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NICOGRAPH2018で、演技の声のリアリティについて発表しました

2018年11月12日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

以前の記事に続き、NICOGRAPH2018での当研究室からの発表を紹介します。今回の発表は、伊東彩織さんの「音声からの疲労度検出に用いるデータ収集方式の比較検討」です。前の記事で紹介した二人と同じく、伊東さんも「先端メディア学/先端メディアゼミナール」の受講生でした。2年前期に始めたテーマを、1年半かけてじっくり仕上げたのも同様です。

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このテーマでは、最初に「疲れた人の声ってどんなふうに変わるんだろう?」と興味を持ち、3コマ270分連続で行う演習の教室に行って、演習開始前(疲れてない)と演習終了後(疲れてる)に大勢の学生の声を録音させてもらいました。その声の分析を進めていくうちに、もっと多くのデータを使って分析してみようということになり、今度は研究室のメンバーで「疲れた感じの声を演技で出してみて、それを録音しよう」ということを行いました。

ところが、この2種類のデータを分析してみたところ、どうも辻褄が合いません。演習前後の声の自動分類ができるモデルを作っても、演技の「普通の声」と「疲れた声」はちっとも分類できないのです。逆も同様です。このことから、「疲れたように演技した声は、本当に疲れたときの声を必ずしも再現しているとは言えない。研究に際しては注意が必要である」という結論を定量的に導き出したのです。

音声から話者の心理状態を推定しようという研究は、いま学会で非常に盛んに行われています。しかし、演技音声を何も疑わずに使っている研究例も多く、そんな中で一石を投じることができる発表だったのではないかと思います。音声研究に限らず、データの正当性を疑うというのは、非常に重要なことですね。

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