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メディアと社会(その2):経済統計学会2016年度全国大会に参加して

2016年9月20日 (火) 投稿者: メディア社会コース

さる912()13()の両日、鹿児島大学で経済統計学会2016年度全国大会が開催されました。前々日、前日の1011日に社会情報学会の開催された札幌から連続の学会参加になりました。日程上、札幌から鹿児島まで直接移動すれば良いのですが、いったん帰宅しました。というのも、単独予約の取りにくさと経費削減でパックツアーを利用すると、出発地/目的地の往復利用に限定されているからです。フライト/宿泊もネット予約が当たり前ですが、ITもまだ現実の多様な行動パターンには対応しきれていません。


さて、「統計」と聞くと引いてしまう読者もいるかもしれません。しかし、「統計」は、私たちの生活する社会の「実態」を把握し、その結果を開示することで、ビジネス上の意思決定、行政サービスの享受、日々の暮らしに至るまで、私たちの生活を滞りなく営む上で、欠くことのできない社会的インフラと言えます。統計は、本学部との関係から言いますと、社会を映すメディアと言えるでしょう。「経済統計学会」は研究者だけでなく官公庁(各府省)で統計に携わる職員も参加する、まさに「現実」を追求する学会です。本大会のプログラムや論文は下記のURLから見ることができます。

http://www.jsest.jp/jp/kenkyu_soukai.html

今回のブログでは、メディア社会コースを希望する高校生諸君に「統計」を知ってもらうのに身近なテーマ構成と思われるセッション「公的統計データの二次的利用促進に向けた新展開」について紹介しましょう。報告テーマは以下の通りです。

1.公的統計の二次的利用の促進に関するわが国の取組状況

2.公的統計ミクロデータの新たな利用形態について

3.オンデマンドによる統計作成について

セッション名も報告テーマも何やら小難しそうです。確かに社会情報学会で紹介した、Jリーグ、キャラクタービジネス、アニメのような個別具体的な対象を研究したものではなく、いずれの報告も制度論、方法論という意味で比較的抽象度の高いものです。しかし、私たちの日々の生活に関係してくるという意味ではやはり身近なテーマです。

このセッションの趣旨を少し解説しましょう。統計を利用する最も一般的な方法に、e-Statがあります。e-Statは「政府統計の総合窓口」で、「各府省が公表する統計データを一つにまとめ、統計データの検索をはじめとした、様々な機能を備えた政府統計のポータルサイト」です。

(e-Stat活用ガイド:http://www.e-stat.go.jpより。)

このホームページをご覧いただくと、データの宝庫であるばかりでなく、表、グラフ、地図上へのマッピングなどに活用したり、更に、こうした分析のための学習サイトも用意されています(「なるほど統計学園(小中学生用)、「なるほど統計学園高等部」」。

e-Statはネットを通じて膨大な統計情報を簡単に利用できる極めて強力な「メディア」と言えるものです。わが国の多岐にわたる公的統計が利用できるという意味では、意のままに利用して活用できそうですが、実は制約があります。e-Statを含む各府省の統計は、事前に行政機関の定めた分類、単位に集計した結果だけが公表されており、その開示項目だけに対して私たちは、自由に利用できるのです。

しかし、本来、統計利用者が自らのニーズに合わせて希望する項目を組み合わせる、すなわち必要な集計対象(項目分類)、集計レベル(粒度)への対応が必要です。例えば、家計の消費実態の統計が必要なとき、集計対象は、所得階級別のデータなのか、地域別のデータなのか、そして、集計レベルは、所得水準をどの程度の階級に分けるか、地域は都道府県単位なのか、それらはみな利用者の分析ニーズに依存するわけです。

そこで、利用者のニーズに応じて、集計対象、集計レベルを自由に設定できるような仕組みづくりをしなければなりません。それが今回のセッションのテーマである、オンデマンド集計という仕組みです。しかし、このオンデマンド集計を実用化するためには、「生」のデータである、調査票情報というミクロデータへのアクセスが不可欠になります。つまり、統計に回答してくれた事業所、企業、個人の機密情報、プライバシーをどう保護するか、という問題に直面します。保護を強化すればデータの利用価値が低下するし、利用価値を上げようとすれば、匿名性が担保されないというジレンマに陥ります。今回のセッションは、こうした現実に直面する問題を、技術面、制度面で模索する研究報告だったのです。

(メディア学部 榊俊吾)

 

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