標本化定理
2017年4月26日 (水) 投稿者: メディア技術コース
(以下の話はフィクションです。登場人物は実在の人物とは関係ありません)
メディア学部のO淵先生(仮名)は、気分屋なことで有名です。実は1日おきに機嫌が良くなったり悪くなったりします。今年度は、4月1日の機嫌が良かったので、そのあと2日の機嫌は悪く、3日は良く、といった具体に繰り返していきました。カレンダーにするとこんな感じです。
2017年4月 | ||||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 (良) | ||||||
2 (悪) | 3 (良) | 4 (悪) | 5 (良) | 6 (悪) | 7 (良) | 8 (悪) |
9 (良) | 10 (悪) | 11 (良) | 12 (悪) | 13 (良) | 14 (悪) | 15 (良) |
16 (悪) | 17 (良) | 18 (悪) | 19 (良) | 20 (悪) | 21 (良) | 22 (悪) |
23 (良) | 24 (悪) | 25 (良) | 26 (悪) | 27 (良) | 28 (悪) | 29 (良) |
30 (悪) |
学生のA君は、毎週火曜日にO淵先生の「音響コミュニケーション論」の授業を取っています。初回の授業は4月11日でしたが、その日は先生はご機嫌でした。楽しくて良い講義だな、と思ったのですが、次の週の4月18日、O淵先生の機嫌は最悪で、授業の雰囲気もどんよりとしています。そしてまた次の週の25日の機嫌は良く、翌週5月2日は悪く、5月9日は良く、というパターンで繰り返していきました。
さて、A君の目に、O淵先生はどのように映ったでしょうか。「なんだか1週間ごとに機嫌の良し悪しが変わる、面倒な先生だなあ」と思ったに違いありません。おかしいですね。O淵先生の機嫌が変わるのは1日おきなのですが、A君の目には1週間おきのように見えてしまいました。これはやむを得ないことで、週に一度しか会わない人の変化は、2週間単位(機嫌が良かった日から、次に機嫌の良い日までが2週間)でしか観測できないのです。この一見あたりまえのような性質のことを、難しい言葉で「標本化定理」と呼びます。
音は空気の疎密波です。O淵先生の機嫌のように、「疎」と「密」を繰り返しています。この繰り返しが1秒に何回あるかを、その音の周波数といいます。一方、その音を1秒間に何回観測するかを、サンプリング周波数といいます。「サンプリング周波数の半分の周波数よりも高い音は観測できない」というのが、音に対する標本化定理の正確な表現です。そして、A君のように間違った周期で解釈してしまうことを、エイリアシングと呼びます。
(大淵 康成)
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