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おもしろメディア学 第98話 グレアの話(4)

2015年9月28日 (月) 投稿者: メディア技術コース

基本的な回折(「フレネル回折」と呼ばれるものです)理論でグレアの明るさを計算してもうまく行かないまま学会発表することになってしまいました。

そのワークショップは議論重視で、未完成の研究を発表してもよいものでしたので、いろんなコメントをもらいました。その中で、幾何光学的な屈折で回折を扱ってはいけない、レンズを通した回折はフーリエ変換で簡単に得られる、という指摘を受けました。「フラウンホーファー回折」と呼ばれる近似式です。

指摘してくれた先生は東邦大学の新谷幹夫先生で、SIGGRAPH論文発表などの実績もある方です。フーリエ変換で必ずうまく行くはずですよ、とも言ってくれました。

フーリエ変換は、どんな波形でも多数の違う波長のサイン波で合成でき、その合成割合を求める計算です。対象が画像の場合、あらゆる向きと間隔の多数の縞模様画像を合成し、その割合の数値を明るさとする別の画像(分布図)を求めるというものです。わかりづらいかもしれませんが、画像に限らず工学全般で非常によく使われる手法です。面白い説明動画がこちらにあります。

https://www.youtube.com/watch?v=pCVdNYvORVw

確かに、波動光学の教科書にも、レンズを通した回折の理論計算はフーリエ変換になると書かれています。また、さまざまな遮蔽物に関する例が載っています。

幸い、まつ毛を遮蔽物とした例は、いくつもの教科書を見ても載っていません。過去の論文にもそのような例はありません。なので研究発表しても大丈夫です。研究者にとって自分のアイディアがまだ実現されていないか調べる時は本当にハラハラします。まだやられていないようだとわかった時はほっとします

さっそくフーリエ変換プログラムを使い、まつ毛をスキャンした画像に対して変換をかけてみることにしました。

フラウンホーファー回折の理論式は、ある一つの色(波長)の光だけに対するものですが、実際の光はいろんな波長が混ざっています。なので、それらを合成すると色ずれがおきます。実際のグレアも虹色の模様が見られます。

このようにして合成した結果がこちらです。左は入力画像として使ったつけまつ毛のスキャン画像です。丸い形の窓のような部分は人間の眼の瞳を模擬しています。

4a_simglare

こちらは、同じつけまつ毛をカメラレンズにつけてペンライトの光を撮影した結果です。

4b_shotglare

前提条件が少し違うため、色の見栄えは少し違いますが、概ね実写と同じ見かけのグレアを再現することができました。

新谷先生がその学会に来ていなかったら、あるいは指摘をしてくれなかったら、問題解決ができず博士号も取れなかったかもしれません。

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メディア学部 柿本正憲

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