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X線CTにおける諸問題 その2

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こんにちは、コンテンツコースの加納です。

前々回の記事ではX線CTの概要について、
前回の記事ではX線CTに幾つかの諸問題に触れました。

今回は、X線CTにおいて最も深刻な問題である、メタルアーチファクトを紹介します。

まずは、私の頭の中に、5つの金属(鉄)を埋め込んでみます。
次の図の、赤い矢印の部分が金属になっています。
(実際には私の頭の中に金属は入っていません!)

Metal1


このデータに対して、シミュレーション上でCT撮影を行い、画像再構成を行うと、次のようになります。

Metal2


金属の部分が光っているように見えますね。
特に、金属と金属を繋ぐように、放射状に線が広がっているように見えます。
X線CTは物体の断層画像を見ることができる装置ですが、撮影対象の中に金属物質が含まれるとき、このように金属部分から放射状のノイズが発生してしまいます。

この放射状のノイズは、メタルアーチファクトと呼ばれます。
そして画像からわかるように、メタルアーチファクトが発生すると、正確な診断や検査が行えなくなってしまいます。

メタルアーチファクトが発生する代表的なケースとしては、
・金歯や銀歯などを含む患者の歯部の撮影
・人工関節(股関節、膝関節)の置換手術を受けた患者の撮影
・動脈瘤(風船のように膨らんだ血管)が破裂しないようクリップが埋め込まれた患者の撮影
・金属部品で構成された電子部品、電子基板などの撮影
などがあります。

私は、このようなケースでも正確に内部の観察を可能にするため、メタルアーチファクトを低減する技術の研究を行っています。

メタルアーチファクトの低減が可能になれば、医療分野では癌の早期診断、産業分野では金属部品の高精度非破壊検査などに繋がります。


■ メタルアーチファクト低減の研究成果

なぜメタルアーチファクトが発生するのか、どのようにしてメタルアーチファクトを低減するのか、ということを語り始めると、ややこしい話になってしまいます。そこで、今回は成果の一部のみを紹介したいと思います。
(金属で光が反射しているのでは、と考えられる方もいますが、実際の要因は大きく異なります。)

先ほどのメタルアーチファクトが発生しているデータに対して、私が提案した手法1)を適用すると、次のようになります。

Metal3


メタルアーチファクトが劇的に低減されていることがわかります。

更に、この手法の性能がどれだけのものかを確認するため、私の頭に約30個の金属を追加で埋め込んでみました。
(こんな状況が実在するとは考えられませんが。)

次の画像は、
左:頭に大量の金属を埋め込んだ画像
中:通常のCT撮影を行った結果(気持ち悪くてすみません)
右:提案手法を適用した結果
となっています。

Metal_mix


提案手法を適用することで、先ほどと同様、メタルアーチファクトは大幅に低減されていることがわかります。細かい部分でノイズやアーチファクトが残ってしまってはおりますが、これだけの画像が得られれば、診断や検査に与える影響は少ないと考えられます。

実は今回の私の頭には、金属の他に、
膿瘍を想定した部分(下図赤矢印)を2箇所、
腫瘍を想定した部分(下図橙矢印)を2箇所、
埋め込んであります。

Metal7


これら病変部はメタルアーチファクトの発生によって観察が困難になっていますが、提案手法を適用することで、観察可能になっています。
(ただし、本当にこの画像が有用なのかどうかを調べるためには、定量評価やROC解析が必要になります。)


私は約6年間、このメタルアーチファクトに関する研究を行っており、大分煮詰まってきているように感じています。

今度は、実用性をより向上させ、多くのX線CT装置に本技術を搭載していきたい思いです。

メディア学部 加納


1) X線CT画像における逐次近似法を用いたメタルアーチファクト低減; 加納徹, 小関道彦: 計測自動制御学会論文集, Vol.51, No.12, pp.836-844, 2015.

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