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シナリオ執筆のひとつの極意を工学的に分析した研究成果が公開される

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『映画作品における試練要素分析に基づいたプロット制作支援』の研究論文が公開されましたので,それを機会に,この研究の内容を紹介します.以下の解説は,実験助手の菅野が書きました.
本研究は、映画、ドラマ、アニメなど、映像コンテンツの設計図や仕様書とも言われる「シナリオ」の制作を支援する研究です。
映像コンテンツを作るためにシナリオが制作されるようになったのは、映画が誕生した時期とほぼ同時期とされています。もっとも、映画が誕生した当初から今のようなシナリオが存在していたわけではなく、はじめは撮影順番などを確認する、メモ書き程度のものでした。しかし、やがて劇作や小説の内容を映画にした娯楽作品が商業利用されるようになり、撮影の段取りだけではなく、物語性を含んだ文書が必要となった結果、それをシナリオと呼称するようになったのです。
いまや映像コンテンツは、テレビ、インターネットを通じて、世界中で制作、放映されるようになりました。例えば近年でも、日本で放映された洋画と邦画を合わせた映画本数だけでも、2000年から2015年までに約2倍となっています。制作される映像コンテンツの数が倍増したということは、実際の映像制作時に必要となるシナリオの需要も倍増していることになります。
このような需要に応える上では、その内容が問われます。映像コンテンツがたくさん制作されればされるほど、よりよい作品を求められるからです。そこで世界各国では、シナリオに関する研究がなされるようになり、シナリオに必要な情報として、メインモティーフとなるテーマ、ストーリーの幕構成、主要人物の役割設定、定番のセリフや行動の緩急、間のとり方など、様々な要素が挙げられるようになりました。
そして、こういった情報を適切に盛り込んだシナリオを、専門的に制作する職業がシナリオライターです。映画誕生当初は監督がシナリオを制作していた経緯もあって、現在でも映画監督がシナリオライターを兼務することはありますが、多くの場合は監督とは別に、専門のシナリオライターを指名、設定します。
実際に数々のシナリオを制作し、商業的にも成功を収めたシナリオライターは数多くいますが、そんな彼らでさえ、シナリオに必須とされる各種情報のアイディアが尽きれば、シナリオの制作作業は停滞してしまいます。「チャーリーとチョコレート工場」や「ビッグ・フィッシュ」などのヒット映画のシナリオを担当したジョン・オーガストも、アイディアが枯渇してシナリオ制作の作業が進まなくなる事態について述べています。
本研究では、そんなアイディアの枯渇状態に陥ったシナリオライターが新たにアイディアを生み出せるようになる手法を提案しました。

Fig01

注目したのは、アメリカのシナリオの研究第一人者であるシド・フィールドが『シド・フィールドの脚本術 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』のなかで述べた、「主人公は,脚本の中で,達成しなければならない目標の前に立ちはだかる障害と対決しなければならない」 という指摘と、日本で幅広く用いられているシナリオ教則本『シナリオの基礎技術』の著者、新井一の『葛藤がドラマを作り出す』という指摘です。
主人公の前に立ちはだかる問題を発生させ、それに悩み、葛藤させることが,シナリオには不可欠な情報で、その障害や葛藤に関わるアイディアが枯渇した状態が、シナリオの制作を進展させることを困難にしている原因だ、と本研究では考えました。
そこで、既存の映像コンテンツにおける登場人物の死、失恋、抗争、厄災など、登場人物にふりかかる様々な障害や葛藤を引き起こす問題の情報に注目し、それらの情報を収集、分類した「試練要素データベース」を作成しました。そして、そのデータベースから任意の情報を引き出すツールを開発し、アイディアが枯渇したシナリオ制作者に用いてもらうことで作業停滞解消を本研究では目指しました。
提案手法の評価実験では、まず実験参加者に、シナリオの登場人物にふりかかる様々な障害や葛藤の情報を、書籍、Web、メモなど、一般情報への接触を許可したうえで、思いつく限り書き出してもらいます。そして、もう何も思いつかなくなった時点で、実験参加者本人に「アイディアが枯渇した」ことを確認します。そして、アイディアが枯渇したことを確認した実験参加者に、本研究の提案手法に基いて支援ツールを使用してもらい、アイディアを追加することができるか、を確かめました。
実験の結果、14名の実験参加者が、全員支援ツール使用することで、新たにアイディアを追加でき、本研究の有用性を確認できました。

Table01

ただし課題も残っています。まず、全員が新たなアイディアを創出できたものの、新規のアイディアが3個しか増やせなかった実験参加者もいれば、20個増やせた実験参加者もいるなど、効果にバラつきがあることです。また、あくまでアイディア枯渇状態からの脱却を目的としているため、ツールの使用によって制作時間が増えてしまうことなどがあり、ツールの改良や、ツール使用タイミングの適正化などが必要です。
今後はデータベースをシナリオの展開に応じて適切に用いるための提案機能や,作品ジャンルや制作メディアの特性に応じたガイド機能などを追加することができれば、更なるシナリオ制作の支援となるでしょう。
研究論文:菅野 太介,三ヶ尻 達哉,三上 浩司,近藤 邦雄,映画作品における試練要素分析に基づいたプロット制作支援,画像電子学誌 第46巻 第1号(通巻239号)pp.143-151,2017.1
メディア学部 菅野太介,三上浩司,近藤邦雄

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