大学院「メディアネットワーク特論」の紹介
2018年1月 2日 (火) 投稿者: メディア技術コース
大学院メディアサイエンス専攻の寺澤です。
私の担当している大学院修士課程の授業、「メディアネットワーク特論」について紹介いたします。この科目ではIoT(Internet of Things)、センサーネットワーク、位置情報の利用など、ユビキタス環境の実現に利用可能な技術を学び、人間の活動を支援するネットワークについて理解を深めることを目標にしています。全8回の授業です。
このような授業では、受講生がグループを作ってミニプロジェクトを遂行する、すなわち、特定の目的のシステムを設計、実装、評価するスタイルがよくとられます。しかし、この授業はそのような実施方法ではありません。まず、コンピューターサイエンス専攻ではありませんので、技術力の方向にだけ深く理解を求めるのは少し違うと思っています。また、学生は本学のメディア学部の出身者だけではなく、多くの留学生も含め非常にバックグラウンドが多様で、大学院で学ぼうとしていることも多岐にわたっています。そういう彼ら彼女らが自らの研究分野に取り組む際、どんな分野であっても、急速に発展し普及しているITのことを無視することはできません。
まず、最初に Michael E. Porter and James E. Heppelmann の "How Smart, Connected Products Are Transforming Competition" という Harvard Business Review (THE NOVEMBER 2014 ISSUE) の記事を読んでIoTとそれが社会に与えるインパクトについて全体像をつかみます。これはビジネスの文献ですが、どのような産業にどのような影響が出るのか、すでにどのような企業が取り組みを始めているのか、広い分野の豊富な具体例とともに解説されています。現在ではこの記事の執筆時点からすでに3年経っていますから、現実のサービスが記事内の予想通りに発展しているのかも知ることができます。
次に、関連する研究論文(日本語/英語)を配布し、担当者を決めて輪講形式で授業を行います。一本の論文について発表するのにはそれなりに時間がかかります。授業の時間と受講者数を考えて、全員が発表に関われるようにするため、2~3名で1本の論文を分担するようにしています。読む論文の分野は、技術中心のものから、標準化に関するもの、農業などIoTの各種応用に関するもの、サーベイ論文なども含みます。最近ではAI(人工知能)と組み合わせた研究が多くありますが、そちらは他の授業でも扱うようなので、選んでいません。
多くの学生が修士課程1年生の最初にこの授業を取っています。そこで、これからの自分の研究生活のために、論文を読むことを通して、研究目的の明確化やそれに合う評価の方法を選択することの重要性を認識してもらうことも意識しています。また、技術の標準化という世界を垣間見ることで、なぜ標準化が重要か、それが産業や自分の分野にどう影響するのか知ってもらうことも重視しています。研究では、論文を読むことも、資料をまとめて発表することも必要な能力の一部です。それを鍛える目的もあります。
最終レポートでは、これまで輪講を通して学んできたことを背景に、課題を設定しています。
(メディア学部/大学院メディア学専攻 寺澤卓也)
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