経済現象の可視化と指標化(2)
2018年12月 9日 (日) 投稿者: メディア社会コース
前回のブログでは、一国の所得や資産の分配の不均一性を視覚的に捉える、ローレンツ曲線について紹介しました。しかし、ローレンツ曲線では、その不均一性の存在や、拡大が一目瞭然であっても、それが一体どの程度なのか、定量的に把握することは困難であるという問題がありました。このため、社会において、所得分配をどの程度是正したら良いのか、経済政策を具体的に論じることができません。そこで、今回は、ローレンツ曲線をもとに、分配の不均一性を定量的に捕捉する、ジニ係数という指標化の方法について紹介しましょう。
まず、ローレンツ曲線のグラフを描きます。そして、45度線とローレンツ曲線で囲まれる半月状の面積が、45度線と横軸で囲まれる直角2等辺三角形の面積に占める割合を計算し、その値が0から1の間を取るように定量的に定義したものがジニ係数です。ローレンツ曲線の構成上の特性から、ジニ係数は0に近いほど平等性は高く、一方、値が上昇して1に近くなるほど不平等性が高くなるように作られています(図3)。
図3
OECDの統計から、1970年代以降の欧米諸国のジニ係数の推移を見てみましょう。長期的な趨勢としては、各国とも市場原理を重視した結果、所得分配の不均一性が高まっています。しかし、米、英、日で高水準に推移する一方、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの北欧諸国では0.1ポイント強低い水準に維持されている点に注意が必要です。これは、各国の社会/財政制度が如実に反映された結果と言えるでしょう(図4)。
図4
前回と今回の二回にわたって、ローレンツ曲線とジニ係数の、それぞれ可視化と指標化としての優れた特性について見てきました。いずれも非常にうまく考えられていることがわかったかと思います。しかし、欠点もあります。この問題に点に関しては、次回紹介しましょう。
(榊 俊吾)
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