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卒業研究を音響学会で発表No.2

2016年3月27日 (日) 投稿者: メディア技術コース

みなさん、こんにちは、

 
みなさんは、楽譜に書いてあるフォルテとかピアノという指示をご存じのことと思います。強く演奏するのがフォルテ、弱く演奏するのがピアノですね。さて、フォルテやピアノは単に音量の大小だけの違いなのでしょうか?
卒業研究でこのような疑問に取り組んだ学生がいます。彼は、コンピュータで音楽を制作するDTM(Desk Top Music)の課題に取り組んでいました。現在コンピュータ音楽制作用に利用できる高音質の音源は楽器音を録音したものです。一つの楽器でも、複数種類の音が収録されていることがありますが、録音して用意できる音の数には限りがあります。弱く演奏した音源、強く演奏した音源はありますが、彼が実現したかったのはクレッシェンドです。連続的に音が大きくならなくてはなりません。いろいろ調べてみると、単に弱く演奏した音の音響を徐々に上昇させていっただけでは何か不自然だということがわかりました。
今度は、音量を一定にしてフォルテの演奏か、ピアノの演奏かをあててもらう実験をしたところ、かなり高い正答率が得られたのです。
なぜ音量が同じなのに強弱がわかるのでしょう?
 

次の図1はトランペットを強く吹いた時のサウンドスペクトログラムです。横軸は時間で縦軸は周波数です。赤い色が強い音の成分が存在することを示し、青いところは音の成分が弱いことを表します。赤、黄、緑、青の順で弱くなります。そして、図2はトランペットを弱く吹いた時のサウンドスペクトログラムです。

 

Trumpet_forte

                    図1 トランペットを強く吹いたときのスペクトログラム
 

Trumpet_piano

                    図2 トランペットを弱く吹いた時のスペクトログラム

 

なにか、ずいぶん色の分布が違いますね。図1は、図の上の方つまり高い周波数まで赤から薄緑色の色がついています。トランペットは強く吹くと高い周波数の音の成分がたくさん含まれるのです。それに対して弱く吹いた図2では図の上の方の高い周波数部分は真っ青ですね。つまり、弱く吹くと低い周波数の音の成分だけになってしまうのです。実際に聞いてみると、強く吹いた音は元気な感じ、弱く吹いた音はかなりこもった感じにきこえます。

なので、コンピュータでクレッシェンドを演奏しようと思ったら、音量をだんだん大きくするだけでなく、音色に対応する音の周波数成分の含まれ方も連続的に変えていかないとだめだということがわかったのです。この研究を2016年3月9日から11日に神奈川県横浜市の桐蔭横浜大学で開催された日本音響学会2016年春季研究発表会で発表しました[1]。

 

[1] 宮下滉洋,濱村真理子,相川清明, "トランペットを対象とした発音の強弱の知覚における時間周波数特性の分析", 日本音響学会講演論文集, pp.467-468, 2016-03-09.

 

相川清明

 

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