大学院授業「健康メディア特論」の紹介
2017年12月27日 (水) 投稿者: メディア技術コース
健康メディア特論という授業を担当している千種です。「健康メディア」とは、人間にとってもっとも身近なメディアであるという考えのもと、研究活動中心の大学院生が、自身の健康状態を「健康メディア」というデータとして記録・可視化・分析し、自身の健康維持に積極的に取り組んでいくという授業を実施しています。
この授業は、研究・実験やプログラミング・制作、あるいはティーチングアシスタントなどの多忙な大学院生活を過ごしている大学院生に対して、より健康的な研究活動をサポートし、より充実して高い集中力を維持できることを強く意識したセメスター制8週間の講義内容になっています。例えば、睡眠時間を5時間から1時間増やして6時間睡眠を実現することにより、日中の集中力が10%向上して、充実した研究活動が実現できる、といったことを想定しています。
各回の授業では、PDCAサイクルを用いて、P.各自の様々な具体的な目標(Plan)に対して、D.目標達成のために具体的に行動(Do)し、C.定量的に記録し、可視化・分析(Check)し、A.その時点での次の課題を発見して、次の目標として行動(Action)を設定していく、ということを授業の基本スタイルとしています。通常、企業などで実施されていることが多いPDCAサイクルでは、1サイクルが1か月間~半年間~1年間というスケールで、その目標も高く設定されていることが一般的です。しかし、この授業では、1,2週間で1サイクルとなるようにしてあります。そして、可能な限り目標を1つに絞り、その現状と目標のギャップも高望みをしないで低めに設定するところがポイントです。さらにうまくいかないときは目標を後退させて再設定することも是としています。その替わりにPDCAサイクルの実施回数を増やすことにより、対策効果を上げようとするものです。
今年度の授業ではまず初回に受講生各自の健康に対しての目標を聞き、それらについてディスカッションしました。この結果、集中力向上2名、体力や筋力アップ4名、入眠改善8名、起床改善4名、睡眠改善4名、と睡眠関係が16名と、メディアサイエンス専攻の大学院生にとって短めの睡眠時間の中で研究している状況が見えてきました。また、デスクワークが主であるため運動に対する要求もありました。
その後の2回目・3回目の授業の期間に各自の現状を観測してもらいます。例えば平均睡眠時間が5.5時間で、平均入眠時間が50分といった感じです。そして、各自の現状に対して、より具体的な原因を推定し、それらの原因の対策を調査することにより、具体的な対策法の候補をピックアップします。通常の改善において、もっとも効果の高い改善法はもっとも実施困難なことが多々あります。また人によって得意な対策と苦手な対策が存在することもあります。授業中のディスカッションの中で、具体的に取り組みやすい対策の中から効果が最も得られると思われるものを1、2件ピックアップし、それを実践して、1、2週間の状況を観測します。改善の兆候が観測できれば、そのまま対策を継続し、改善の兆候が観測できなければ、対策の候補の中から他の対策を調査し、実践していきます。
そして、8回目の授業では、8週間にPDCAサイクルを何回実践して、どのような効果が得られたのか、を定量的に分析します。具体的には、改善の時間変化を実践した対策とともに可視化し、どのような対策がどれくらい効果があったのかを分析します。
例えば日中の作業量が多く、睡眠不足の状態が継続している場合は、ポモドーロ法という、1つの作業を25分実践し、5分休憩し、30分間を1セットの作業単位とする、という高い集中力を維持できる改善法を導入しました。この方法は、疲れる前に休憩を取ることと、短い休憩であるので、次の作業に取り掛かるまでの脳の働きを高い状態で維持できる、の2つの利点があります。これにより、8週間後には日中のアクティビティを大幅に改善でき、睡眠時間も30分程度増やすことが可能となりました。
この時点で1日5回のポモドーロ法を実践できるようになっていました。つまり、その前後で仕事量が変化なく一定とすれば、30分×5回=150分のポモドーロ法に従った作業により、30分作業時間を短縮できたことになります。つまり180分の作業が150分で完了できたことになり、その作業時間内では、180分÷150分=1.2、集中力が20%上がったことになります。睡眠時間が増えた効果とポモドーロ法による相乗効果により集中力が20%改善できたことになりますね。
この2017年の健康メディア特論では、9月末~11月初旬の実質2か月程度で、20名中12名が定量的に健康状態を改善でき、20名中18名が改善効果ありと感じることができました。適切な目標と適切なPDCAサイクルの実施により、今後、より健康的な研究活動が実施できるようになったのではないでしょうか。
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