PIXARから著作権の許可を得た経験談:Motion Blurの画像
2019年5月26日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
先日、国立西洋美術館の絵画の紹介をするときに、著作権の関係で写真撮影した画像がこのブログ記事に掲載できませんでした。著作権のために掲載できないとあきらめていてはいけない例として、教科書の執筆における画像の掲載があります。
メディア学部では、コロナ社からメディア学大系シリーズを出版しており、私も3冊ほど共著で執筆をしています。そのなかで、「視聴覚メディア」において、画像や映像の表現と理解について説明する時に、モーションブラーのことを書きました。
CG分野においては、1984年にCookらが Motion Blurと名付けて、写実的なCG表現にBlur(ブラー)の効果を提案しています。この手法は、その後多くの研究者に引用されています。そこで私もこの画像を引用して動きの表現と理解について説明しようと考えました。まず、1984年の論文の著者たちの連絡先を確認するために、国内の知り合いの先生などに伺ったりして、メールアドレスを確認しました。
研究者への連絡はお互いにメールで行うことも多く、私も著者の一人であるCook先生に、教科書に画像を掲載したいことを伝えました。すると、驚くことに、この画像の著作権管理は、Pixar Animation Studiosがおこなっているとのことで、Chief Legal Counsel,Business Strategyに連絡するように書かれていました。そこで、さっそく指定されて方へ連絡をしました。
返事がきました。教科書で利用するというので利用条件を知らせるように連絡がありました。そこで、教科書をコロナ社から出版するということで、モーションブラーの画像は、その教科書で利用すると伝えたところ、 「Permission Agreement」を送ってきました。費用を要求されるかと思いましたが、教科書が完成したら、送るようにとのこと以外は、費用負担はありませんでした。それどころか、ネットで見つけた低解像度の画像ではなく、Pixarで管理している画像データを送るので、サインして書類を返送するように書かれていました。
そのなかで、「Permission Agreement」の最初の一部を次に示します。
画像はカラーでしたので、本文に白黒で掲載するだけでなく、口絵でカラー画像を掲載しています。一つの画像の掲載許可を得るために、このようなことが必要であることをメディア学部の学生にはぜひ知っておいてほしいです。
どんな画像かは、この記事では、公開できませんので、ぜひ「視聴覚メディア」をご覧ください。または、「Distributed Ray Tracing Cook」で画像検索してください。
参考文献
1.Robert L. Cook,Thomas Porter,Loren Carpenter, Distributed Ray Tracing,SIGGRAPH Computer Graphics Volume 18, Number 3,pp.137-145 July 1984
2.「視聴覚メディア」:コロナ社メディア学大系第15巻の発行 2017年5月 6日
3.本を執筆するために:「視聴覚メディア,メディア学大系,コロナ社」に関するブログ記事 2017年5月13日
大学院メディアサイエンス専攻 近藤邦雄
"Cook Distributed RayTracing"
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