誰か見ている効果2
2019年3月20日 (水) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部卒業生の皆さん、
ご卒業おめでとうございます。
一年前この場で申し上げたことを学部ブログに公開したところ、何人かの異なる年代の方々から大きな反応をいただきました。今日はその話である「誰か見ている効果」に絞って、これから社会で仕事をする皆さんへの言葉とします。
結論を先にいうと、仕事を一生懸命やっているのに誰も認めてくれない、と感じても、必ず誰か見ているから、腐らないで一生懸命やり続けましょう、という話です。
仕事は必ず誰かと一緒にやるものです。一人で担当する部分もありますが、その成果は必ず誰か一緒に仕事をする人がチェックします。数か月で完結する一つのプロジェクトがあるとしましょう。その中で社内外の人との会議や個別の打合せ、相談、指示など、直接人と話をする時間だけでも累積すれば数時間、あるいは数十時間になるでしょう。
細部にわたる事項をこれだけの時間話し合えば、あなたが一生懸命やっているかどうか、周りの人が気づかないわけがありません。直接話す時間が少なくても、メールのやり取りからでもわかります。あなたが一人で何か担当した場合でも、その成果物をチェックする人々は、あなたが一生懸命やったかまずわかります。
たかだか数十分の採用面接でデキる人かどうか判定するのは大変困難です。でも、一つのプロジェクトで一緒に仕事をすれば、ほぼ正確な判定が可能なのです。
そのことがわかっていれば、「誰も自分を認めてくれない」と嘆くのがいかに無意味なことか、わかるでしょう。つまり、認めていても面と向かってあなたに言わないだけなのです。また、ここが大事ですが、もし認めていなくても面と向かって注意はしません。あなたの周囲の人の頭の中には、あなたはちゃんとやる人、あるいはやらない人、という小さな旗が静かに立つだけです。そしてその旗色はその人々の脳内に長く残り続けます。
ここでいう周囲の人々というのは上司や部下や同僚だけではありません。社内の他部署の人、協力企業の人、そしてもちろんお客様や顧客企業の人も含みます。あなたと直接会うことのない同業他社やライバル企業の人だって、あなたのチームの成果を通じてあなたを見ているかもしれません。
このような「誰か見ている効果」が、実際に効果を発揮することは実はほとんどありません。たぶん、就職してから数年から10年ぐらいは、あなたはこの効果に気づく機会すらありません。しかし、重要なのは、「誰か見ている効果」が発動されるのは、人生でせいぜい数回から十数回しか起こらない昇進や転職の機会だということです。
そのような機会には、あなたの旗の色、つまりあなたがちゃんとやる人なのか否かの情報交換や確認が行われます。業界内のつながりは当然ありますから、思わぬところからあなたの評判が入ってくることもあります。ほとんどの場合そのやりとりに本人は気づきません。
私が直接「誰か見ている効果」を実感したのは、10年ほど前、長年勤めた会社からリストラ宣告を受けたあとです。あなたのポジションはもうありません、退職日は2か月後です、これは決定事項です、と社長から言われました。これが世にいうリストラかぁ、と思いました。ひと月ほどして、噂を聞きつけた人たちから私に声がかかりました。さらに10年ほど前に私の上司と部下だった二人です。こっちの会社で一緒にやらないかと誘ってくれました。私の仕事ぶりを憶えておいてくれたのです。
いろいろ「怖い話」風なことを申し上げましたが、恐れる必要はありません。たとえ失敗しても、心を込めて一生懸命仕事をすればよいのです。プロセスも含めて必ず誰か見ています。もちろんいい仕事をするために新しい勉強もして実力をつける必要はあります。実力以上に見せようとしてもすぐにばれます。謙虚すぎるのもいけません。
「誰か見ている効果」は心の隅でいつも意識しながらも、思い切って、心を込めて仕事をしてください。
東京工科大のメディア学部を出た人はちゃんと仕事をするよね、という確固たる評判が社会に定着することが私の夢です。私たち教員の側も、卒業生の皆さんがずっと自慢できるようなメディア学部にしていくことをお約束します。
本日はご卒業おめでとうございました。
メディア学部 柿本 正憲
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