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経済的取引と会計の話(その2)

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今回は、前回のブログ「データから社会経済の動きを探る技術」シリーズ「経済的取引と会計の話」に引き続き、経済活動を取引量から把握する会計の話を少し一般的な見地から紹介しよう。今回は、拙著「ICTビジネス」(コロナ社)の第5章を一部引用しながら話を進めよう。

一般にすべての経済的取引はいずれかの「勘定科目」と呼ばれる会計の分類項目に仕訳され、その勘定科目は、資産、負債、純資産、費用、収益のいずれかの勘定に分類されて、残高試算表と呼ばれる表に集計することができる。残高試算表では、各勘定の表記されている位置は、当該勘定についてその値がプラスである場合の位置になっている。例えば、資産勘定は借方(左側)であり、負債勘定は貸方(右側)に配置される。各勘定は通常、決算期においてそれまで発生したすべての取引データが相殺されていずれもプラスの値になる(ごく一部の例外はあるが、今回は触れない)。そしてこの残高試算表の借方(左側)は資金をどのように使用したか(資金の運用)を表し、貸方(右側)はその資金をどのように集めたか(資金の調達源泉)を表している。そして、前回に述べたように、左側と右側とで残高は等しくなっている。

以上の一般的な残高試算表と、前回の事例の取引を相殺した結果を借方と貸方に分けた表(これも残高試算表であるが、負債と純資産勘定は発生していないことに注意)を見てみよう。それぞれの部門のボックスの大きさは残高の大きさを反映して表しており、各部門を借方と貸方で合計したボックス全体の大きさは等しくなっている。

 そして残高試算表は、決算期に様々な調整(決算整理という)が行われた後、貸借対照表(Balance Sheet : B/S)と損益計算書(Profit & Loss statement: P/L)に分離される。すなわち、収益が費用を上回る分(黒字の場合)を当期に発生した利益としてフロー勘定である損益計算書に計上する。一方、当期に発生した利益は来期以降の純資産として、ストック勘定である貸借対照表の、これまで蓄積されてきた純資産に組み入れられる。

前回の事例でも、残高試算表は、今期(といっても4/1だけであるが)発生した利益を通じて、貸借対照表と損益計算表に分けることができる。このお店は、商品を\800で仕入れ、これを\1000で販売し、利益\200を最終的に得たわけである。

さて、経済取引を計る量にはストックとフローという2種類の数量がある。先に触れたように、貸借対照表の勘定科目がストック量で、損益計算の勘定科目がフロー量である。ストック量というのは、経済取引の結果生じた、ある時点における「状態」を表す量であり、フロー量は、ある一定期間に「発生」した経済取引量である。

例えば、上の事例で、4月1日から430日までの1ヶ月の間に商品が5個販売されたとすれば、

\1000×5=\5000

この期間に発生した売上がフロー量である。そして、増加した\5000の現金と、この5個分の仕入に支払った\4000の現金と、この現金の増加と減少を相殺して、利益として残った現金の量の430日の時点の状態\1000が、現金残高というストック量である。この現金のような資産勘定はストック量であるが、ある時点から別の時点までの間の、販売による\1000の現金の入り(増加)と支払いによる\800の現金の出(減少)、それぞれの状態の変化はフロー量である。

この例のように、売上、費用、利益のような期間中に発生する動きを表す量がフローであり、現金、買掛金、純資産のような特定時点での状態量を表す量がストックである。そして、状態変数のストック量でも、期間という幅の中での状態の変化はフロー量である。ストック量の現金残高でいえば、その増減である変化分はフロー量である。

経済的取引の実態を捕捉するということは、このように、ある期間内の動きと、その結果生じた状態の両面からとらえ、そして両者の関係をつなぎ、次の時間的推移に進むという、静と動と、併せ持った視点が必要になるのである。AADL(代数的会計記述言語:Algebraic Accounting Description Language)が、会計的実務を忠実に再現し、ストックとフローという両面を厳密、かつ可視的に扱えるデータ管理並びにその実装プログラミング基盤を提供していることはいうまでもない。

(メディア学部 榊俊吾)

 

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