CMディレクター出身の映画監督が成功できる理由(メディア学部 藤崎実)
2018年10月 5日 (金) 投稿者: メディア社会コース
みなさん、メディア学部社会コースの藤崎実です。
最近、知り合いのCMディレクターによる映画作品が次々と公開されています。というわけで、今日はCMと映画についてです。
みなさんの中には映画好きの人が多いと思います。なので、詳しい人は知っていると思いますが、現在、活躍している映画監督で、もともとCMディレクターだった人はたくさんいます。例えば「エイリアン」や「ブレードランナー」「グラディエーター」などをつくり、今や巨匠といわれるリドリー・スコット。「セブン」「ファイトクラブ」をヒットさせ、「ベンジャミン・バトン
数奇な人生」、「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー監督賞にノミネートされたデビッド・フィンチャーも、もともとCMディレクターとして活躍していた人たちです。
ちょっと古いお話になりますが、サスペンスの天才と呼ばれたアルフレッド・ヒッチコックも、もともとCMディレクターだったのです。
彼らはCMという30秒や60秒の映像世界の作り手として脚光を浴び、広告業界で認められた後に、映画界に進出したのでした。例えば、それまで映画界で無名だったリドリー・スコットは、「エイリアン」の公開当時、「イギリスの俊英CMディレクターによる監督作品」として宣伝されたのは有名な話です。
日本の先駆者は大林宣彦監督です。大林監督がかつては「CM界の巨匠」だったことはあまり知られていません。大林監督は当時次々と日本中の話題になるCMを作った後、商業映画界に進出したのです。大林監督がこの流れを作ったことにより、多く人材が後に続くことになります。
私が一緒に仕事をしたこともあるCMディレクターの市川準監督もその流れのひとりです。他にも、例えば「桐島、部活やめるってよ」(2012)の吉田大八監督も、TYOというCM制作会社のCMディレクターなのです。
では、30秒のCMと、2時間の映画では、作り方に違いはあるのでしょうか?結論から書くと、作り方の違いはほとんどありません。もちろんCMは時間が短いのですが、それは完成後の尺の話であり、 ワンカットごとに、何を作るのか、そのためにはどうしたらいいのか、という制作者として最も大切な定着への考え方、物事を洞察する視点や意図などは、ほとんど同じと言っていいでしょう。
広告やCMや映画は、どれも、相手ありきの表現です。つまり自分だけで完結するものではありません。それが純粋芸術との違いです。見てくれる人に、どうしたらもっとよく伝えることができるのか。どうしたらもっと相手の心に届けることができるのか。どうしたら楽しんでもらえるのか。それらに関しては驚くほど共通点があります。
市場の動向や時代性をどうつかむか、商品のポジションやブランドのイメージをどう表現するか、予算やクライアントの意向をどう解決するかなど。さまざまな厳しい制約があり、詰めの細かさが求められる厳しい広告業界で鍛えられ、物事を解決させ、前進させることができる映像ディレクターが、映画の世界でも活躍できるのは、よくわかる気がします。(メディア学部 藤崎実)
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