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大きさはどこまでわかる?

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『天の光は全て星』という題名の小説(フレドリック・ブラウン著 ハヤカワSF文庫)がありましたが、夜空に目を向けると天空にはいろいろな光点が存在します。良くあるSF映画の緒作でも宇宙空間には星々が発する様々な光点が画面狭しと描かれていますが、ふと、考えたことはあるでしょうか。 空に散らばる数多の星はあっちが大きい、こっちが大きいという感覚があんまりないのは、なぜなのだろうか…」、と。



 

わたしたちが感じる〝大きさ〟は、その対象の実際の大きさではなく、観察者の位置からどのくらいの大きさに見えるか、という尺度です。実際に大きなものでも、その対象が観察者から遠くにあれば、小さく見えることになります。その場合の〝見た目の大きさ〟を表すときは、対象が視野の中でどのくらいの〝角度〟を占めているかという量=〝視角〟で表します。

例えば同じ対象でも、それが遠くに位置するほど、その像が視野の中に占める割合は小さくなるので、その角度は〝小さく〟なるわけです。

 

どこまで小さいものが見分けられるかを測っているのが、いわゆる『視力検査』です。ランドルト環というCの字みたいな円形の記号の一方向が欠けていて、どちらの方向が欠けているかを指し示す、というのは、みなさんも健康診断などで経験していると思います。この視力検査は前述の〝角度=視角〟の幅をどこまで認識できるかという検査です。

  視力1.0は視角でいうと1/60度=1分の間隔が見分けられる能力を示します。視力2.0であればその半分の角度=1/2分=30秒の角度です。(角度の単位は1度が60分、1分が60秒という時間単位の様な構成になっています。)

下の図は視力1.0の人が対象からどのくらいの距離を離れると、そのモノの〝大きさや間隔〟が〝認識できなくなるか?〟という尺度を簡易的に示したものです。634mの高さのスカイツリーも視力1.0の人が2113km離れて見ると(もろもろの困難を排して肉眼で見えるのであれば)点にしか見えない、ということです。


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図1.どこまで離れると大きさが分からなくなるか?(視力1.0のとき、角度1分の大きさが認識できるとして計算。例えば、1.8mの人は6km離れると点にしか見えなくなる。)


大きさのスケールを長さに直すと、例えば視力1.0は、5m先の1.5mmの間隔を見分ける能力になります。この縮尺を応用して、眼球のピント合わせを考慮をせずに単純に大きさの比率だけで考えてみると、この視力1.0は30㎝先のものを0.09㎜の間隔まで見分けることができる能力になります。印刷物のドットの間隔はだいたい300dpi(=25.4mm/300=0.084mm)の間隔より小さくなっており、ひとの能力にあわせて設計されているのがわかります。

 

さて、夜空の星々の場合、視角(視直径)が1分も無い物が多く(というか、ほとんど秒単位ですが)、ほとんどがこの視力以下の大きさの光点です。これははたして見えるのでしょうか、見えないのでしょうか。

 

まあ、言わなくても〝星が見える〟ことから推察できると思いますが、答えは〝大きさはわからないが存在はわかる〟です。つまり対象が小さすぎるので知覚できる最小の点としか認識できませんが、光の刺激=光のエネルギーとして網膜上に信号が発生するので〝光点がそこにある〟という感覚は生じることになります。というわけで、夜空は「大きさのわからない光点」がちりばめられている特異な景色だということも出来ます。 なお、光の〝大きさ〟の知覚はその光の量にも依存します。輝きが大きいとその物体は〝大きい〟と感じる仕組みにもなっています。


夜空の星の中では金星が最大58秒、木星が最大49秒の視直径なので〝大きさをぎりぎり感じる〟事ができる天体です。夏から秋にかけての寝苦しい夜、クーラーの部屋から出てたまには夜空を見上げてみてはいかがでしょう。


(以上 文責:永田明徳(『視聴覚情報処理の基礎』担当))

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