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声の高さの科学

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人が発する音声のうち高さを感じるのは、声帯の振動をともなって発声される有声音です。有声音では、声帯振動が1秒間に何サイクル起こるかが音声を聞いた時の高さに関与しています。声帯振動が1秒回にたくさん起こるほど高い声になります。一般的に1秒間に50回~500回も起こります。この回数を基本周波数と呼び、基本周波数が高い音ほど高い音に聞こえます。

空き箱などに輪ゴムをかけてはじいた時や、ギターの弦などと同じで、声帯の長さ(膜様部長)や張力により出る声の高さが変わります。長さが長いほど低い基本周波数の声になるため長い声帯を持つ人のほうが低い声が出しやすいです。同じ人が高さを調整するには声帯を引き伸ばしますが、張力が増すにつれ声が高くなります。歌手などで低い声から高い声まで広い範囲の声を出せる人がいますが、人によって構造上どれくらい引き引き伸ばせるかが異なることも出せる範囲の違いに影響を与えています。

ところで、話し言葉では声の高さ調整はどういう役割を持っているでしょうか。音声を使って何か言葉を発した場合、あいうえおのどの音を出しているか以外に、基本周波数の変化のパターンも重要な情報を伝達しています。

例えば、東京方言では、同じ「あめ」でも高さのパターンによって違う意味になります。これはアクセントの違いです。

メ (雨) ア(飴)

それ以外にも、いくつかの文節をまとめてひとかたまりのフレーズに聞こえるように大きな山ができます。

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上図は「アニメもゲームも我慢で勉学に励む。」という文の基本周波数の変化パターンです。わかりやすいように有声音がほとんどになるような文を選んでいます。「アニメも」「ゲームも」「我慢で」「勉学に励む」は文節1つか2つのまとまりです、それぞれ小さい「への字」の山を作っています。1番最初の山が一番高く、右に行くほどだんだん起伏が小さくなっていますが最後の「勉学に励む」で少し山が高くなっています。実は「アニメもゲームも我慢で」と「勉学に励む」で大きなまとまりになっています。音声はこのように階層構造を持っており、基本周波数の変化パターンはそれに対応した複雑な曲線になっています。さらに、基本周波数の変化パターンは、上記のようなアクセントや文の階層構造を伝えるだけではなく、文字情報では表しきれないような込められた感情などを伝えるうえでも重要な役割を果たしています。

声帯を引き伸ばすことによる高さの調節の話に戻ります。声帯は、下図の輪状披裂筋の斜部と垂直部を動かすことで引き延ばされます。

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斜部は回転運動、垂直部は回転運動、斜部は平行移動する並進運動を起こし、簡略化すると下図のようなバネと質点の運動にモデル化できます。それによって声帯が引き伸ばされることによる基本周波数の変化を計算することができます。

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すると垂直部と斜部の運動が、それぞれ先ほどのアクセントと、さらに大きなまとまりのフレーズ「アニメもゲームも我慢で」「勉学に励む」に対応していることがわかります。「アニメも」「ゲームも」「我慢で」「勉学に励む」の4個のアクセントの山と「アニメもゲームも我慢で」「勉学に励む」の2個の大きな山の足し合わせで先ほどの複雑な基本周波数の変化パターンができています。

Pac

上記のように、一見複雑なものでもモデルで説明することができる場合があります。ちなみに、勉学に励むのは大切なもののアニメ・ゲームはメディア学部で学ぶメディア学が扱う対象なのであまり我慢してほしくないとも思います。

メディア技術コース 越智

参考文献
Titze, I. R. (2003). 音声生成の科学: 発声とその障害. 医歯薬出版.
Fujisaki, H. (1988). A note on the physiological and physical basis for the phrase and accent components in the voice fundamental frequency contour. Vocal physiology: Voice production, mechanisms and functions, 347-355.
Fujipara editor http://public.beuth-hochschule.de/~mixdorff/thesis/fujisaki.html

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