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論文を書くためのソフトウェア

2019年2月18日 (月) 投稿者: media_staff

技術コースの羽田です.
大学の研究においては最終的な成果として論文を書くことが多くなります.
卒業論文もその一つですね.この論文を書くときにはどんなソフトウェアを使うのでしょうか.
マイクロソフト社のWordが世界的にひろく使われているのが現状ですが,
情報工学や数学・物理といったいくつかの分野では LaTeX(ラテフ・ラテック) というソフトウェアが使われています.LaTeXはTeX(テフ・テック)という組版システムを使いやすく改造したものです.
TeXというソフトウェアはスタンフォード大学の教授でコンピュータアルゴリズムの世界での偉人でもあるドナルド・クヌースという先生が自分の書いた教科書の出版社が行った組版に納得できず,数式を含んだ文書を美しく印刷するために開発したと言われています.このTeXというソフトウェアは今のWordのようなGUI操作を行えるワープロソフトではなく,文書中にコマンドを入れて,それをプログラムで処理することにより製版のためのデータを作成するというシステムです.
ところが,このTeXの美しさと裏腹に,このTeXを使いこなすのが非常に難しいということがあり,この問題を解決したのが当時DECというコンピュータメーカーにいた計算機科学者のレスリー・ランポート氏です.彼の作ったLaTeXはTeXを使う方法としては世界標準となり,今でも有志による開発が続いています.
メディア学部でも,我々の研究室を含めたいくつかの研究室では卒業論文をマイクロソフトのWordではなくこのLaTeXを使って執筆してもらっています.大学や研究機関では使われることはあるものの,それ以外の一般企業ではあまり馴染みのない環境ではあるのですが,論文を書くことが仕事の人たちが使ってきただけのことはあり,卒業論文などの執筆にも非常に便利にできてます.
たとえば,論文には図表や参考文献などに番号をつけます.これは本文中で図表や文献を参照するときにその番号を使うためにあるのですが,自分で番号をつけていると図を1つ途中に追加するとズレてしまいます.
このような番号をLaTeXではラベルという文字列をつけておいて,その名前を呼ぶことで解決します.こうしておいて最終的に印刷用のファイルができるときに番号を自動的に決めてくれるようにするわけです.
他にも,図表の配置や目次の自動生成,ファイルの分割など便利な機能がたくさん詰まっています.
数ページのレポートではなく,何十ページにもなる大作の卒論を仕上げるのであれば,今でもやはりLaTeXを薦めるという人は,私の他にも情報科学の研究者には多いような気がします.私自身も25年ほど前の卒業論文の頃から,修士論文,博士論文とすべてLaTeXを使って書きましたし,学会の論文もフォーマットが提供されている限りは今でもLaTeXを使っています.
ちなみにこのTeXとLaTeXの製作者である彼ら二人はそれぞれ,クヌースは1974年に,ランポートは2013年にチューリング賞を受賞しています.この章はコンピュータ科学において偉大な功績があった研究者に送られる賞で,いわばコンピュータ科学の世界のノーベル賞にあたるものといって良いでしょう.
機会があればまたこの話は書きたいと思います.
(羽田久一)

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