おもしろメディア学 第94話 グレアの話(1)
2015年9月 7日 (月) 投稿者: メディア技術コース
太陽の反射や明るいライトが目に入るとき何が見えるでしょうか。光が拡がって見えたり、周りに放射状の線が見えたりします。誰もが日常経験するこの現象はグレアと呼ばれるものです。
映像表現の際にこのことを利用して、光の拡がりや放射状の線を描くことで、観る人に、その場所に「明るい光がある」という印象を与えることができます。アニメーションやゲームの画面、CG映像でも多用されています。
もう20年ぐらい前の話ですが、コンピューターメーカーの技術者だったころ、自動車会社のデザイン部門のお客さまのために車の外観をリアルタイムでCG表示するプログラムを作っていました。
その時、太陽がボディに反射したときの明るい光を表現してほしい、と要求されました。何とか工夫してうまく反射の度合いに応じて放射状のグレアがつくようにしたことがきっかけで、グレアの研究をやるようになりました。CG表示の手法もその後学会論文で発表したりしました。
この例ではそれっぽい放射状の線を用意し、それをグレアらしく見えるようにしただけです。どうせCGでやるのなら、現象の根本原因からシミュレートして再現したいものです。
なぜグレアが起きるのでしょう。見慣れているにも関わらず、知っている人は少ないです。これは、光が波(電磁波)であるために起こる「回折」という現象で説明できます。光をさえぎってもすき間からわずかな光が拡がる現象です。たとえわずかでも、元の光がとても強いと見えてしまうのです。
では、何がグレアを引き起こすのでしょうか。もし今あなたの近くに明るい光があり、放射状の線が見えたら、ちょっと実験してみてください。片目をつぶり、光を見ている目のほうの上まつ毛を指でそっと持ち上げてみてください。放射状の線が消えます。まつ毛を戻すとまた線が現れます。
明るい光、特に太陽を見る時には直接見ないよう注意してください。また、もともとまつ毛が上向きの人には放射状の線は見えないかもしれません。
放射状のグレアがまつ毛で起こることは確信したのですが、研究でそのことを説明するには証拠が必要です。話のつづきはまた次回に。
参考文献: 柿本ほか,“反射特性を考慮したグレア生成とその実時間表示手法,” 画像電子学会誌, 第32巻4号, pp. 336-345 (2003)
メディア学部 柿本正憲
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