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X線CTのお話

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こんにちは。2016年4月に着任しました、加納です。
今日は私が研究している、X線CTについて紹介したいと思います。

X線CTは、物体を壊さずに断面を見ることができる装置です。皆さんも、体の内部を調べるために、病院でCT撮影をした経験があるかもしれません。私も一度入院したことがあり、頭のCT撮影をしてもらいました。そのときの画像がこちらです。

Myheadsmall_2

どこかで似たような画像を見たことがあるのではないでしょうか。このように、X線CTを使えば、患者を傷つけずに内部の診断が可能になります。

また、X線CTは医療以外のさまざまな領域でも幅広く活用されています。次の画像は、直径 3 cm 程の蟹の模型をCT撮影し、断面画像を重ね合わせて3DCG化したものです。

Crab

X線CTを使えば、入り組んだ構造や、物体の中身さえも正確に三次元的に再現することが可能です。この技術は、生物のメカニズム解析や、ゲーム用CGの作成などへの応用も考えられます。

X線CTは我々の生活に大きな恩恵をもたらしてきました。発明者の2人の科学者(アラン・コーマック、ゴッドフリー・ハウンズフィールド)はそれぞれノーベル賞を受賞しています。こういう話を聞くと、X線CT装置の中ではきっと難しいことをごちゃごちゃとやっているんだろうな、と思われるかもしれません。しかしこの技術、実はとても簡単な法則に基いているのです。

物体にX線を照射すると、X線の一部は物体に吸収されて、残りは物体を透過します。このとき、一般に硬いものほどX線をよく吸収し柔らかいものほどX線をよく透過することがわかっています。例えば、次のような未知の硬さ A, B, C, D を持つ物体の断面を考えてみましょう。

Xray0_3

この物体に、右側からX線を照射してみます。

Xray1_2

すると、検出器によってこのように 30, 40 という数字が得られました。これは、物体がどれだけX線を吸収したかを表す数字です。数式に置き換えると、次のようになります。

Eqn1

次に、斜め方向からもX線を照射してみましょう。

Xray2_2

今度は、10, 50, 10 という数字が得られました。これを数式に置き換えると、次のようになります。

Eqn2

後は簡単な連立方程式を解くだけですね。計算すると、以下のように硬さの分布が得られます。

Xray3

X線CTではこのように、いろいろな方向からのX線照射データを集め、コンピュータを使って連立方程式を解くことで、硬さの分布を求め、それを可視化しているのです(コンピュータを使って断面を計算するから、Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)!)。冒頭で紹介した私の頭の断面からも、骨などの硬い領域は明るく(値が高く)脳や眼球などの柔らかい領域は暗く(値が低く)なっていることが見て取れますね。

いかがだったでしょうか。当然、実際のCTでは計算の規模が大きくなります。しかしやっていることは同じで、連立方程式を解いて硬さの分布を求めているだけです。簡単な原理に基いているということを知ってもらい、X線CTを身近に感じてもらえましたら幸いです。


今日はX線CTの概要をご紹介しましたが、実はまだまだ解決すべき問題点や改善点が残っています。次回以降は、何が問題になっているのか、そしてどのような解決が試みられているのか、ということについて、私の研究を交えながら紹介していきたいと思います。

メディア学部 加納

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