大抵、学生に大学院進学を勧めます。その理由を商売として考えると身もふたもないのですが、我々教員は心の底から大学院に進学した方が良い人生が送れると信じています。

しかし、学生にとってみると就職せずに2年間をさらに研究に費やすという行為が、一体どんなメリットを人生にもたらしてくれるのかは今ひとつ想像がつかない人も多いと思います。数ヶ月前に twitter 上で数人の学生と大学院について雑談をしたのですが、「大学は大学院で学費が安くなるとか就職にいいとか言うけど、それでは結局大学院の何がいいのかよくわからない」と言われてなるほどと思いました。それをきっかけに、大学院に行くメリットについて、自分なりに考えてみました。

私が思う大学院進学のメリットは、それが人生に「自由」をもたらすものであるということです。ここで言う「自由」とは、好き勝手わがままに行動するという意味ではありません。「何かをしたい」と思ったときに、それを実際に実行できる能力を持つということです。例えば「ゲームを作りたい」とか「曲を作りたい」と思ったとして、それを実行できるにはそれを実現するためのスキルが必要となりますね。つまり、「自由」になるには、それ相応の技術を備えていなければならないというわけです。

技術を身につければ良いということならば、別に大学院だけがその唯一の手段ではありません。むしろ、多くの学生は「就職した方がより高い実力が身につく」と考えていると思います。技術面だけ見れば、これは決して間違いではありません。しかし、本当の意味で「自由」になるには、単に「技術」だけでは足りないと私は考えます。あと二つの要素、「教養」と「勇気」が必要です。

「教養」とは、多角的な見方ができることを指します。例えばある川の写真を見て「わかることを述べなさい」と問われたときに、物理の観点なら水の流速について述べられますし、水の色から水質について議論もできますし、あるいは周囲の様子から川が社会的にどのように保護されているかを議論することもできます。どんな学問的切り口を持つかで回答が変わってくるわけですね。自身が「自由」な行動をしたい場合、それは周囲にも影響を与えます。どのような影響があるのかを多角的にわからない人は、思わぬ軋轢(あつれき)を生じてしまうかもしれません。そうなると、当然行動を抑制しようという外力が働いてきます。自由な行動には、常に自分の行うことの影響を察知することが重要となるわけです。

大学院では、自身の研究に対して様々な視点による意味を考察することが求められます。教員からの指導は、時には自分では思いもよらない視点からの意見を投げかけられることもあります。それに対し、自分自身でしっかりと考えていかなければなりません。このようにして、学生は教養を身につけることの重要性と難しさを知っていきます。

3番目の「勇気」というのは、道なき道を進む勇気のことです。本質的に、自由でいるということは、周囲とは異なった行動をしていくことにもなります。しかし、誰もやっていないことを自分がするというのは躊躇してしまうのが普通です。案外、好きなことをするというのはそれなりの勇気が必要なものです。この「道なき道を進む」というのは、研究ではまさに本質そのものになります。誰かが既にやっていて確実に成果がでることがわかっていることを改めて行っても、それは研究ではなく単なる「確認」です。研究では、新規性が大変重要になります。それは単に実現することが理論的・技術的に難しいというだけでなく、実際に成果がでるかどうかわからない、また価値を他者に認めてもらえるかどうかわからない状態で進めていく必要があり、この精神状態を克服することがなかなか難しいのです。研究者は、みな「勇者」と言えるでしょう。

このように、大学院はまさに自分が人生を「自由」に振る舞うための訓練と言えます。そういった生き方を望む人にとって、大学院での研究はとても価値のある体験になると思います。一方、自分の人生にそのような挑戦的な自由を求めないという人も多くいます。その場合は、あまり大学院に行くメリットはないかもしれません。確かに就職において有利になるという点はありますが、それだけを理由に2年間を研究に費やすのはちょっと大変かもしれません。

「技術」「教養」「勇気」の3つを自身の力とし、高いレベルの「自由」を手に入れたいという人は、是非大学院を検討してみて下さい。


(メディア学部 渡辺大地)

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