先端メディア「先端 Procedural Animation」紹介: Cloth シミュレーション編
2016年12月18日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
本ブログをご覧の皆様,こんにちは.
メディア学部准教授 菊池 です.
今回のブログでは,先日の「先端メディア学・ゼミナール:先端 Procedural Animation」紹介で取り上げた「流体シミュレーション」に引き続き,「Cloth シミュレーション」を紹介したいと思います.
CG アニメーションの映画やゲームの中に登場するキャラクタは,必ずと言っていいほど衣服を着用しています.衣服はキャラクタの動きに合わせて,皺やたるみを生成しながら大きく変形します.アニメーションの主役であるキャラクタに最も近い物理現象である衣服の変形は,物理ベースのアニメーションの中でも,最も重要である要素のひとつと言っても過言ではありません.
よりリアルな衣服の様子をより高速にシミュレーションすることは,現在でも非常に活発な研究分野であり,毎年数多くの研究成果が発表されています.
Cloth シミュレーションに関する研究は,布の物理モデル,接触アルゴリズム,および空間ハッシュ構築法など多岐に渡り,非常に複雑です.特に,有限要素法を用いた布の物理現象の定式化や自己衝突アルゴリズムの理解は,CG の初学者には難度の高いものとなっています.
「先端 Procedural Animation」では,自己衝突を含む有限要素法を用いた Cloth シミュレーションに関して,最もスタンダートな手法を勉強した後,Side Effects Software 社の「 Houdini 」を用いて実装演習を行います.
Cloth の挙動は様々な力の複雑な相互作用によって決まりますが,大まかに捉えると以下の 6 つの物理現象に分けることができます.
- 布地の面内の物理
- 布の曲げの物理
- 重力
- 縫製の物理
- 身体との接触の物理
- 自己衝突の物理
有限要素法( Finite Element Method:FEM )は,「メッシュで補間された連続場に対して,変分原理を使って編微分方程式を解く」手法です.
簡単に言うと,エネルギーの最小化です.それぞれの物理に対してエネルギーを定義した後,全体のエネルギーを最小化することで解を得ます.
上記 6 の「自己衝突の物理」に関しては,変分原理での取り扱いが非常に困難です.Cloth が貫通しないという条件が幾何的に複雑なためです.この Cloth 同士の自己衝突をどのように効率的に取り扱うかが,CG 分野では長年の研究テーマとなっています.
本授業では,自己衝突と Cloth の内部物理を切り離して解く手法を採用しています.内部物理を解く際には,Cloth 同士が自己衝突しているかどうかは気にせずに Cloth を動かし,自己衝突を解く際には Cloth の内部物理を無視して Cloth を独立した頂点の集合体と考えて,自己貫通が解消されるように各頂点を個別に動かすアルゴリズムです.
図.最初に内部物理を解き,その後自己衝突を解く
上記のアルゴリズムをHoudini で実装したシミュレーション例が以下の動画です.
動画.Cloth シミュレーションの例
次回のブログでは,Fur(毛)に関するシミュレーションを紹介したいと思います.
参考文献
- 五十嵐悠紀,井尻 敬,梅谷信行,金森由博,徳吉雄介,堀田一弘,向井智彦,安田 廉,山本醍田,”Computer Graphics Gems JP 2013/2014”,株式会社ボーンデジタル,2013.
文責:菊池 司
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