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学会発表:「ゲームをやめることで継続する」研究

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メディア学部の渡辺です。みなさんこんにちは。

今回の記事で紹介するのは、大学院修士課程在学中の本間翔太君による「ゲームにおける再プレイ欲求損失防止のための自発的中断を促すシステムデザインに関する研究」という研究です。この研究は、2018年3月2日に日本デジタルゲーム学会年次大会で発表を行いました。

この研究は、「いかに気持ちよくゲームをやめさせるか」についてを追求しています。これだけだと、まるでゲームすることを否定しているかのように受け止められるかもしれませんが、実際はまったく真逆の発想なのです。

世界保健機関(WHO)は昨年末、「ゲーム依存症」を新たな国際的疾病として定義する検討を行っていることを発表しました(関連記事)。また、これに対し医療関係者やゲーム業界などから様々な意見が表明されました(関連: NHK解説委員室による解説エンターテインメントソフトウェア協会の反応)。何にしろ、制作する側は中毒状態にならないように対策を講じる必要があります。

また、ゲームを売る側の立場としても、あまり長時間にわたるプレイは好ましくないとう意見もあります。というのも、ゲームはかつての売り切り型の提供とは違い、今は徐々にアップデートしたりダウンロードコンテンツを提供することが多くなってきています。これは、制作側にとっても開発時期を分散できるため、効率よく良質なゲームが提供できるようになるからなのですが、短期集中的なプレイスタイルはあまりこのような形態と相性がよくありません。そこで、ゲームデザインとしても「少しずつ、長く進めてもらう」ようなものが望ましいということになります。本間君は、まずはこの点を念頭におきつつ、いかにプレイヤーに自発的に長期型スタイルをとってもらうかを研究しています。

2014年に、メディア学部三上研の大塚君が「自発的なプレイ時間制御を促すゲームシステムに関する研究」という研究を発表しています(論文PDF)。しかしこの手法だと、プレイヤーはゲーム自体に悪印象を持ってしまい、翌日以降に再開しなくなってしまうおそれがあり、「認知負荷の蓄積ならば不快感を持たないのでは」と本間君は考えました。簡単に言うと、「ゲーム自体は難しくなくても、プレイヤーに与えられる情報量が多くなることで、プレイヤーは中断したくなるが、不快感は持たない」という方針です。

検証用ゲームの様子を以下の2枚の図で示します。両方ともゲーム内オブジェクトの動作はまったく同じなのですが、下の図の方がより多くの情報をプレイヤーに与えています。(ちょっとこの図だけだとわかりづらいですが...)

Snap1_2


Snap2


実験では脳波測定などを用いて検証を行っている最中ですが、まだ現時点ではプレイヤーに与える影響については不明点が多く、現時点で有意義な成果は出ていません。まだまだこれからというところです。

ちなみに、本間君は以前にゲーム企業で数年間働いており、その中で学術的な素養の必要性を感じて本学の大学院生として入学してきました。日本では、学校の位置づけが「就職するための手段」という意識が強く、一度就職してしまうともう勉強する必要性を感じないという人が多くおり、それが国際的競争力低下の一因という人もいます。私も同感です。大学院でなくてもよいですが、もっと「大人が勉強する」という気質が定着することを望みます。私とて、後期博士課程に入学したのは42歳、博士号取得は45歳のときでしたから。


(メディア学部准教授 渡辺大地)

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