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おもしろメディア学 第95話 1−1=?(その2)

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前回のブログ「データから社会経済の動きを探る技術」シリーズ「1−1=?」では、小学校以来勉強してきた数学の引き算とAADLで引き算を行う上での演算の関係について紹介した。両者を結ぶポイントは、増加する量と減少する量との間の「相殺」という考え方であった。すなわち、

5−3=

という引き算は、

増加した量(+5)と減少した量(−3)が相殺されて得られる(+2)

と解釈できるということである。

一方AADLは、経済的取引を記録し、管理する仕組みである会計の体系が実装されたプログラミング言語である。相殺を利用したAADLの引き算は、

~(5+^)=

のように記述した訳である。数学の引き算の記述に比べると面倒で、意味が分かりにくい。しかし、会計はまさにこの通りの表記に対応している。そして、様々な取引を管理するにあたって、この相殺というオペレーションが大活躍する。今回は、AADLの記述、すなわち交換代数表記を通じて経済的取引を記録する方法を紹介しよう。

さて、企業は、取引活動を簿記という仕組みを通じて記録している。家庭でも家計簿という、日々の、給料などの収入、買い物などの支出項目を記録する仕組みがある。簿記は、取引ごとの「増」と「減」を同時に記録する複式で記帳する仕組みに特徴がある。これを複式簿記というが、各取引を勘定科目と呼ばれる項目に分類し、帳簿に記帳するのである。この手続きを「仕訳」という。企業の年間を通じた業績は、仕訳という手続きによって記録された、この期間の取引結果の集積である。それでは、次の例に沿って取引の仕訳を具体的に考えてみよう。

 

例 41日付けで普通預金を開設し、資本金1000万円でA社を設立した。同日、営業用に自動車を200万円で購入し、普通預金から支払を行った。

 

まず、会社設立の仕訳は、以下のようになる。

(借方)                              (貸方)

普通預金  ¥1000(増加)    資本金  ¥1000(増加)

簿記では各取引の勘定科目ごとにその増減に応じて借方(左側)と貸方(右側)のいずれかに仕訳される。資産勘定に属する普通預金は、増加する場合には借方、減少する場合には貸方に記帳される。このケースでは普通預金が増加したので借方に記帳されている。一方資本金は純資産勘定で、増加する場合には貸方、減少する場合には借方に記帳される。資産勘定とは逆の記帳になっている。このケースでは資本金が増加したので貸方に記帳されている。資本金という会社設立資金の発生(増加)と、普通預金という資金の蓄積(増加)が同時にバランスして記録されている点に注意してほしい。

次に営業用自動車を購入・支払した取引の仕訳は、

(借方)                             (貸方)

車両  ¥200(増加)         普通預金  ¥200(減少)

となる。自動車は車両という資産勘定で、購入により¥200万の価値を持つ資産が増加したので借方に記帳され、一方その支払により普通預金が同額減少したので貸方に記帳される。¥200万の車両という資産の増加は、同額の普通預金という資産の減少によって取引がバランスしている。

さて、以上のA社に関する取引をまとめると、その財政状態は、結果的に以下のようになっているはずである。

(借方)                             (貸方)

普通預金  ¥800        資本金      ¥1000

車両  ¥200 

すなわち、¥1000万で設立されたA社は、¥800万の普通預金と¥200万の車両を使用して事業を行っているという、実態である。あるいはA社の¥1000万の資本金の価値は、(設立当初は¥1000万の普通預金で構成されていたが自動車の購入により)¥800万の普通預金と¥200万の車両で構成されている、と言い換えても良い。

ここで二つの取引をまとめた、と言う点に注意してほしい。会社設立という最初の取引で発生した¥1000万の普通預金が、車両の購入という次の取引でその残高が¥800万に減少している点である。すなわち、普通預金に関して、

¥1000 ¥200 = ¥800

という引き算が行われているのである。この引き算は、普通預金に関して、二つの仕訳における増と減が相殺された結果と等しい。そして、この相殺の手続きを通じて現在のA社の財政状態が明らかになっているである。

最後に、以上の取引を仕訳した一連の手続きを交換代数で表記してみよう。引き算という演算は、会計上は、勘定科目ごとの(同一の基底間の)相殺というオペレーションに相当することが理解されるであろう。

会社設立の仕訳データ

= 1000<普通預金, 万円, 4/1, A> + 1000<資本金, 万円, 4/1, A >

車両購入の仕訳データ

= 200<車両, 万円, 4/1, A> + 200^<普通預金, 万円, 4/1, A >

以上の取引をまとめた、A社の4/1時点の財政状態は、

~(会社設立の仕訳データ+車両購入の仕訳データ)

= 800<普通預金, 万円, 4/1, A> + 1000<資本金, 万円, 4/1, A >

+200<車両, 万円, 4/1, A>

となる。ここで、相殺オペレーションは、基底が同一の普通預金という勘定に対してのみ作用している点に注意されたい。

すべての経済的取引、すなわち会社設立、車両購入、財政状態の把握と言う一連のプロセスに関わる情報とオペレーションが、各交換代数表記と11に対応していることが理解できるであろう。

(メディア学部 榊俊吾)

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