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「東京ゲームショウ2016」にて小学生向けゲームスクールを開催

2016年9月21日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

 メディア学部メディアコンテンツコースの岸本です。

 2016年9月15日~18日、千葉県・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2016」にて、初めての試みとなる「TGS キッズクリエータークラブ」が開催されました。これは小学生を対象としたゲームスクールで、子どもたちにゲームで遊ぶだけでなく、作って楽しんだり、ゲームの面白さを考えたりしてもらうことを目的とした講座です。

 9月17日、私たちは『あなたもゲームプランナー! オリジナルステージを作ろう!』講座を3回行い、60名余りの小学生とその保護者の皆さんに大好評をいただきました。その講座の模様をお伝えします。

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▲講座の様子

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 はじめに、保護者の皆さんに向けて、「この講座は、子どものキャリア教育のための『ゲームクリエーターの仕事』体験」であることを説明しました。コンピューターゲームは、いろんな専門家が力を合わせて作ります。その中の「ゲームプランナー」の役割を体験してもらう講座です。ゲームプランナーは、「面白いゲーム」を企画したり、プログラマーやグラフィックが制作したステージに障害物やアイテムを配置したりして、「プレイヤーが楽しめるステージ」を作り上げる役割です。

 講座では、私がゲーム会社「キッシーゲームス」のきっしー社長、学生らが社員のゲームプランナーに扮し、小学生たちは「一日社員」という設定です。

 講座の前半『ミッション1:ゲームはなぜ面白いか?』では、隣り合った2人でペアを組み、ゲームクイズでアイスブレイクした後、1人ずつ「一番好きなゲームと、その理由」を紙に書いて、ペアで発表し合います。その上で、「①自分の成長が見える」「②大げさにほめられる」「③いつでもヒーロー」という、きっしー社長の考える「ゲームがおもしろい理由3つ」を伝授、ゲームプランナーは、ゲームが面白くなるために、この3つの要素を入れている!と説明します。

 講座の後半『ミッション2:オリジナルステージを作ろう!』では、ペアで1台のパソコンを使い、学生の作った横スクロールアクションゲーム『冒険クリエイト』をもとに「オリジナルステージ」を作ってもらうという流れです。

 さて!いよいよ講座の始まりです。まず、きっしー社長から「わが社は今倒産の危機にある。その理由は新作ゲーム『冒険クリエイト』が全然人気がないためだ。一日社員の皆さんには、このダメゲーム『冒険クリエイト』をおもしろくして、会社を救ってほしい!」と伝えます。あたかもRPGの主人公の様に、です。

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 社員プランナー役の学生2人が、それぞれ「自分の作ったステージがどう面白いか」を自慢げに説明しますが、小学生の一日社員からは「それじゃ簡単すぎるよ!「音が入ってないよ!」などのツッコミが入ります(*狙い通り)。

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 ここで、きっしー社長より一日社員に具体的なミッションを与えます。
・音や演出を付ける
・ちょうどよい「むずかしさ」のステージを2つ作る

 子どもたちはペアで1台のパソコンを使い(*協働を学ぶ狙い)、制限時間内に2つのステージの完成を目指します。学生スタッフは、子どもたちの作業が上手く進んでいるか見守りながらアドバイスを与えます。2つのステージが完成したら、前後のペアと交替でプレイし合ってもらいます。この間、保護者の皆さんには、子どもたちが真剣に楽しく作業に取り組む様子を見ていただきます。
 交替でのプレイが終わったら、お互いに「面白かった」「ちょっと難しかった」などコメントを交換し、自分の作ったステージが「客観的に評価される」経験をしてもらいます。褒められればもちろん嬉しいし、「難しすぎる」などと言われたら考え直せばよい、ということを学びます。

 「とても良いステージができたので、ぜひ会社で使わせてほしい!」ときっしー社長が大げさに誉めた後、「ゲームプランナーがステージを作るのに大事なこと3つ!」を説明しました。
1.効果音を入れる
2.大げさにほめる演出を入れる
3.難しすぎても簡単すぎてもいけない

 「みなさんというヒーローのおかげで、『冒険クリエイト』はおもしろいゲームに生まれ変わりました! これで大ヒット間違いなし! 会社を救ってくれてありがとう! ぜひ将来、キッシーゲームスに入社してほしい!」そして、「入社までに勉強しておいてほしいこと」をきっしー社長から伝えました。

 国語・・・自分の考えを、ほかの人に伝えるために必要
 算数・・・プログラマーに指示するときに必要
 英語・・・世界中の人たちが遊んでくれるゲーム作りに必要

 いま小学校で勉強している科目が、ゲームプランナーになるためにどう役立つのかを知って、主体的に学んでもらいたいというのが狙いです。

 「勉強すると約束してくれる人は手を上げて!」と言うと、7割ぐらいは手が上がりますが、残りは上がらず、保護者の皆さんから笑いが起こります。「じゃあ、1科目だけでもいいから」と言うと、追加で少し手が上がり、ここでも笑いが起きました。

