ゲームAIの歴史とこれから(メディア特別講義Ⅰ)
2018年10月27日 (土) 投稿者: メディア技術コース
2年次生向け「メディア特別講義Ⅰ」は毎回企業から講師を招いての講義を行っています(概要紹介)。
初回はバンダイナムコスタジオの長谷洋平様(リードAIプログラマ)をお迎えし、「バンダイナムコにおけるゲームAIの歴史とこれから」と題して、他社作品も含めて話していただきました。「歴史」を中心に、内容を少し紹介します。
初期(70~80年代)・発展期(90~00年代)・現代(2010年代)に分けて、ゲームAIの変遷をわかりやすく解説してもらいました。
初期のころというのは、スペースインベーダー、ギャラクシアン、パックマン、ゼビウスの時代です(ちなみに私(柿本)は完全にスペースインベーダー世代で、バイト代をつぎ込・・・・名古屋撃ちもマスターし・・・・いや、やめておきます)。
初期のころの敵キャラの動きパターンは、AIとは呼ばずに「アルゴリズム」と呼ばれていました。インベーダーは直線的で単純な動きを繰り返すものでした。ギャラクシアンで「スプライト」という小領域画像の高速表示技術が開発され、キャラクタごとに違う複雑な移動を可能にしました。パックマンは敵モンスターそれぞれが固有の性格にもとづく行動をするようになりました。
発展期は、キャラクターの性質がAIと呼ばれるようになった時期です。テイルズオブファンタジア、テイルズオブデスティニー2などの時代です。
このころになるとゲームはC言語で書かれるようになりました。複雑な記述がそれまでより容易になって、プログラマーではないゲームデザイナーも簡単な記述をスクリプト言語で書くようになりました。キャラクターの調整もデザイナーができるようになり、ゲームのAIが進化していきました。技術的にも、状態遷移の高度な記述や階層型ステートマシン、パス探索、グラフ探索などが普通に用いられるようになりました。
2010年代になると、ゲーム作品の規模は巨大化し、キャラクターの動きをはじめとする各種設定の人手での対応は限界となりました。講義では様々な技術・技法が紹介されました。私が一番印象的だったのは、ゲーム内の車の運転、つまりアクセルやハンドルの制御をAIに学習させるという技術です。練習コースをAIに何周も運転させるとパラメータを自動調整し、高度な自動運転ができるようになるというものです。
さらに、ゲームの中だけでなくゲーム開発全般にAIが広く活用されていることや、未来のゲームAIがどう使われるかという話題が紹介されました。
さて、メディア特別講義Ⅰの特色は、受講生がその場で質問をPCで提出し、メディア学部教員が20件ほどの質問を抽出し、講師の方に答えてもらう質疑応答に時間をかけることです。
質疑応答を1件だけ紹介します。
「AIの最新の技術の知識をどの様に手に入れてゲーム開発に反映させているのでしょうか」
これに対する長谷先生の回答は「英語の論文」でした。もちろん、企業などの事例情報をWebで集めることも行うそうですが、ゲームAIの分野では最先端の開発者が英語で論文を書いたり技術を開示したりしているので、最新の技術は英語で読むとのことです。
メディア学部 柿本正憲
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