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身近に感じる数学(1): 地震エネルギーと対数

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最近、日本各地の地震や火山噴火のニュースが多いように感じませんか。2011311日に起きた東日本大震災による大きな地殻変動の影響だともいわれていますね。その震災当時、私はメディア学部のある八王子キャンパスで仕事をしていましたが、かつて経験したことがないような大きな揺れに戸惑いを感じたことを今でも鮮明に憶えています。

さて、地震の際にテレビのテロップなどで速報値として出てくるものにマグニチュードという指標があります。同時に流れる震度情報と混同しがちですが、マグニチュードは地震のエネルギーそのものであり、各地の揺れの大きさを表す震度とは別物です。東日本大震災のマグニチュードは9.0が公式記録です。約20年前の1995117日には、関西地区を襲った阪神淡路大震災とよばれる都市直下型の大きな地震がありました。この地震は公式にはマグニチュード7.3とされています。ただし、マグニチュードにはいくつかの算出方式があり、東日本大震災で示された9.0はモーメントマグニチュードとよばれるものです。日本では超巨大地震以外は、気象庁独自のマグニチュード(気象庁マグニチュード)が使われます。阪神淡路大震災の7.3はこの気象庁マグニチュードの値であり、モーメントマグニチュードに換算すると6.9です。それでは、この2つの地震エネルギーはどのくらい違うのでしょうか? 単純な引き算2.1( 9.0 - 6.9 )や割り算1.3( 9.0 / 6.9 )では、本質的な違いは何も見えてきません。実は、1400倍近いエネルギー規模の差があります。この計算のカラクリに、本題の対数(loglogarithm)が関係してきます。

ちなみに、全世界で観測史上最大の地震は、1960年に起きた(モーメント)マグニチュード9.5の南米チリ地震とされています。チリは日本から眺めると地球のほぼ反対側に位置していますので、この地震による日本への直接的な揺れの被害はありませんでしたが、地震に誘発された津波は太平洋を遥々と渡り、翌日には日本の各地沿岸に大きな爪痕を残しました。なお、このチリ地震と阪神淡路大震災との間には、8000倍近いエネルギーの差があります。また、このチリ地震と、日本国内で頻繁に起こるマグニチュード3.0(モーメントマグニチュード換算)クラスの有感地震とを単純比較すると、チリ地震は実におよそ56億倍のエネルギーをもっていることがわかります。これら8000倍や56億倍というエネルギー比は、この後の説明(数計算)に基づいて算出できます。

さて、本題の対数に話を移します。地震エネルギーの比較に限ったことではないのですが、極端に絶対値スケールが違う数同士を、差として認識しやすい間隔尺度に変換するのに対数の概念は極めて有用です。その対数処理を施した結果として、東日本大震災のマグニチュード9.0や阪神淡路大震災のマグニチュード6.9(モーメントマグニチュード換算)があるわけであり、またその値をもとに、超巨大地震、巨大地震、中規模地震などと、地震の規模での分類がしやすくなっているのです。地震のエネルギーEとマグニチュードMとの間には、

log[10] E 4.8 1.5 M

という、常用対数を用いた関係式が成り立つことが知られています(※ ここでは便宜上、底10[10]で表しています)。この式に基づくと、東日本大震災のエネルギーE1と阪神淡路大震災のエネルギーE2は、それぞれ

E1 10^{ 4.810^(1.5×9.0) } 10^4.8×10^(1.5×9.0)

E2 10^{ 4.810^(1.5×6.9) } 10^4.8×10^(1.5×6.9)

となり、E1/E2 10^{ 1.5×(9.0-6.9) } 10^3.15 1412 が導かれます(※ ここでは便宜上、ax乗をa^xで表しています)。先述の8000倍や56億倍もこれに倣って導けますので、計算してみてください。

ついでですので、対数活用の別の例を見てみましょう。音の大きさを表す指標・単位にdB(デシベル)というものがあります。この指標のもとでは、木の葉がゆらぐ音が20dB、日常会話が60dB、電車が通過する際のガード下の音が100dB、ジェット機のエンジン音が120dBなどとされています。これらの値も、実はマグニチュードと同様に、常用対数によりスケール調整されたものです。音の大きさは、人間が聞き取ることのできる最小の音を基準として、それとの相対比で定めるという考え方が用いられます。ただ、人間がかろうじて聞き取れる音S0とジェット機のエンジン音SJとでは、絶対値としては1兆(=10^12)倍の違いがあるとされています。そこで、その相対比をlog[10] ( SJ / S0 )で間隔尺度に変換し、さらにそれを10倍した

10 × log[10] ( SJ / S0 )

という指標が使われるようになり、これがdBです。さてさて、まもなく始まる後期の授業の教室内は何dBくらいになることやら?

(文責: メディア学部 松永)

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