 最後に、ペアで「今日学んだこと」を話し合い、アンケートに記入をしてもらいました。学生スタッフは各ペアを廻って「ウンウン」と頷きながら聞いてあげます。アンケートを書き終えたら、きっしー社長からプレゼントの『冒険クリエイト』ディスクを手渡します。これがあれば家に帰ってからも、ステージ作りが続けられるのです。

 全員で記念写真を撮って、講座終了となりました。



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▲上から順に、第1,2,3回の集合写真。子どもたちはみんな個性的でした。

【子どもアンケート】の回答からは小学生たちの学びが読み取れます。

●今日の感想や、「こうした方が良くなる」を書いてください。〔回答は抜粋〕
・楽しかったです。やっぱり『冒険クリエイト』ってすごいなー。(小5男子)
・ゲームを作る楽しさがわかりました。楽しかったです。(小6男子)
・自由でもかんたんでもむずかしくてもだめなのを、どうすれば良くなるかが分かった。(小4女子)
・ゲームの効果音をつけることによりゲームがおもしろくなることがわかりました。(小6男子)
・とてもおもしろかったので、家でもディスクでステージをつくりたい(小5男子)
・音楽やかんたんやむずかしくてもだめだから、そこもちょうせいしてステージを作ると楽しくなる(小4男子)
・つっこみ所がおおすぎる。たのしかったです。(小5男子)
・効果音でゲームがたのしくなることがわかった。(小4男子)
・自分のキャラクターを作れた方が良いと思います。(小5男子)

【保護者アンケート】の回答には、「ゲームに対する意識の変化」が見られました。
 
●この講座を通して、ゲームに対する印象はどのように変わりましたか?〔回答は抜粋〕
・何となく「ゲームを作る人になりたい」から、はっきりと「どうすればいいか」子どもに伝わったと思います (母親)
・好きなものを作るというのもありだと思いました (母親)
・考える力を養うことができる(父親)

●この講座のような、ゲーム制作を体験する場があって良かったですか?〔回答は抜粋〕
・ゲーム制作をしている時の姿がとても楽しそうでした(母親)
「ゲームを作る」ことが夢ではなく現実としてとらえることができた。(母親)
・将来の選択肢が増えたことを知れたと思います (母親)
・ゲームがどのように作られているかを理解できた(父親)
・モノ作りの基本、覚悟が学べた(父親)

●この講座を通して、ゲームクリエーターという職業についてどう思いましたか?〔回答は抜粋〕
・何より多くのアイデアとカリスマ性が必要で、大変だと思った(父親)
・息子が将来ゲーム会社に入る夢を持っているので、ぜひ頑張ってほしい(父親)
・色々な事を知ってないとゲームは作れないから、学校の勉強は必要(母親)
・クリエイティブな仕事ではあるが、決して軽い仕事ではないと思います(母親)
・うちの子は国語力があまりないので、ゲームクリエーターになるには高めて頂きたいです(母親)
・夢があって、人のために楽しめるように考える職業だと知れた(母親)
・ゲームも機械も音楽も同じ。作ることで人を喜ばせる (父親)

 本講座の学生リーダーを務め、『冒険クリエイト』のプランナー・プログラマーも担当した山本くんの感想です。

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■リーダー・山本祐介くん(4年生)の感想

「TGS Kids Creator Clubは大成功だったと思います。ワークショップを終えた子供たちが「楽しかった!」と言ってくれたり、渡したゲームディスクを見て「やった!家でももっと遊ぶ!」と言ってくれ、とても満足でした。
 準備段階から本番当日まで、ベースとなるゲームの制作のほか、腕章など備品の準備、デザイン、会場への搬入など、研究室のみんなと力を合わせて用意をした甲斐があったなと思いました。子どもたちのキャリア教育に役立ったという実感だけでなく、制作を行いフィードバックを受ける「クリエイター」の楽しみを私たち自身も再認識することが出来たと思います。
 今回のワークショップから、未来のゲームクリエイターや未来の東京工科大学生が誕生することを心から願っています。」

 

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▲今回も「優秀な学生さんたちですね」と誉められた自慢の学生たち

 今回の成功を手ごたえとして、これからも「子どものキャリア教育のための『ゲームクリエーターの仕事』体験」講座を展開して行きたいと考えています。ご期待ください。

TGSキッズクリエータークラブ
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2016/public/family/creater.html#introduce

執筆記事一覧
http://kishimotolab.org/mediabloglink.html
教員紹介 岸本好弘
http://www.teu.ac.jp/info/lab/teacher/?id=1566

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